更新日: 2023.10.18 働き方

残業代が支払われない「課長」職は、平社員と比べて給与面で優遇されている?

執筆者 : 柘植輝

残業代が支払われない「課長」職は、平社員と比べて給与面で優遇されている?
多くの会社で課長職に昇進すると、給与形態が変わることが一般的です。その中でもよく話題になるのが、「課長職に就くと残業代が支払われなくなる」というものです。
 
この点について、課長職は平社員と比較して給与面で優遇されているのかを考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

課長職の給与は平社員と比較してどう優遇されている?

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」役職第1表「役職、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」によれば、企業規模計10人以上の企業における非役職者の平均的な給与は451万2000円となるようです(きまって支給する現金給与額を12倍し、年間賞与その他特別給与額を加えた額)。所定内実労働時間数は165時間、超過実労働時間数は13時間となっています。
 
同じく令和4年賃金構造基本統計調査によれば、企業規模計10人以上の企業における課長職の平均的な給与は783万6800円となるようです(きまって支給する現金給与額を12倍し、年間賞与その他特別給与額を加えた額)。所定内実労働時間数は168時間、超過実労働時間数は4時間となっています。
 
あくまでも賃金構造基本統計調査の結果ではありますが、課長職になることで、給与は1.7倍以上に大幅アップしています。それに対して労働時間はほぼ横ばいになっていることから、平社員と比べて課長は給与面においては優遇されているといえそうです。
 

責任が重くなり割に合わないと感じる可能性もある

統計上の数値だけ見れば、課長は平社員と変わらない労働時間で、より大きな額の給与を得ているように見受けられます。しかし、給与が高いというにはそれなりの理由があります。課長職の働き方においては、数字には表れない「責任の重さ」という部分も考える必要があります。
 
勤務先によって異なる部分もありますが、課長職は管理職として、部下の指導や課の管理など、より経営に近い場面で仕事をすることになります。当然責任も重くなり、人によっては割に合わないと感じることもあります。
 
実際、2020年にマンパワーグループが行ったアンケートによれば、「責任の重い仕事をしたくない」という意見が、管理職になりたくない理由の第1位となっています。
 
仮に給与が1.7倍になったとしても、責任が2倍、3倍と給与額に対して割に合わないほど大きくなってしまうと、「給与面で優遇されているとはいえない部分もある」と感じてしまう方もいるかもしれません。
 

残業代が支払われなくとも、課長は給与面で優遇されているといえるか?

課長職になると、残業代が払われなくなることもあるようです。その理由は、労働基準法41条2項によって「課長など管理監督者には残業代を払う必要が原則ない」と定められているからです。
 
会社の給与形態や課長として任せられる業務内容によっては、残業代が支給されなくなることで、平社員よりも優遇されているとまではいえなくなってくるかもしれません。SNSなどでは、「課長になると残業代が付かなくて、かえって給与が下がる。責任も重くなって、よいことがない」といった声も見受けられます。
 
とはいえ、先の賃金構造基本統計調査を見る限り、基本的には、課長の給与は平社員と比べて優遇されているといえるでしょう。一般的な課長であれば、残業代が支給されなくとも、管理職手当や基本給の増加によって、平社員よりも給与が高くなるはずです。
 

課長職は、基本的に平社員と比べて給与面は優遇されている

厚生労働省の調査によれば、課長の平均給与は783万6800円なのに対し、平社員は451万2000円であり、一般的に給与額だけ見れば、課長の給与は平社員と比べて優遇されているといえそうです。
 
ただし、給与形態は勤務先によって大きく異なります。勤務先によっては、平社員のままの方が給与も高く責任も重すぎない、という可能性もありえます。また、給与面だけを見て課長になってしまうと後悔してしまう可能性もあります。
 
自身のキャリアを考えるに当たっては、肩書や給与額だけで考えるのではなく、自身の理想とする働き方について多角的に検討し、考えていくことが必要になるでしょう。
 

出典

厚生労働省 e-Stat 令和4年賃金構造基本統計調査
Manpower Group 「今後、管理職になりたいか」についての調査
e-Gov 労働基準法
 
執筆者:柘植輝
行政書士

ライターさん募集