更新日: 2024.10.10 働き方
残業代の「割増率」はどうなる? 2023年から変わる時間外労働について解説
本記事では時間外労働による割増賃金率の変更点と、実際に影響を受ける企業の割合や残業代を計算します。
働き方改革を推し進める中で、残業の取り扱い方について知るきっかけにしてください。
執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)
2級ファイナンシャルプランナー
新しい残業代の割増率について
2023年4月より、残業の割増賃金率が2つの項目で改正されます。
・月60時間を超える残業割増賃金率が中小企業でも50%になる
・深夜の時間帯で時間外労働が月60時間を超えると残業割増賃金率は75%になる
これまで月60時間を超える割増賃金率は、大企業(50%)と中小企業(25%)と異なりました。2023年4月から、一律の割増賃金率50%になります。労働者数や業種の違いで中小企業かどうかを判断する条件としては、図表1の通りです。
【図表1】
今回の改正によって影響を受けるのが、割増賃金率を25%以上50%未満に設定している中小企業です。図表2によると、月60時間を超える時間外労働で、割増賃金率を25%~49%に設定している中小企業が、全体の58.8%でした。
【図表2】
中小企業の約6割が、月に60時間を超えた場合の割増賃金率で影響を受けるといえるでしょう。
月に60時間を超える残業代の計算方法
次に、月に60時間を超える時間外労働をした場合、残業代はいくらになるのか計算します。以下の条件で見ていきましょう。
・月給35万円
・1ヶ月の所定労働時間:150時間
・残業時間:80時間
・時間外労働の割増率:25%
60時間までと、60時間を超えた場合の残業代をそれぞれ計算します。
・残業時間が60時間までの残業代
(35万円÷150時間)×1.25×60時間=約17万5000円
・残業時間が60時間を超える残業代
(35万円÷150時間)×1.50×20時間=約7万円
それぞれ合わせた約24万5000円が残業代です。
もし残業時間が月に60時間を超えた場合、割増賃金を払う代わりに「代替休暇」を付与しなければなりません。代替休暇は労働者の健康を確保する措置として、有給休暇と同じ扱いで付与されます。
厚生労働省が発表した2022年7月の「毎月勤労統計調査」で、パートタイム労働者を除いた一般労働者における最も時間外労働時間が多い職種は「運輸業・郵便業」でした。約26時間と、60時間を超えてはいないので上記のケースに当てはまるかどうかは各企業の就業形態によるといえるでしょう。
残業代を増やす方法と残業を減らす取り組みが必要
今回の時間外労働に対する割増賃金率の改正が、どのように残業代に影響するのかを確認しました。
基本的に60時間を超える時間外労働をしている場合、企業規模に関わらず50%の割増率となります。割増賃金率を払う代わりに、有給として利用できる代替休暇を付与する必要があります。いずれの制度を用いるにしても、時間外労働が60時間を超える業種はありませんでした。
残業した従業員への賃上げも必要ですが、同時に残業時間を減らすための取り組みも必要です。両者のバランスが取れた労働環境にしていける支援がなされているか、今後も注目していきましょう。
出典
厚生労働省 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます
厚生労働省 令和3年就労条件総合調査の概況
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和4年7月分結果速報
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー