更新日: 2024.10.10 働き方

先月は30時間残業したのに、会社から「自己申告できるのは20時間までだから」と残業代をカットされました…泣き寝入りするしかないでしょうか?

先月は30時間残業したのに、会社から「自己申告できるのは20時間までだから」と残業代をカットされました…泣き寝入りするしかないでしょうか?
労働者は会社に雇われている立場であり、法律などの知識も不十分な場合も多いです。そのため、もしも「自己申告できる残業時間は20時間だ」などと言われたら、例え20時間以上残業していたとしても、会社と交渉するのは難しいのではないでしょうか。
 
本記事では、このようなケースにおける対処法や相談窓口の特徴、使い方などを紹介します。
玉上信明

執筆者:玉上信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

労働時間を自己申告する時間数に上限を設けるのはNG

会社は従業員の労働時間を適正に把握する責務があります。「自己申告できる残業時間は月20時間まで」などと、労働時間を自己申告できる時間数に上限を定めることはできません。
 
もし会社から時間数を制限されたなら、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を会社に示してみましょう。
 
それでも改善されない場合は、公的な相談窓口への相談をおすすめします。
 

公的な相談窓口とは

働いている現場では、さまざまな問題が起こります。問題解決のためにも、国や地方自治体等では各種の相談窓口を設けています。それぞれの窓口の役割と機能を理解しておくことが大切です。公的な相談窓口の全体像は図表1のとおりです。
 
【図表1】


 
厚生労働省 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)
 

総合労働相談コーナー

相談窓口といっても、どこに相談したらわからないときはまず、会社がある場所の労働局などの「総合労働相談コーナー」がおすすめです。各都道府県労働局、労働基準監督署内など全国379ヵ所に設置されています。
 
職場のトラブルに関する相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っており、未払い残業代だけでなく、解雇や雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集と採用、いじめ、嫌がらせ、パワハラなどあらゆる分野の労働問題を扱ってくれます。専門の相談員が面談もしくは電話で対応してくれ、予約不要で利用料も無料です。
 
未払い残業は労働基準法等に違反する疑いがあるため、総合労働相談コーナーに相談すれば、労働基準監督署等のふさわしい機関に取り次いでくれます。
 

労働基準監督署

「残業代を払ってもらえないなら、労働基準法違反だ。労働基準監督署に行こう!」と考える人もいるかもしれません。しかし、内容によっては労働基準監督署よりも、労働局長の「助言・指導」や紛争調整委員会の「あっせん」のほうがふさわしいケースもあります。
 
まずは先述した「総合労働相談コーナー」に相談し、そこから労働基準監督署に取り次いでもらうほうが円滑に進むこともあるでしょう。
 

個別労働紛争解決制度を利用する

総合労働相談コーナーや労働基準監督署の相談を踏まえ、会社と交渉しても解決に至らない場合などには、問題解決のために個別労働紛争解決制度を利用することができます。前述した労働相談のほかに、以下の4つもチェックしてみましょう。
 

都道府県労働局長による助言・指導

総合労働相談コーナーが窓口で、利用は無料です。都道府県労働局長による助言と指導により、会社と労働者に紛争の問題点と解決の方向を示し、自主的な解決を促します。これで解決しない場合は、あっせん制度へ移行可能です。
 

紛争調整委員会によるあっせん

労働局長の助言・指導で解決しない場合に利用できます。公平・中立な第三者として労働問題の専門家(弁護士、大学教授、社会保険労務士などの紛争調整委員)が入り、お互いの主張を確かめて調整し、話し合いでの解決を図ります。後述する裁判に比べ、スピーディーで簡便です。
 
ただし「労働局長による指導・助言」や「紛争調整委員会によるあっせん」は、いずれも「話し合い」で歩み寄りを求める手続きです。したがって、未払い残業代全額を払ってもらうのは難しい場合が多いとも言われています。
 

労働審判手続

労働審判手続は、裁判所の審判でトラブルを解決する手段です。ただし時間や費用がかかり、弁護士費用も必要となります。労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名の「労働審判委員会」で、原則3回以内の期日で審理することになっています。
 
審判に不服のある当事者が異議申立てをすると、労働審判は効力を失い通常訴訟へと移行します。
 

通常訴訟

個人間の法的な紛争など、主に財産権に関することが民事訴訟法に従って審理が行われます。長いときは2~3年と期間がかかるケースもあり、もちろん弁護士費用も必要です。
 

まとめ

残業代を払ってもらえない場合であっても、泣き寝入りするのはやめましょう。まず会社に請求、それでも交渉が難しい場合は、まず総合労働相談コーナーに相談しましょう。
 
毎年100万件以上の相談が寄せられており、労働相談の基本的なインフラです。さらに必要に応じて、個別紛争解決制度を活用していきましょう。
 

出典

厚生労働省 リーフレット 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内
厚生労働省 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)
 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

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