更新日: 2023.09.15 働き方

「来週、有休とるの?じゃあ今週は残業してね」と上司に言われましたが、これは「残業命令」ですか?

「来週、有休とるの?じゃあ今週は残業してね」と上司に言われましたが、これは「残業命令」ですか?
有給休暇(有休)をとろうとしたとき、上司からその分の残業を命じられた経験はないでしょうか。これはいわゆる残業命令として指示に従わなければならないものなのでしょうか。有休をとろうとして残業を指示されたとき、どうするべきなのか考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

基本的に残業の指示には従うべきである

会社は従業員に対して業務命令をすることが可能です。業務命令は仕事の進め方だけではなく、残業の指示も可能となります。
 
上司からの物言いが「残業してね」という柔らかいものであれば、まだ残業をお願いしているだけなので命令とは限りませんが、実質的にそれが拒否できないものである場合は、いわゆる残業命令に該当するでしょう。その場合、基本的には上司の指示に従い、残業をする必要があります。
 
例えば、会社が繁忙期であったりギリギリの人数で対応したりしているところ、有休をとると業務が滞ってしまうことがあります。それを防ぐために、1人が来週休む分は今週前倒しをさせる必要があります。そのため「今週残業してね」と上司が言った場合、それに従う必要があるでしょう。
 
ただし、業務命令に基づく残業は全て従わなければならない、というわけでもありません。その残業命令が単なる嫌がらせであるような場合や、残業が法や事業所で定められた上限時間を超えているなどの場合は、それに従う必要はないと考えられます。また、不必要な残業など合理性を欠く場合も命令に従う必要はないと考えられます。
 

残業命令が不利益扱いに該当しないのか

有休を取得する人に対して何らかの不利益を与える「不利益扱い」は、法律上禁止されています。ここで疑問になるのが、有休をとるときの残業命令が「不利益扱い」とならないか、という点です。この点に関しては、その命令が業務を円滑に進めるためであれば、基本的に不利益扱いとなることはないでしょう。
 
そもそも会社は、従業員の有休について時季変更権を有しています。時季変更権とは、有休の取得によって事業の正常な運営が妨げられるときに、労働者に時季を変更するよう求めるものです。時季変更権はそう簡単に行使が認められてはいないものになりますが、それが難しい分、残業をお願いしている可能性もあります。
 

残業すれば「お金が増える」と前向きに考えてみる

残業をすると、時間当たりの給与が通常の1.25倍以上となります(法定労働時間を超えた金額であり、深夜労働などは考慮しないものとします)。例えば、時給1500円相当の方が1時間残業した場合、1875円もの時間給を得ることができます。この場合、通常の時間給よりもなんと375円も高いことになります。
 
仮に時給1500円相当の方が、1日2時間残業していると考えてみましょう。有休を取得したことで残業をしない日が1日生じてしまうと、その月の収入が残業2時間分である 3750円も減ってしまうことになります。
 
しかし、有休を来週取得する分、今週は2時間多く残業をしておけば、たしかにその週は大変かもしれませんが、月の収入で見れば残業代が減らず、収入が安定します。
 
残業が2時間であれば、減ってしまう割増賃金は3750円にとどまりますが、これが積み重なり20時間となれば3万円を大きく超え、決して小さい金額ではなくなってきます。
 
このように、残業をすれば割増賃金が得られ、収入が高くなるため、ある程度割り切って考えるのもよいと思います。また残業代を有休で消費して、より楽しい時間を過ごしてリフレッシュすることもできるでしょう。
 

まとめ

翌週有休を取ろうとして、上司から「今週残業してね」とお願いされたときは、それが実質的に残業命令に該当する場合もあります。その残業が違法なものや、嫌がらせ目的ではない限り、基本的に残業命令には従う必要があるでしょう。
 
また、会社によりますが、残業をすれば通常の1.25倍に増えた残業代を受け取ることができます。「残業は嫌だな」と後ろ向きになるより、「せっかくなのでお金を得つつ、仕事がしっかり片付いて、より気持ちよく有休を過ごすことができる」と前向きに考えた方が、お金の面でも気持ちの面でもよい影響が得られるかもしれません。
 

出典

厚生労働省 知っておきたい働くときのルールについて

東京労働局 しっかりマスター労働基準法

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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