契約社員やアルバイトでも残業代は請求できる! 残業代の計算と請求方法は?
配信日: 2022.12.14 更新日: 2024.10.10
契約社員やアルバイトでも、正社員と同じように残業代をもらえます。
本記事では、残業代が支給される条件や計算方法、未払いの残業代を請求する方法をまとめました。残業代の疑問を解消して、自分は正しくもらえているかどうかチェックしてみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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契約社員やアルバイトに残業代が支給される条件
契約社員やアルバイトなど、正社員以外の雇用形態でも、雇用されて給料をもらう「労働者」である以上、企業には、労働基準法にのっとって正社員と同様の条件で割増された残業代(時間外手当・残業手当)を支給する義務があります。
時間外手当の支払い条件と条件に応じた賃金の割増率は、図表1のとおりです。
【図表1】
支払い条件 | 割増率 |
---|---|
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超過した場合 | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間・1年360時間など)を超過した場合 | 25%以上 ※25%超にする努力義務が必要 |
時間外労働が1ヶ月60時間を超過した場合 | 50%以上 ※中小企業は2023年4月1日より適用 |
東京労働局「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」より筆者作成
残業代の対象になるかどうかは、所定労働時間ではなく、あくまでも法定労働時間を超えたかどうかが基準です。
契約社員やアルバイトの残業代の計算方法
契約社員やアルバイトの残業代を計算するときには、まず、自分の給与体系が次のどれにあたるかの確認が必要です。
・月給制・時給制
・歩合給
・時間帯ごとに金額が異なる時給制
それぞれ、計算のベースとなる給料の考え方が異なるため、給与体系に合わせた計算式を用いなければ残業代を正しく算出できません。
以下で、給与体系別の残業代の計算方法を解説します。
一般的な計算方法(月給制・時給制)
月給制の場合は最初に、月給から1時間あたりの賃金を換算する必要があります。計算式は次のとおりです。
1時間あたりの賃金=月給(※)÷(1年間の所定出勤日数×1日の所定労働時間÷12ヶ月)
※一部基礎賃金に含まれる場合もある
例えば、基本給24万円、1年間の所定出勤日数240日、所定労働時間8時間、一律支給の手当がない人の場合の1時間あたりの賃金は、24万円÷(240日×8時間÷12ヶ月)=1500円です。
月給制の場合は1時間あたりの賃金、時給制の場合は時給を以下の式に当てはめると、残業代が算出できます。
残業代=1時間あたりの賃金または時給×割増率×残業時間
例えば、月給制で1時間あたりの賃金1500円の人が9~20時まで実働10時間で勤務(2時間残業)した日の残業代は、1500円×125%×2時間=3750円です。時給1000円の人が同様の時間働いた場合の残業代は、1000円×125%×2時間=2500円となります。
歩合給の場合の計算方法
歩合給制の場合はまず、その月の実績給(歩合給)と残業時間を含む合計労働時間から、1時間あたりの賃金を算出します。
1時間あたりの賃金=当該月の歩合給÷当該月の合計労働時間
次に、1時間あたりの賃金に割増率を掛けて、1時間あたりの割増賃金額を計算し、残業時間を掛けて割増分の賃金を算出します。
割増分の賃金=1時間あたりの賃金×割増率×残業時間
例えば、ある月の歩合給が27万円、残業20時間を含む合計労働時間が180時間だった場合、その月の1時間あたりの賃金は27万円÷180時間=1500円です。歩合給制の場合は、時間外労働に対する基礎賃金も歩合給に含まれているため、割増分の賃金だけが残業代として上乗せされます。したがって、残業代は1500円×25%×20時間=7500円と計算できます。
時間帯で時給が異なる場合の計算方法
時間帯ごとに時給が異なる場合は、残業が発生した時間帯の賃金額をもとに残業代を算出します。
例えば、通常勤務時間が8~17時までで、18時まで時給1000円、18時以降時給1100円の条件で17~19時まで残業をした場合の残業代は、次のように計算できます。
17~18時までの残業代:1000円×125%×1時間=1250円
18~19時までの残業代:1100円×125%×1時間=1375円
合計:2625円
残業代が未払いの場合の請求方法
会社が経営状況悪化などの理由で、残業代を払ってくれないなどといった場合、未払いの残業代を請求する流れは、次のとおりです。
1.証拠をそろえる
2.会社に通知書を送付する
3.残業代を計算する
4.交渉する
5.労働基準監督署へ申告
6.労働審判をする
7.訴訟をする
一連の流れを自分で行うこともできますが、やらなければならないことが多く、精神的にも労力的にも大きな負担がかかります。専門の機関や専門家の手を借りて、負担の軽減を図るのがおすすめです。
残業代の未払いで困ったときの相談先機関として、労働基準監督署が挙げられます。労働基準監督署では、労働問題の相談に無料で応じてもらえるほか、会社への行政指導なども行っています。未払いの証拠となるものをできるだけそろえておくと、スムーズに状況を把握してもらえるでしょう。
また、弁護士に依頼するのもひとつの方法です。費用はかかりますが、専門家が代理人となることで、煩雑な手続きや交渉を全て任せられます。また、交渉が決裂して労働審判や訴訟などの法的手続きに進んだ場合も安心です。
なお、未払い残業代を請求することで、会社との関係が悪化するなどのリスクが考えられます。そのため、安易な請求はおすすめできません。専門機関などに相談したうえで、請求を行うかは慎重に検討しましょう。また、残業代を請求する権利は現行では3年間で消滅します。請求をする場合は、早めに手続きしましょう。
残業代がつく条件や計算方法を理解してしっかり請求しよう
契約社員やアルバイトでも残業をすれば、正社員と同じように割増された残業代を受け取る権利があります。残業代の割増率や計算方法の知識をもっておくと、残業代が正しく支給されていない場合に気づきやすくなるでしょう。
もしも未払いの残業代が判明した場合は、会社への請求が必要です。労働基準監督署や弁護士などの手を借りて、回収できるよう手続きしましょう。
出典
e-Gov法令検索 労働基準法
東京労働局 しっかりマスター労働基準法 割増賃金編
厚生労働省 未払賃金が請求できる期間などが延長されています
神奈川労働局 残業代もらってますか?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
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