更新日: 2022.10.25 働き方

「管理職」になると残業代が支払われなくなるのはなぜ?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

「管理職」になると残業代が支払われなくなるのはなぜ?
会社で所定の労働時間を超えた場合には「残業代」が支払われますが、「管理職」になると残業代が支払われなくなります。場合によっては管理職に昇格したのに年収が下がる恐れもあります。
 
「どうして管理職になると残業代が支払われなくなるのか?」と疑問を持つことは自然なことです。
 
本稿では、管理職に残業代が支払われない理由について解説していきます。
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管理職に残業代が支払われないのは労働基準法で定められているため


 
管理職に残業代が支払われない理由は労働基準法において、他の労働者を管理監督する人は「経営者と一体的な立場」になるとされているためです。経営者は労働基準法で定められている労働時間・休憩時間・休日の制限などを受けないため、経営者と一体的な立場である管理職も同様に出退勤時間の制限を受けなくなります。
 
労働時間・休憩時間・休日の制限を受けないということは、一般的な1日8時間、週40時間の労働時間が適用されないため、どれだけ働いても残業代が支払われず、休日に出勤しても休日出勤手当も支払われません。
 
基本的に管理職は一般労働者と業務内容も立場も異なり、残業代の代わりに役職手当やボーナス等で待遇が充実する場合が多いです。労働時間などの制限は適用されませんが、長時間労働を続けて健康障害を引き起こさないような工夫や判断が大切です。
 
一方、管理職には残業代を支払う義務はないとはいえ、午後10時から午前5時まで勤務した際の「深夜割増賃金」については支払い義務があることを、経営者は理解しておく必要があります。
 

名ばかり管理職なら残業代が支払われることがある

さらに、管理職として十分な責任と権限などが与えられていないと判断される場合は、他の一般労働者と同様残業代などの支払い義務が生じます。
 
管理職とは本来、他の労働者を管理監督する立場であり、部下からの報告や書類の確認、部外との連絡・調整などして企画を自分で進める権限などが付与されるべき存在です。
 
それにもかかわらず、肩書として管理職名を与えられていても、「経営方針の決定に参画していない」、「出退勤を自身の裁量で決める権限がない」、「管理職としての役職手当などほかの労働者より優遇された報酬が十分に支払われていない」などの実態があれば、法律上の管理監督者ではなく、“名ばかり管理職”とみなされる可能性があります。
 

なぜ名ばかり管理職が生まれる?

“名ばかり管理職”が生まれる原因は、企業側が残業代や休日出勤手当などの支払いを減らして人件費を抑えることなどを目的に、十分な実力や経験を持っていない労働者を管理職に任命をすることが考えられます。
 
本来、使用者(経営者)は管理職に対し、十分な責任と権限とともに、一般労働者より優遇した報酬を与えなければなりません。管理職も自らの処遇を、外部の同格の管理職と比較する機会がなければ、自身が“名ばかり管理職”であると認識できない可能性があります。実際に働いている人から労働基準監督署などに通報や相談をしなければ発覚しないことも珍しくありません。
 
“名ばかり管理職”は与えられている責任と権限が少ないため、他の一般労働者と同じ条件での勤務をしているケースが埋もれているというのが実情のようです。
 

まとめ

管理職は法律上、他の労働者を管理・監督する、経営者と一体的な立場と考えられます。
 
経営者と一体的な立場であるため、出退勤は自身で決める裁量を持ち、労働時間・休憩時間・休日の制限などを受けないため、残業という概念がなくなることが、残業代が支払われない理由です。ただし、管理職であっても深夜割増賃金は支払われなければなりません。
 
管理職には、ほかの労働者より優遇され職責に見合った報酬が支払われます。一般的に考えられる管理職としての責任と権限、報酬が与えられていなければ、実体の伴わない“名ばかり管理職”の可能性があり、時間外労働の手当を受け取る権利を持つ労働者と対象になります。
 
疑問が残る場合は労働基準監督署や都道府県労働局に相談するとよいでしょう。
 

出典

厚生労働省 多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について―具体的な判断要素を整理した通達を発出(平成20年9月9日)
厚生労働省 「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A
厚生労働省 労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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