【相談実例】年収1300万円なのに、保険から借り入れるほどの自転車操業状態でお金が貯まらないんです。
配信日: 2018.08.01 更新日: 2024.10.10
ですが『年収1300万円あってトラブルもなく』と頭についたらどうでしょうか。今日はそんな状況の人の家計改善実例をご紹介いたします。
Text:塚越菜々子(つかごし ななこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
https://mamasuma.com
目次
貯金残高30万円。保険からの借り入れが200万円!
家計の個別相談に来たSさん(40代共働き子ども1人)は「年収が低いわけではないのに貯金ができません」と言っていました。お金が貯まらない原因は時に複雑で、よく話を聞かないと出てこないこともありますが、Sさんの場合は何てことありませんでした。『収入以上にクレジットカードを使っている』それだけです。
クレジットカードは5枚。しかも十何万もの請求が何枚も来ているのです。毎月カードの請求が来るのがストレスだと言っていましたが、それだけクレジットカードを使えば当然です。
クレジットカードをいくら使ったか意識しておらず、引き落としがギリギリになると保険から借り入れる。少し返すもののまた追加で借り入れる……。結果として貯蓄はなく、子どものための学資保険はほぼすべて借り入れてしまっていました。
クレジットカード使用をなんとかやめる
Sさんの場合は、クレジットカードとの付き合い方を考えるのが、何よりも急務でした。こういう家庭は節約や我慢をするより前に、現金払いに変えるだけで劇的に変わることが多いです。まずはクレジットカードの利用をどうやってやめるかが問題です。
支出の支払いを先送りしての自転車操業だったため、クレジットカードをやめるとそもそも食べ物を買うお金もありません。これ以上保険から借り入れるのも難しい。そこで、なんとか現金化できる資産がないか探し出すことにしたのです。
まずはデパート積み立てをやめていただきました。借金がある状態なのにデパートで買い物をしている場合ではありません。積み立てた分を商品券に変えることができましたので、まずそれを使います。
次に、昔に購入した金融商品も売却して現金化することにしました。これを元手にまずはクレジットカードの利用を減らしていきます。長い目で見て、とか、まとめ買いがお得、などという考え方は一度忘れてもらい、支出は「今すぐ買わないといけないもの」だけに絞りました。
「今やっていいことか」と客観視する
年収1300万円。もっと収入が多い世帯からすれば「普通程度」と感じるかもしれませんが、40代の世帯年収の中央値は600万円台です。1300万円は決して少なくありません。子どもがいるとはいえ、ある程度の「ゆとり」部分を感じることはできる年収です。
ですが、今の場合は違います。「年収1300万円の人ができることか」ではなく「この状態の自分がしていいことか」という基準を心において、支出を俯瞰(ふかん)してみてもらいました。
保険からの借り入れを借金というかは微妙なところではありますが、いずれにしてもクレジットカードで家計が回らなくなりかけているわけですから、それくらいの心構えが必要です。
そして、恵まれない子どもたちを支援する団体への定額寄付を一度やめました。次にオンライン英会話やそれほど利用していないウェブ関係のサービスなども一度すべてやめてもらいました。
日々の買い物も「今週中に使うか」「今週中に食べるか」など考えて購入するようにしたそうです。結果、今までパンパンで物が傷むことが多かった冷蔵庫もスッキリし、余計な支出も自動的に減っていきました。
なんとなくの支出をやめたらあっという間に貯蓄可能に
収入は大きく変わらないので、支出を減らすしかありません。ですが、いきなりすべてを我慢する節約の仕方はリバウンドの原因となります。「欲しいものを無理に我慢しなくてもいい」けれど「本当に欲しいかどうかはお金を触るたびに必ず考えてください」という声掛けをしたところ、なんとなくしていた支出はあっという間になくなりました。
本人は我慢している感じがないのにもかかわらず、出ていくお金が驚くほど減ったのです。
正直なところ、5枚のクレジットカードの請求支払いと現金での支払いが重なる1カ月半は綱渡りでした。家計を再生する前は、カードの引き落としが終わった通帳の残高が346円だったこともありました。
ですが、クレジットカードの精算がすべて終わった月の通帳残高を2人でのぞき込んで驚きました。10万円以上も残っていたのです。我慢に我慢を重ねて残したのではなく、意識するポイントを変えたところ、それだけでお金が「残った」のです。
ここからは借り入れの返済と先取り貯蓄を
その後、ちょうどいいタイミングでボーナスというまとまった金額が入りました。ボーナス払いも使用してしまっていたため、今回残せるのはボーナスの一部でしたが、まずはそれを取り置きました。2、3月以内に必要になる車検などの費用などを残すことで、クレジットカードの再使用を防ぐようにしたのです。
そこから短期的に必要な貯蓄と、長期の貯蓄、借り入れを返していくお金に分けて先取りすることにしました。まだまだ改善の途中ですが、月10万円は安定的に先取りすることができています。
クレジットカードは、未来の自分の収入から借りてきているようなものです。上手に使えば便利なものですが、自制できない場合はあっという間に自転車操業状態になりかねません。
クレジットカードで払う、現金で払うという問題以前に「何のためにお金を払うのか」と冷静に考える習慣を身につけたいですね。
Text:塚越 菜々子(つかごし ななこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催