更新日: 2023.06.21 働き方

新卒ですが、残業を拒み続けて「毎日定時退社」しています。固定残業代はもらってもいいんですよね?

執筆者 : 柘植輝

新卒ですが、残業を拒み続けて「毎日定時退社」しています。固定残業代はもらってもいいんですよね?
月給にあらかじめ残業代が組み込まれている給与形態においては、度々固定残業代の存在が問題となります。特に、就職して間もない新卒者の場合、固定残業代の仕組みについて、あまり理解できていない方もいらっしゃるようです。
 
そこで本記事では、新卒社会人の方に向けて、固定残業代について解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

固定残業とはどんな制度?

固定残業とは、実際の残業時間にかかわらず、一定の残業代を支払うという制度です。例えば、毎月20時間分の残業代として、4万円分の固定残業代を支給すると決められていれば、残業を20時間したとしても、残業を全くしなかったとしても、20時間分の残業代4万円を受け取れるという仕組みです。
 
ただし、固定残業代は、定額で社員を働かせることのできる制度ではありません。固定残業代に規定する時間を超えた分の残業代に関しては、超過分の残業代を支給しなければなりません。例えば、20時間の固定残業代が支給される給与形態において、21時間残業をしたら、超過している1時間分については、別途残業代として支給を受けることができるということになります。
 
固定残業代については労働基準監督署に多く相談が寄せられているといい、労使ともに正しく理解することが必要な制度といえるでしょう。
 
【図表】


 
出典:厚生労働省 若者の募集・求人の申込みをお考えの事業主の皆さまへ 職業紹介事業者の皆さまへ
 

残業を拒んで定時退社しても固定残業代を受け取れるのか

固定残業代の存在は、残業を強制するものではありません。そのため、その残業が業務上必要とはいえないものや、体調不良である場合など、正当な理由であれば残業を拒否しても問題ないのです。当然、固定残業代も残業拒否を理由に減額されることなく、満額受け取ることができます。
 
しかし、業務上必要と判断されれば、正当な理由なく残業を拒否することはできません。友人と遊びたい、趣味を優先したいなどの理由で、業務上必要な残業を拒み続けていると、減給の対象となる場合もあります。
 
ただ、新卒社会人の独断で「仕事がないから残業の必要がない」と、残業拒否をしてしまうことは避けた方がいいでしょう。本人からは必要のないように見えても、周囲から見れば必要な残業である可能性もあるからです。
 
少なくとも、残業拒否を強行するべきではなく、なぜ残業が必要か確認し、職場との調和も考慮して、本当に残業を拒否することが正しいのか考えることが必要でしょう。
 

固定残業代が含まれる給与形態=ブラックとは限らない

新卒であるかを問わず、社会人の間では「固定残業代が含まれる会社はブラック企業だ」と言われることもあります。たしかに「固定残業代を払っているのだから、何時間働いても残業代は一定だ」と、法に違反する主張をする企業があるのも事実です。しかし、固定残業代を適正に扱っている企業も存在しています。
 
注目すべきは、固定残業代を抜いた基本給です。賞与や残業代は基本給を基に計算されます。固定残業代で給与額が高く見えたり、納得できる給与額に見えたりしても、働いている時間に比べて少ない給与額となっていることもあります。
 
一方で、基本給の水準が同業他社と同程度であり、残業代の計算の手間を簡略化するため、雇用主が固定残業代を導入しているケースもあります。
 
いずれにせよ、固定残業代が含まれている給与形態の会社は一律にブラックだと決めつけてはいけません。
 

固定残業代については正しい理解が求められる

固定残業代の存在は、残業を強制するものではないため、残業を拒否してもそれが正当なものであれば、固定残業代を満額もらうことができます。
 
しかし、必要のある残業を拒否したと判断されれば、その限りではない可能性もあります。固定残業代については、今も労働基準監督署へ多くの相談が寄せられている状態です。
 
固定残業代の存在する会社で働いているのであれば、固定残業代について正しく理解をしておきましょう。
 

出典

厚生労働省 若者の募集・求人の申込みをお考えの事業主の皆さまへ 職業紹介事業者の皆さまへ
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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