パート収入が「年130万円」以上になり、夫の扶養から外れてしまいました。高い「国民年金保険料」を納めるのが正直くやしいのですが、何か“第1号被保険者”のメリットはないのでしょうか?
配信日: 2024.08.18 更新日: 2024.10.10
本記事では、第1号被保険者について、社会保険や扶養との関係、第1号被保険者だけができることなどについて解説します。
執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)
特定社会保険労務士・FP1級技能士
扶養から外れると
妻(夫)の収入が増え、配偶者の扶養から外れると、その後は「勤め先の社会保険に加入する」「自分で国民年金と国民健康保険料を支払う」のどちらかです。自分で選択することはできず、働く時間や日数によって決まります。
社会保険の加入要件
パート・アルバイトのうち、社会保険に加入しなければならないのは、次の(1)または(2)に当てはまる人です。
(1)従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上)の会社に勤務している人
・週の所定労働時間が20時間以上
・基本給および諸手当などが月8万8000円以上
・2ヶ月を超える雇用見込みあり
・学生ではない
(2)上記に該当しない会社に勤務している人
・週の所定労働時間および月の所定労働日数が、フルタイム従業員の4分の3以上
「扶養」にも「社会保険」にも該当しない人
時給が比較的高い人は、労働時間が短くても年収130万円以上になることがあります。
扶養から外れ、社会保険の加入要件にも該当しない場合は、国民年金第1号被保険者・国民健康保険被保険者として、自分で保険料を納めなければなりません。
国民年金第1号被保険者とは
自営業者、フリーランス、学生、無職の人などが、国民年金第1号被保険者です。収入が扶養の範囲を超え、かつ社会保険に加入できないパートも含まれます。
第1号被保険者の給付
第1号被保険者だけが受けられる給付は、「付加年金」「死亡一時金」「寡婦年金」などが挙げられます。このうち死亡一時金と寡婦年金は「第1号被保険者が死亡したとき」の給付ですから、受給できるのは第1号被保険者本人ではなく遺族です。また、寡婦年金は遺されたのが「夫」の場合は、受給できません。
第1号被保険者だけが加入できる制度
付加年金とは、月額400円の付加保険料を納めることで、将来の老齢基礎年金に加算されるものです。付加保険料を納付できるのは、国民年金第1号被保険者と65歳未満の任意加入被保険者だけです。
また、第1号被保険者と60歳以上65歳未満の任意加入被保険者は、国民年金基金に加入することもできます。国民年金基金とは、毎月の掛金を支払うことにより、将来受け取る年金額を増やせる制度です。
第1号被保険者と第3号被保険者(会社員や公務員の夫に扶養されている妻)は、将来の老齢基礎年金は同じ額です。しかし第1号被保険者は、付加保険料または国民年金基金の掛金を支払うことにより、将来の年金を増やすことができます。このことは、第3号被保険者と比べると「得」と言えるかもしれません。
しかし、給付面ではやはり社会保険の方が充実していると考えられます。社会保険に加入すれば、将来の老齢厚生年金の受給につながるだけでなく、傷病手当金など健康保険の給付も受けられるからです。
まとめ
どの社会保険制度が適用されるかは自分では選べません。労働時間や収入などにより、該当する制度に「加入してしまう」のです。しかし、働き方は選べますから、会社と相談のうえで労働時間を増やし、社会保険に加入するのもよいでしょう。
あるいは労働時間を減らすことで収入を抑え、扶養に戻ることも可能です。もちろん現在の働き方を続け、第1号被保険者のままでいることもできるので、自分に合う働き方を選択するようにしましょう。
出典
国民年金基金連合会 加入条件・資格
日本年金機構 付加年金
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 社会保険適用対象となる事業所・従業員について
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士