2045年には2割の人手不足が予想される「地方公務員」 就職先としてはねらい目なのか? 現状を踏まえ解説

配信日: 2023.08.30 更新日: 2024.10.10

この記事は約 4 分で読めます。
2045年には2割の人手不足が予想される「地方公務員」 就職先としてはねらい目なのか? 現状を踏まえ解説
2023年、アメリカではAI(人工知能)によって仕事を脅かされる可能性があるにもかかわらず規制などが不十分であることや、賃金や待遇面をめぐって脚本家や俳優がストライキを起こしています。
 
人工知能研究の権威であるレイ・カーツワイル氏は、2045年にはAIの能力は人間を上回ると提唱しており、これからの世の中が大きく変わると予想されています。
 
そういった中で、自分の仕事は大丈夫なのか気になる人も多いのではないでしょうか。株式会社日本総合研究所の推計によると、2020年代の行政サービスの水準を維持するためには、2045年には地方公務員数が約83万9000人必要であるのに対し、約65万4000人しか確保できず、充足率は78.0%まで低下するとしています。
 
その仮説が正しいのであれば、地方公務員こそが安定した生活を送る最適な選択だということになります。本記事では、本当に地方公務員が目指すべき職業なのかについて確認してみました。
老田宗夫

執筆者:老田宗夫(おいだ むねお)

キャリアコンサルタント

地方公務員の現状

地方公務員の数は1994年の約328万人でピークを迎え、そこから減少傾向にあります。2022年4月1日現在では280万3664人となっており、ピーク時と比較すると約48万人減少(約15%減)しています。デジタル技術の導入などで積極的に業務効率を図っていることがうかがえる減少率です。しかし、2015年ごろから下げ止まり傾向が顕著であり、2020年ごろからは少し増加しています。
 

出生地で働くという常識は通用しなくなる

人手不足が予想される大きな理由は人口減少の影響です。規模の小さい地方自治体の場合、出生地である、学生時代を過ごしたなど、何らかの縁やゆかりがある人が働く場合が多いと考えられます。
 
しかし、総務省が調査した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、2022年中の出生者数が10人未満の団体は135団体(前年128団体)に上っており、多くは7000人未満の自治体です。
 
また、出生者数が0人である団体は、4団体(前年2団体)も存在しています。つまり、これらの地方自治体では将来、公務員試験の受験者が不足する可能性が高いことが予想されます。2045年ごろには地方公務員の確保は非常に厳しくなるといわれるのは、こういった背景もあるわけです。
 

業務量は増えるが予算は増えない

人口が減っているわけですから、地方公務員の業務量も減るのではないかと考えられますが、問題はそれほど簡単ではありません。住民の高齢化や過疎化への対応など、手厚い個別対応が求められる場面の増加が予想され、業務量としてはむしろ増えるだろうと考えられています。
 
総務省によると、2013年と2040年を比較して、政令指定都市では人口減少率(9.2%)とほぼ同じ割合で公務員数を減らすことができるのに対し、人口1万人未満の町村は人口が37.0%も減るのに公務員数は24.2%しか減らすことができないと試算されています。
 

より必要とされるデジタル技術

住民数が減り、かつ年金支給対象の高齢者の割合が増えるということは、住民税などの地方税収が少なくなることを意味します。税収が減れば当然、今まで行ってきた行政サービスの質を保つことができなくなります。
 
地方自治体にとって業務の効率化は不可欠であり、デジタル技術の活用は急務です。
 
例えば、65歳以上が人口の48%超と高齢化が進む茨城県大子(だいご)町は、教育、介護、医療、公共交通などの分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進しており、成果を上げています。なお、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、企業がAIなどのデジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなビジネスモデルを創出することを意味します。
 
東京都ではデジタル人材育成支援事業による無料の講座が開かれていたり、経済産業省でもデジタル人材の育成に取り組んでいたりするため、積極的に参加してスキルを磨くことで地方公務員として活躍の場を拡げることにもつながりそうです。
 

地方公務員の年齢制限

地方公務員試験(行政職大卒程度)の年齢上限は地方自治体によって、または専門職や技術職など職種によって異なります。
 
そして、その多くの場合が26歳~35歳くらいに設定されていますが、警察官や消防官など公安系の公務員や、国立大学の職員など教育系の公務員もおおむね同様で、少しずつ緩和傾向にあるようです。地方公務員の初級職など、高卒者を対象としている職種については21歳前後に設定されていることが多く、注意が必要です。
 

過疎化が進む地方自治体こそチャンス

これからの地方公務員の仕事において、業務改革、中でもDXの推進は必要不可欠であり、急務です。デジタル技術を活用し、地方自治体の暮らしをいかに守っていくことができるのか。過疎化が進む地方自治体にこそ、意欲的に仕事に取り組みたいと考える人にとってのチャンスは多くなるでしょう。
 
つまり地方公務員は、安定した雇用環境にいながら、チャレンジできる未来を与えてくれる職業であるといえるかもしれません。
 

出典

総務省 令和4年地方公共団体定員管理調査結果

総務省 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数

 
執筆者:老田宗夫
キャリアコンサルタント

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集