更新日: 2019.05.17 その他家計

「支出の目安は収入の○○%」にはご用心。支出についての考え方とは

執筆者 : 重定賢治

「支出の目安は収入の○○%」にはご用心。支出についての考え方とは
家計のやりくりを考える際は、「収入」「支出」「資産」「負債」と4つのジャンルに分けて考えると、どこにどのような問題があるかが見つけやすくなります。
 
今回は「支出」についてお伝えしていきます。
 
重定賢治

Text:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

支出は相場で考える

支出に関してよくある質問が「支出の目安」についてです。これは、ファイナンシャル・プランニングの面談でも聞かれるケースが本当に多いです。
 
この「目安」という言葉がマジックで、収入のうち何パーセントぐらいという答えを求められるときがあります。確かに「何パーセント」だとわかると、ウチの場合はどうなんだろうと、メドをつけやすい印象があります。
 
でも、これ、印象なんです。だから、マジックと言いました。
  
考えてみれば、普段、目安というと、相場のような意味合いで使っていることが多いですよね。
 
天候不順などでキュウリが1本50円、高い! とか、料理をしているときの、しょうゆ大さじ1杯、水2カップとかです。このように表現されると、「あぁ、だいたいこれぐらいね」という感じで、相場が目安になり、実感がわいてきます。
 
でも、家計について相場ではなく、割合(パーセント)で目安をとらえてしまうと、それを実際の金額にしたとき、大きく、ずれてしまう危険があります。よく言われるのは「収入の何パーセント」という表現です。
 
「月々の収入が30万円の場合、毎月の保険料の目安は収入の何パーセントですか?」この質問を例に、具体的な数字を使って計算してみます。
 
仮に、保険料の目安が10.0%としましょう。この場合、1ヶ月の保険料は3万円になります。では、月々の収入が50万円の場合はどうでしょうか。1ヶ月の保険料は5万円になります。
 
月々の収入が20万円の場合はというと、2万円です。
 
このように、パーセントで表現してしまうと、ご家庭によって金額の振れ幅が大きくなります。つまり、本当に求められている答えは「相場」です。
 
相場で求められるのは具体的な数値であるため、「割合(パーセント)」で目安をとらえようとするのは間違いのもとになります。
 

支出の割合は家庭の状況で変わる

それともうひとつ、割合で目安を考えることが危険な理由は、ご家庭によって家族構成や家計の状況がそもそも違うからです。極端な例でいうと、「シングル世帯」と「夫婦2人・子ども3人の5人家族」では、お金の使い方自体、まったく違いますよね。
 
「シングル世帯」では、子育てにかかる費用は一切発生しません。一方、「夫婦2人・子ども3人の5人家族」では、共働きの場合、収入も多くなりますし、お子さんの養育や教育についていろいろとお金がかかってきます。
 
このように2つの理由から、家計のことを考える場合は「割合(パーセント)」で目安をとらえるのではなく、「相場」で目安をとらえた方がイメージをつかみやすくなります。
 
どうしてこのような風潮になったのかはわかりませんが、つい「みんなはどうなんだろう」と気にしてしまう気持ちが冷静さを欠いているように感じます。
 
家庭は、みんな同じではなく、それぞれなのです。
 
Text:重定 賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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