更新日: 2023.02.22 働き方

2023年4月から変わる。月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について

執筆者 : 新井智美

2023年4月から変わる。月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について
2023年4月1日より、中小企業の月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が変更になります(※1)。大企業については、2010年4月から適用されていましたが、この度、中小企業も対象になる「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率」について解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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時間外労働の割増賃金率とは?

時間外労働を行った場合、その時間に応じた割増賃金を支払うことが労働基準法第37条第1項の但し書きによって規定されています。
 
労働基準法第37条では、「使用者が、第33条または前条第1項の規定により労働時間を延長し、または休日に労働させた場合においては、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の25%以上50%以下の範囲内で、それぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と規定されており、ひと月の時間外労働が60時間を超えた場合は、50%以上の割増賃金率で計算した賃金を支払わなければならないとしています。
 

<2023年3月31日までの割増賃金率>

2023年3月31日までの割増賃金率は、大企業と中小企業で異なっており、大企業は月の時間外労働が60時間を超えた場合は50%となっていますが、中小企業は60時間を超えたとしても、60時間以下と同じ25%でした。
 
しかし、2023年4月1日からは、中小企業も大企業と同様にひと月の時間外労働が60時間を超えた場合は50%の割増賃金率が適用されます。
 

<中小企業に該当するのは?>

中小企業に該当するかは、資本金の額または出資の総額、もしくは常時使用する労働者のどちらかを満たす場合に企業単位で判断されます。
 


 

割増賃金の基礎となる賃金とは?(※2)

割増賃金の基礎となる賃金とは、「所定労働時間の労働に対して支払われる1時間当たりの賃金額」です。しかし、次のものについては、基礎となる賃金から除外できます。
 

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1ヶ月を超えるごとに支払われる賃金

 
また、家族手当や通勤手当、住宅手当について、除外できる範囲を具体的に定めています。
 
1.家族手当:扶養家族の人数またはこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当。そのため、扶養家族の人数などに関係なく一律に支給されるものについては除外できません。
 
2.通勤手当:通勤距離または通勤に要する実際費用に応じて算定される手当。
そのため、実際の通勤距離に関係なく一律に支給されるものは除外できません。
 
3.住宅手当:住宅に要する費用に応じて算出される手当。そのため、住宅の形態ごとに一律に定額で支給するものについては除外できません。
 

割増賃金額の計算方法

割増賃金率については、以下のように定められています。
 

1.時間外労働:25%以上(月60時間を超える場合は50%以上)
2.休日労働:35%以上
3.深夜労働:25%以上

 
そして、割増賃金の額は次の式で求めます。
 
割増賃金額=1時間当たりの賃金額×時間外・休日・深夜労働を行わせた時間×割増賃金率
 

深夜労働および休日労働との関係

1.深夜労働との関係
月に60時間を超える時間外労働を深夜(22~5時)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%に時間外割増賃金率50%を加えた75%が割増賃金率です。
 
2.休日労働との関係
月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれません。ただ、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。ちなみに法定休日労働の割増賃金率は35%です。
 

対象となる中小企業の対応(※3)

2023年4月1日から割増賃金率がアップする中小企業においては、就業規則の変更が必要になります。また、月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給休暇(代替休暇)を付与できます。
 

まとめ

この度の割増賃金率の引き上げは、中小企業にとっては負担になる部分もあるでしょう。そのための助成金として、「働き方改革推進支援助成金」や「業務改善助成金」などが用意されています。
 
働き方改革推進支援助成金を活用することで、上限額最大250万円(一定の要件を満たすと最大490万円)、助成率75%(一定の要件を満たすと80%)の助成を受けられますので、この度の割増賃金率引き上げの対象となる中小企業経営者の方は、助成金の利用もあわせて検討してみましょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 青森労働局 令和5年4月1日から「中小企業の月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%以上」に引き上げられます。
(※2)厚生労働省 割増賃金の基礎となる賃金とは?
(※3)厚生労働省 2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員