更新日: 2023.08.07 家計の見直し

【電気料金値上げ】 新電力を検討したほうがいい?

執筆者 : 植田英三郎

【電気料金値上げ】 新電力を検討したほうがいい?
2023年6月から大手電力会社7社の電気料金の値上げが実施されています。値上げ率は7社の単純平均で26.1%にもなる大幅なものです。
 
ただ、一般消費者は、2016年から大手電力会社10社以外の新電力会社(新電力)と契約して電気を使用できるようになっています。
 
今回の電気料金の値上げの結果、大手電力会社と新電力の電気料金がどのようになっているか、新電力を含めた電力会社を選ぶ際のポイントと共に学んでみましょう。
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

新電力とは

「新電力」とは、大手電気会社(北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の計10社)以外の、新しく電気の販売に参加した会社のことです。
 
電気・電力は、「発電」「送配電」「小売」の3部門で運営され、このうち新電力は「小売」に参入できることになりました。2023年7月7日現在、大手電力会社10社を含めて731社の電力会社が登録されています。
 
新電力に参入した企業は、ガスや石油等のエネルギー関係企業、通信事業系企業、その他企業があります。
 
大手電力と新電力の全体で、一般家庭用の電気を供給している上位50社について構成比をまとめました。表1は2023年2月の家庭用電力の需要のウエイトをまとめたものです。
 
【表1】
 

 
資源エネルギー庁 統計表一覧を基に筆者が作成
 
新電力会社全体では24.6%、上位40社では21.2%の電気・電力を販売しており、相当のウエイトがあることが分かります。
 

大手電力と新電力の電気料金の比較サンプル

今回の電気料金の改定では、大手電力と新電力が共に値上げを実施しています。
 
表2では、大手電力と新電力の電気料金について、一定の条件でのサンプル比較をしてみました。
 
新電力は40社の中で上位にランクされる2社と独自の料金システムを採用している3社について、電力の供給エリアが同一の大手電力会社と比較します。
 
以下のサンプルモデルの計算は、次の条件に基づいて行いました。電気代の契約実態はさまざまありますが、今回は一般家庭用契約において、40アンペア―、月間450キロワットを使用した場合とします。
 
電気代は、基本料金、従量料金、託送費、サービス費、燃料調整費が組み込まれており、電力会社によって開示される料金表への反映状況が違っている場合があります。
 
ここでは、サンプルとして取り上げた会社の6月1日以降の電気料金を告知するホームページに掲載された数値を採用しました。
 
【表2】
 

 
2023年6月1日以降の電気料金比較サンプル サンプル電力会社のHPのデータに基づき筆者が作成
            
この表から読み取れることは以下の点です。
 

●新電力は、大手電力と同じ料金体系の中で、基本料金や電力量料金単価を、大手電力よりも安い単価で設定して、新たな顧客を獲得しようと試みていることが分かります。
 
●C社は基本料金のゼロ化と電力量の3段階(120キロワット、120~300キロワット、300キロワット以上)とは別の、30分ごとの発電会社からの購入(仕入れ)単価によって、電力料金を決めるしくみを採用しています。

 

新電力のメリット

新電力のメリットとしては以下の点があります。
 

●電気料金で大手電気より低価格を実現できる場合がある
  ・単価を下げる(基本料金、単位当たり単価)
  ・時間帯別の料金情報を伝えて料金が下がるようにガイドする
(単価の低いときに電気使用を薦め、高いときに抑える)
  ・生活パターンに合わせた電気の使い方によって電気代を安くする
 
●電気小売以外の併営事業で契約者特典(インセンティブ)を還元する
  ・併営のガス料金と合算の割り戻しをする 
  ・併営の通信事業等で割り戻しをする
 
●ガス会社運営の新電力の場合は、光熱費全体の増減を見ることで切替効果が測定しやすい

 

新電力の注意点

新電力に切り替える場合は以下のような点に注意が必要です。
 

●解約時に違約金が掛かる場合がある
●料金が市場連動型(料金が日本卸電力取引所の価格に連動)の場合は、一般電力より高くなる場合がある
●小規模の新興新電力の場合は、撤退や倒産のリスクもある
●マンション等の集合住宅の場合は個人で新電力を選べない場合がある

 

まとめ

電気料金が大幅値上げになったので、新電力を検討したい方もいるかもしれません。。ただ、新電力の仕入れ元は大手電力会社であることが多いので、電気料金に関して、過大な期待を抱くのは難しいかもしれません。併営事業(ガスや通信)と合わせた特典を中心に考えるのが無難ではないでしょうか。
 
従量ランク別の料金体系の新電力については、生活パターンに合わせて利用することで効果が上がる場合もあり、しくみを理解して新電力を選ぶことが大切でしょう。

出典

(※1)経済産業省 登録小売電気事業者一覧
資源エネルギー庁 統計表一覧 (参考)機械判読用レイアウト版3-(1)電力需要実績

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執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP

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