更新日: 2024.10.10 働き方

上司が「うちは掃除や研修にも給料を払ってやってる」と言っていますが、そのせいで毎日3時間は「残業」です。これって本当にありがたいことなんですか?

上司が「うちは掃除や研修にも給料を払ってやってる」と言っていますが、そのせいで毎日3時間は「残業」です。これって本当にありがたいことなんですか?
ブラック企業の経営者には「うちは掃除や研修の時間にも給料払ってやってる」など、労働者を大切に思わない発言が多いものです。掃除や研修を労働時間に含める一方、毎日3時間もの残業が続いてしまうことは、労働基準法に違反しないのでしょうか?
 
この記事では、労働基準法による労働時間と時間外労働時間の取り決めについて解説し、筆者の体験をもとに「掃除と研修」が正当な労働時間と見なされるのかを検証します。

基本的な労働時間の取り決めについて

長時間労働を是正してワークライフバランスを改善し、女性や高齢者も働きやすい環境をつくるために、「時間外労働の上限規制」が法律に規定され、2019年から実施されています。現在の労働基準法では、次の2つの原則を守る必要があります。
 

・労働時間の限度は1日8時間 および 1週40時間(法定労働時間)
・休日は毎週少なくとも1回(法定休日)

 
これらの制限を超えて労働させる場合には、企業と労働者が結ぶ協定「36協定」の締結と届出が必要になります。36協定では、「時間外労働をおこなう業務の種類」や「時間外労働の上限」などを決めなければなりません。
 
時間外労働は、原則として次の上限を守る必要があります。
 

・月45時間
・年間360時間

 
ただし毎月45時間の残業を続けると、年間で540時間となってしまうため、年間の残業時間を把握しておく必要があります。
 
また、特別な事情があって労使が合意する場合でも、次の決まりを守らなければなりません。
 

・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」がすべてひと月あたり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度

 
これらのことから、毎日3時間残業をした場合、稼働日が20日間としても、月の残業時間が60時間となってしまうため、そもそも36協定の上限が守られていないと考えられます。ただし、繁忙期などのやむをえない事情で、月45時間以上の残業をおこなう期間が6ヶ月以内であれば許容範囲となります。
 

労働時間のカウントについて

そもそも、掃除や研修の時間は、残業時間や就業時間に含まれるのでしょうか? もし掃除や研修が就業時間に含まれないのであれば上司の言い分も理解の余地がありますが、元々含まれるのであれば特に「ありがたいもの」ではなく当然の権利と言えます。
 
掃除や研修の時間を労働時間としてカウントするかどうかの判断は「業務命令である」、「欠席すると罰則があったり、昇給や賞与査定に影響したりする」など、事実上の強制であるかどうかがポイントです。
 
筆者が以前参加していた研修は、商品や機器の説明やデモンストレーションの研修のため、全員参加が必須で、参加しなければ基本的な業務がおこなえませんでした。また、掃除については、店舗の掃除を外部委託せず自分たちでおこなっていたため「掃除しない」という選択肢はないものでした。
 
一方、完全に参加が自由で自己研鑽のための研修や、自主的におこなっている掃除は労働時間には含まれません。このような場合であれば、上司の「掃除や研修の時間も給料を払っている」との言葉は好意的に受け止められそうです。
 
掃除や研修が労働時間に含まれることを考えると、上司が「給料を払ってやってる」と言っていても、毎日3時間の残業が発生する職場は、ブラック企業と言えるのではないでしょうか。
 

まとめ

労働基準法によって、労働時間は1日8時間および週40時間までと決まっています。時間外労働をさせる場合には36協定を結ぶ必要があります。それでも月の残業時間は45時間まで、年間360時間までとの制約があるため、特別な事情なく「毎日3時間の残業」は違法と言えそうです。
 
掃除や研修については、それが業務命令なのか、欠席すると罰則があったり評価に影響が出たりすることがあるかなど、事実上の強制であるかどうかがポイントです。
 
筆者の場合には、掃除も研修も「事実上の強制」であったため、労働時間として給与の支払いを受ける権利があり、会社はこれを加味したうえで人員配置や、業務量の調整をおこなう必要があったと言えます。
 
自分の働く会社の労働時間や残業について疑問に思うことがある場合は、今回ご紹介した上限規制などと照らし合わせてチェックしてみると良いでしょう。
 

出典

厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
 
執筆者:古澤綾
FP2級

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