更新日: 2024.10.10 働き方

「ペーパーレス化」が進みついていけるか心配です。「電子署名」「電子印鑑」「電子サイン」は何が違うのでしょうか?

「ペーパーレス化」が進みついていけるか心配です。「電子署名」「電子印鑑」「電子サイン」は何が違うのでしょうか?
電子帳簿保存法への対応や、郵便料金の値上げなどの影響から、電子契約の導入を本格的に検討している方もいるのではないでしょうか。
 
本記事では、これまで契約の際などに使用されてきた印鑑や署名について、電子的に行うための「電子署名」「電子印鑑」「電子サイン」、それぞれの役割や違い、電子契約のメリットなどについて確認していきます。
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

電子署名とは?

「電子署名」とは、契約の際の電子ファイルに作成者を表示すると同時に、その電子ファイルの文書が改ざんされていないことを証明するための、暗号処理の仕組みのことをいいます。
 
その仕組みには、公開鍵暗号技術などの高度なセキュリティーが施されているため、その鍵を知らないかぎり、電子署名を施した電子文書の偽造ができないものとなっています。
 
つまり通常、電子署名には「本人が署名し、文書が改ざんされたものではない」ということを証明する効力があります。そのため、企業間での契約書の取り交わしなど重要な契約については、電子署名は有効な方法となっています。
 

電子印鑑とは?

「電子印鑑」とは、電子文書にデータ化された印影それ自体のことをいいます。これまでの紙の契約書に印鑑を押す場合と同じように、電子ファイルに押印できるのが電子印鑑です。電子印鑑は、主に無料で証明能力のないものと、主に有料で証明能力を備えたものの2種類があります。
 
無料の電子印鑑の場合は、簡単に印影の画像データが作成できる反面、誰でも作成できるため偽造される恐れがあります。ビジネス上では、認め印程度の効力しかないことを理解し、利用の範囲を社内での文書の閲覧などにとどめることが望ましいと思われます。
 
有料の電子印鑑の場合は、電子印鑑にタイムスタンプなどのセキュリティー対策を施し、法的な証明能力を付加したものになります。
 

電子サインとは?

「電子サイン」とは、一般的には「広義の電子契約」のことをいいます。つまり、契約書など幅広い書面に対する署名・記録について証明するプロセス全体のことを指しています。
 
また、電子サインに対して、電子署名を「狭義の電子契約」という場合もあります。電子署名には公開鍵暗号技術が使用しますが、電子サインの一般的な認識は、公開鍵暗号方式を使用せず、その他の技術的手段で一定の証明力を示したものです。
 

電子契約のメリットとは?

書面契約から電子契約に移行した場合の主なメリットは、以下のとおりです。
 
(1)さまざまなコストの削減
書面契約の場合、印刷代や保管などの管理コストがかかります。電子契約の場合には、基本的には電子データをクラウド上やPC・サーバーなどの保存媒体の中に保管することができます。
 
電子データによる保管方法をとることで、文書自体の劣化や汚損を防止し、半永久的に保管することが可能となります。また、2024年10月1日には、日本郵政の郵便料金の値上げも予定されており、書面を郵送していた場合には郵送コストの増加が想定されます。さらに、契約書などの印紙税がかからないことも大きなメリットといえるでしょう。
 
(2)業務効率化、時間短縮
書面契約の場合は、基本的には書面を郵送してやり取りする・取引先に赴いて契約を交わすなど、手間と時間を要していました。電子契約の場合は、メールなどの方法でやり取りができるため、全体的な手間や時間の短縮、削減につながる可能性が高くなります。
 
(3)改ざん防止のためのセキュリティー強化
証明力のある電子署名や電子印鑑の高いセキュリティーにより、書面契約よりも高度な改ざん防止効果を実現することができます。また、認証により、本人以外のなりすましによる押印などを防止することもできます。
 

まとめ

現代は、「オンライン会議より、面と向かっての話し合い」「紙の資料が手元にないとダメ」「契約書も紙ベースでのやり取り」など電子化を心底受け入れられない世代と、急速かつスマートに電子化・効率化に進んでいく世代が、共存する時代といえます。
 
いずれは後者の方向に進んでいくことは確実であるため、少しずつでも電子化を許容していくことが重要となるでしょう。
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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