パート勤務で「年収120万円」ですが、職場で「10月から社会保険に入ることになる」と言われました。手取りが1万円以上減るのは避けたいのですが、加入する“メリット”はあるのでしょうか…?

配信日: 2024.08.26 更新日: 2024.10.10

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パート勤務で「年収120万円」ですが、職場で「10月から社会保険に入ることになる」と言われました。手取りが1万円以上減るのは避けたいのですが、加入する“メリット”はあるのでしょうか…?
10月から社会保険の適用事業所が拡大されます。これまで加入していなかった人でも、要件を満たすと加入の対象となります。
 
一方、社会保険は高額な保険料にどうしてもマイナスな印象を抱きがちで、「できれば扶養のまま仕事を続けたい」と考えている人もいるでしょう。
 
本記事では、社会保険の適用拡大の概要や社会保険に加入するメリット、注意点などを解説します。社会保険の加入対象となりそうなパート・アルバイトの人は、ぜひ参考にしてください。

社会保険の適用拡大とは

社会保険の適用拡大は、2022年ごろから急速に進められています。適用事業所や加入者の要件を拡大することで出産手当金や厚生年金の受給者を増やし、より働きやすい環境を整備するのが目的です。
 
すでに2022年には、従来の従業員501人以上の事業所から、従業員101人以上の事業所に対して社会保険が適用されています。2024年10月からは、対象となる事業所が従業員51人以上に拡大され、パートやアルバイトを含むより多くの人が社会保険の加入対象となる予定です。
 

扶養に入っている人が社会保険に加入するメリット

扶養に入っている人が社会保険に加入するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

●医療保険や厚生年金など公的補助が充実する
●扶養から外れるため収入を気にせず働ける

社会保険に加入すれば、医療保険が充実します。けがや病気により休んでいる間に給与の3分の2の金額が受け取れる傷病手当金や、産休期間中に給与の3分の2の金額が受け取れる出産手当金などが支給されるのがメリットです。費用面で入院や出産を心配している人でも、安心して病休・産休を取れるようになります。
 
また、厚生年金に加入できるため、将来受給できる年金額を増やせます。厚生労働省によれば、令和6年3月末での年金の平均受給額は国民年金が5万7718円、厚生年金が10万4132円と、厚生年金の有無により年金受給額は大きく変わってきます。老後の貴重な収入源となる年金を増やせれば、老後の生活プランを立てやすいです。
 
社会保険に加入すると、配偶者や親族の扶養から外れます。扶養から外れると自分で税や社会保険料を納める必要がありますが、収入の壁を気にせずに働けるようになります。社会保険の扶養に入るには年収を130万円以下に抑える必要がありますが、扶養に入らないのであれば年収上限がなくなるため、収入を増やせて家計が楽になる可能性があるでしょう。
 

扶養に入っている人が社会保険に加入する際の注意点

扶養に入っている人が社会保険に加入する際は、次の点に注意が必要です。

●保険料の負担が必須になる
●自身や配偶者の税負担が増える可能性がある

扶養に入っている人が社会保険に加入すると、強制的に扶養から外れ、社会保険料を自身で負担しなければなりません。社会保険の保険料は自身と事業主とで折半するため、国民健康保険料よりは負担が少ない可能性がありますが、保険料負担を免れることはできません。
 
また、社会保険に加入すれば扶養から外れて収入を増やすことができますが、収入が増えれば所得税や住民税の負担が増えます。特に注意したいのが、自分を扶養に入れていた配偶者の税負担も増える可能性がある点です。
 
生計を共にする配偶者がいる場合、所得税の配偶者特別控除を受けられます。控除を受けられれば、所得が少なくなり所得税額を減らせます。配偶者特別控除は、配偶者の所得が48万円超133万円以下であることが条件です。
 
もし社会保険に加入して収入の壁がなくなり、収入を大きく増やして所得が133万円を超えた場合、配偶者が配偶者特別控除を全く受けられなくなります。
 
税負担が増えたり税控除が受けられなくなったりすると、夫婦2人とも給料の手取り額が減ってしまうケースもあります。収入アップで手取り額の減少をカバーできるかどうか、よく確かめる必要があるでしょう。
 

自分のライフプランに合わせた働き方を

社会保険への加入には、メリット・デメリットがあります。出産や老後の生活など、将来のライフプランが明確であるならば、社会保険に加入するとさまざまな恩恵を受けられるでしょう。
 
一方、保険料負担などで手取りが減ってしまい、生活が苦しくなる可能性もあります。働く時間を見直す、社会保険が適用されない会社で働く、というような働き方の見直しを迫られる可能性もあるため、配偶者とも職場の担当者ともよく話し合ってみましょう。
 

出典

厚生労働省 社会保険適用拡大ガイドブック
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業統計 厚生年金保険・国民年金事業月報(速報)2024年3月
 
執筆者:石上ユウキ
FP2級、AFP

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