更新日: 2023.08.31 働き方

新卒3年目、年収「250万円」の派遣社員です。「契約社員にならないか」と誘われたのですが、受けるべきでしょうか?

新卒3年目、年収「250万円」の派遣社員です。「契約社員にならないか」と誘われたのですが、受けるべきでしょうか?
安定した生活を送るために、「今は派遣社員として好きな仕事をしているけど、いつかは正社員になりたい」と考える人は多いと思います。「まだ若いのでしばらくは自由に好きな仕事をしていよう」と思っていたところ、正社員ではなくて契約社員になることを勧められたら、どうすべきなのでしょうか。
 
本記事では、契約社員と派遣社員のメリット、デメリットを具体的に見ていきながら、どのように判断したらよいのか、について解説します。
老田宗夫

執筆者:老田宗夫(おいだ むねお)

キャリアコンサルタント

派遣法で守られているという事実

派遣社員として働いている間の雇用条件(給料や労働時間、仕事内容など)については、派遣会社の担当者が全て交渉してくれますし、何か問題が発生した時にも解決してくれます。しかし、契約社員になるということは、企業との直接雇用になるため、それら全てのことを自身で交渉しなければなりません。
 
契約社員になったからといって、必ずしも年収があがったり、労働条件が良くなったりするとは限りません。給料の支給方法も変わりますし、福利厚生や有給休暇制度なども派遣社員の時の方が制度は整っている場合も考えられます。
 
契約社員になるときに、勤務形態や給与、仕事内容、勤務時間、休日・休暇制度、教育制度などをしっかりと確認し、本当に自身の求めている働き方・条件なのかを判断しなければなりません。
 
契約社員になる場合、これらの交渉事を自身で行う覚悟が必要です。もし面倒だと思うのであれば、契約社員にはならない方がよいかもしれません。派遣社員でいる間は、派遣元事業主という雇用のプロに守られているということを理解しておく必要があります。
 

契約社員の道を選ぶべき人とは?

もちろん契約社員になることによって得られるメリットもあります。具体的に解説します。
 

派遣は同じ職場に3年しかいられない

もし今の職場のことを気に入っており、しばらくは働き続けたいと思っているのであれば、契約社員になることを受け入れるしか選択肢はありません。なぜなら、法律によって派遣社員が同じ事業所の同じ部署で就業できる期間は、派遣就業開始日から原則3年までと決められているからです。これを俗に「3年ルール(※例外あり)」と言います。
 
つまり、3年を経過しても同じ職場で働きたいのであれば、今働いている会社に社員として採用される必要があります。
 

就業先が評価した証明になる

もし「将来は正社員として働きたい」と考えているのであれば、誘いを受けたほうがいいでしょう。会社の同僚が今までのあなたの働いている姿を評価して、今後も働いてほしいと考えたからこそ、「契約社員にならないか」と誘っているということは、将来とても大切なことになります。
 
近い将来、正社員としての就業を望んでいるのであれば、派遣社員から契約社員になったという実績が、正社員を目指した転職活動の際に強力な武器になります。今までの職場で高い評価を受けてきた証明になるからです。
 
また、派遣社員から契約社員になることで業務の幅が広がりますので、キャリアアップにつながる可能性が高いです。
 

責任ある仕事に就くことができる

もし「今すぐキャリアアップしたい」と考えているのであれば、誘いを受けたほうがいいでしょう。なぜならば、キャリアアップするためには責任のある仕事を経験する必要があるからです。
 
派遣社員で就業していると「責任のある仕事が回ってこない」と感じる人も多いと思いますが、それは法律上しかたがないことなのです。派遣社員は企業に直接雇われているわけではないので、上司と部下の関係ではありません。
 
派遣社員に責任ある仕事を任せ、もし失敗してしまった場合、上司がその責任を負うことができません。従って、上司は自分の責任のもとでは派遣社員に責任のある仕事を依頼することができないのです。
 
契約社員になれば、企業に直接雇われる立場となり、上司と部下の関係になりますので、責任ある仕事にチャレンジできるようになります。年齢があがれば責任のある仕事をしてきたかどうか、経験を問われる場面が増えてきます。当然次の転職活動の際には、その経験の有無が大きく影響します。
 

契約社員では雇用の安定にはならない

契約社員は基本、1年~3年ごとに更新手続きをする必要があるので、そのタイミングで働くことができなくなってしまう可能性があります。また、同じ職場で働くことができる期間が、派遣社員と同じようにきまっています。派遣社員よりは長いですが、それでも最長5年間です。それ以上働き続けたいのであれば、今度は正社員(無期雇用契約)として雇ってもらう必要があります。
 
つまり、契約社員になったとしても、雇用の安定という意味では問題を先送りしただけになります。ずっと同じ職場で働くことはできませんので、将来を見据えた雇用の安定にはならないのです。
 
もし正社員になることを見越して契約社員になるのであれば、「今のまま働き続けたら、正社員として雇ってもらえる可能性があるのか」について、事前に確認しておく必要があります。
 
仮に22歳から派遣で3年間、その後契約社員として5年間働いたら30歳になります。派遣社員も契約社員も事前に仕事内容を限定しなければならないので、就業中にステップアップするのは難しいのです。仕事内容が変わらぬまま、年齢を重ねてしまった後の転職活動は、今よりも条件が悪くなってしまう可能性が高いでしょう。
であれば、今の段階で次の道を選択した方が良いかもしれません。
 

今の自分が1番実現したいのは何かを考えよう

派遣社員より契約社員になったほうが、働く条件が良くなると考えている人も多いと思いますが、その考えは改めたほうが良いでしょう。
 
例えば派遣社員は、担当する業務のすべてを契約書に記載しなくてはならないので、経理事務の仕事であれば、それ以外の仕事をしなくても良いのです。しかし契約社員になってしまえば、その制限はなくなりますので、電話対応や雑用が増え、経理事務の仕事ができなくなる恐れもあります。
 
また、派遣社員の間は残業を依頼されることがほとんどなかったのに、派遣社員になったとたん、残業が増えるといったことも考えられます。残業時間が増えれば年収は当然あがりますが、そのような状態を望んでいるのでしょうか。
 
自由な時間を確保しながら、自身が興味のある業務だけをやりたいのであれば、職場を変えてでも派遣社員のまま、働き続けたほうが良いこともあります。世間の常識に惑わされず、自身にとって1番良いことは何かをよく考えて選ぶようにしてください。
 

出典

厚生労働省・都道府県労働局 派遣で働く皆様へ

厚生労働省 無期転換ルールの概要

厚生労働省 派遣労働者・労働者の皆様

 
執筆者:老田宗夫
キャリアコンサルタント

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