更新日: 2024.04.18 働き方

結婚してからずっと夫の扶養です。パート勤めですが、社会保険に加入しなければいけないのでしょうか?

執筆者 : 三藤桂子

結婚してからずっと夫の扶養です。パート勤めですが、社会保険に加入しなければいけないのでしょうか?
Aさんは、58歳のパート勤めの主婦です。結婚と同時に専業主婦になってから、ずっと夫の扶養に入っています。40代からパート勤めをしていますが、最近ニュースで、パートの主婦も社会保険に入る必要があると聞いて、どのように働いたらよいのか悩んでいます。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

2024年10月から変わる、適用拡大とは

2016(平成28)年10月から、厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象が週30時間以上働く人に加え、従業員501人以上の会社で週20時間以上働く人などにも広がりました。2024年4月現在は、従業員規模が101人以上の会社に対象が広がっています。
 
さらに2024年10月より、51人以上の会社に広がります。適用拡大によって、社会保険に加入することになる人は次のとおりです。


1. 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
2. 月額賃金が8万8000円以上
3. 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
4. 学生でない

Aさんのパート先の会社では、従業員(社会保険加入対象者)が51人以上います。Aさんは今まで、30時間未満に抑えて仕事をしていました。このままでは、今年の10月からは社会保険に加入しなければならなくなります。
 
会社から説明を受け、契約書を取り交わすことになるのですが、今までどおり働いて社会保険に加入するのがいいのか、それとも20時間未満に契約変更するのがいいのか悩んでいます。それぞれのメリット、デメリットを教えてほしいとのことです。
 

社会保険に加入するメリット

今後、Aさんが社会保険に加入するメリットとして、自身で健康保険に加入すると、私的な病気やけがで仕事ができなくなったとき、傷病手当金を受けることができ、給与の約3分の2の生活保障が受けることができます。
 
Aさんの給与収入が、生活の一部を担っているのであれば、傷病手当金を受けることで、療養費と生活の一部を賄うことができるでしょう。
 
さらに、厚生年金保険に加入することで、高齢期に受け取る老齢年金を増やすことができます。配偶者の扶養の範囲で働く場合、Aさんは国民年金の第3号被保険者です。高齢期の年金は国民年金のみですが、社会保険に加入すると、上乗せの厚生年金部分を受け取ることができます。
 
また、国民年金は原則、60歳まで加入ですが、厚生年金保険は、70歳まで加入できます。60歳以上で厚生年金保険に加入すると、万一、20歳から60歳までの期間に、年金に加入していない期間があると、その期間分を厚生年金部分でカバーでき、経過的加算が増えます。
 

社会保険に加入するデメリット

Aさんが社会保険に加入するデメリットとして、給与から社会保険料が天引きされるため、手取り額が少なくなります。配偶者の扶養であれば、週20時間未満で働いた場合、自身の給与は全額受け取ることができます。
 
さらに、配偶者の会社で家族手当が支給されていた場合、Aさんが社会保険に加入することで、家族手当が打ち切られる可能性があります。また、扶養から外れることで、扶養控除が受けられなくなり、税金面で不利益になることが考えられます。
 

夫婦で話し合いが必要

現在、女性の社会進出が必須となり、共働き世帯が増えています。そのため、出産や子育て、介護によって離職をすることなく、働くことができる環境、法整備されています。
 
女性の労働力が求められていることもあり、Aさん自身の生きがいや就労意欲を持ち、社会保険に加入する働き方を選択したほうが、将来的にAさんにとって有利になる可能性が高いです。
 
家庭ごとに考え方は異なります。Aさんが、社会保険に加入するかどうかは、上記のメリット、デメリットをよく理解し、夫婦でよく話し合い、必要に応じて専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
 

出典

日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大/1.特定適用事業所の概要
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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