部署異動による「引き継ぎ」業務で残業を強いられています。残業は「努力義務」程度で、拘束力はないと思うのですが……
配信日: 2024.01.29 更新日: 2024.10.10
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
残業は努力義務程度ではない法的拘束力を持つことがある
まず基本的に、会社から下された残業命令には従う必要があります。会社は就業規則など労働者と取り決めた内容に沿った指揮命令権を有し、労働者を労働に従事させることができるからです。
一度、自分の会社の就業規則を確認してみましょう。そこに「所定労働時間を超えて労働させることがある」といった旨の記述があれば、勤務先は残業命令を下すことができます。この場合、残業命令に従わないと「業務命令違反」として何らかの処分を受ける可能性があります。
大抵の場合、会社の業務命令に従わない場合は命令違反として処分が下る旨が就業規則に定められており、それに沿った処分が下されます。
そのため一般的には、残業は努力義務ではなく、会社との関係で法的拘束力のあるものだと考えられます。実際、厚生労働省の公開しているモデル就業規則(就業規則におけるモデルケース)にも、上記のような規定があります。
残業は命令であっても絶対に拒否できないわけではない
会社からの残業命令があったとしても、それが絶対に拒否できないわけではありません。残業命令に対して、やむを得ない事情があれば、それを理由に残業を拒否することもできると解されています。また、やむを得ない理由とはいえ、生命に関わるほど重大なものでなくても認められるようです。
過去の判例においては、診断書を提出した上で眼精疲労を理由に残業を拒否した労働者の場合について「やむを得ない事由があった」として認められています。その事例においては、労働者は残業拒否を理由に解雇をされていましたが、裁判によって解雇は無効とされました。
いずれにせよ、心身の健康など労働者の利益を著しく損なう場合は残業拒否ができるといえそうです。
「お金のため」と割り切るのもあり
もし、心身に著しい影響がなかったり、家庭に影響がなかったりするのであれば、部署異動による引き継ぎの間だけでも「お金のため」と割り切って残業するのも有効です。というのも、残業中は通常の賃金の1.25倍の残業代が支給され、普段よりも多くの賃金を得ることができるからです(1日当たり8時間を超えた部分を残業代として考えた場合)。
また「部署異動のため」とあれば、忙しい期間はせいぜい数週間から、長くとも1ヶ月程度だと推測されます。従って、基本的に長期間残業がそれ以降も当たり前になることが考えづらく、一時的な収入アップのためにはうってつけです。
仮に月収23万5200円(時給換算で1400円、1日8時間、月21日労働と仮定)の方が、1ヶ月で20時間の残業を行った場合、得られる残業代は3万5000円になります。普段の月収と合わせて、27万円ほどになります。
まとめ
部署異動による引き継ぎによって一時的に残業を命じられた場合、基本的にその残業は義務であり、会社に従う必要があると考えられます。
もし、どうしても残業命令に納得がいかないという場合、残業代の観点からも残業について考えてみてください。そうすることで、部署異動による一時的なものであれば、納得して会社の残業命令に従事できるかもしれません。
出典
わーくわくネットひろしま 5-14 残業命令を拒否できるか
厚生労働省 モデル就業規則
執筆者:柘植輝
行政書士