更新日: 2024.10.10 働き方

職場でパート勤務の人に「もう1つの勤務先とあわせて10時間働いてるから」と、2時間分の“残業代”を請求されました。うちでは「4時間」しか働いていないので、払う必要はないですよね…?

職場でパート勤務の人に「もう1つの勤務先とあわせて10時間働いてるから」と、2時間分の“残業代”を請求されました。うちでは「4時間」しか働いていないので、払う必要はないですよね…?
近年副業や兼業が少しずつ一般化してきており、ダブルワークをしているアルバイト・パート従業員と関わることが増えている人も多いのではないでしょうか。ただし、ダブルワークをしている従業員の賃金の支払いには注意が必要です。というのも、割増賃金はほかの職場で働いた労働時間を含めて計算します。
 
ダブルワークをしている従業員に、「今日はほかのパート先と合わせて労働時間が8時間を超えたので、割増賃金を払ってください」と言われたら、さすがにその必要はないと考える人が多いのではないでしょうか。しかし、従業員の言うことのほうが正しいのです。
 
本記事では労働時間を通算する根拠と、どちらの会社に割増賃金の支払い義務があるのか解説します。
浜崎遥翔

執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

ダブルワークでは労働時間を通算して割増賃金を計算

労働基準法第38条では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされています。なお、「事業場を異にする」とは事業主が違う場合も含みます。
 
つまり、ダブルワークの場合、2つの職場の労働時間を通算した上で、割増賃金が発生するかを考える必要があるのです。したがって、会社は特に次の2つのパターンについて確認しなければなりません。
 

1日の労働時間が通算して8時間を超えた場合

労働基準法が定める1日の法定労働時間は8時間です。例えばA社で6時間、B社で3時間勤務したとき、労働時間は通算して9時間と計算します。1時間は時間外労働となり割増賃金が発生するのです。
 
したがって、ダブルワークを行っている従業員に対しては、他社で働いた時間を含めた労働時間の管理をしなければなりません。
 

1週間の労働時間が通算して40時間を超えた場合

労働基準法では1週間あたりの法定労働時間も定めており、40時間を超えた労働時間は割増賃金の対象です。例えばA社で月曜日から金曜日まで8時間ずつ、週に40時間働いている人が土曜日にB社で5時間働いたケースでは、5時間が割増賃金の対象となります。
 

割増賃金を払うのはどちらの会社?

ダブルワークの労働時間は次の順で通算していき、法定労働時間を超える部分に労働させた会社が割増賃金を支払うことになります。
 

(1)先に労働契約を締結した会社(以下A社)の所定労働時間
(2)後から労働契約を締結した会社(以下B社)の所定労働時間
(3)所定外労働時間(実際に行われた順に)

 
後から労働契約を締結した会社が支払うケースが多いですが、先に締結した会社が支払うケースもありえます。具体例を見ていきましょう。
 

所定労働時間だけで法定労働時間を超えた場合

例えば、A社の所定労働時間6時間、B社が3時間だった場合は、8時間を超えた1時間分の割増賃金をB社が支払います。A社の所定労働時間6時間(1)、B社の所定労働時間3時間(2)の順に通算するからです。
 

先に労働契約を締結した会社が割増賃金を支払う場合も

例えば、A社の所定労働時間が5時間、B社の所定労働時間が2時間である人が、A社で所定外労働を2時間行った場合はどうでしょう。
 
まずA社の所定労働時間が5時間(1)、次にB社の所定労働時間が2時間(2)の順に数えます。この時点で労働時間は7時間です。
 
A社の所定外労働時間2時間は、前記の(3)にあたり、最後に通算するため、このうち1時間が法定労働時間の8時間をはみ出します。つまり、1時間分の割増賃金を支払うのはA社となるのです。
 
このように、先に労働契約を結んだとしても、割増賃金支払い義務を負うことがあるため、ダブルワーク従業員の労働時間管理が必要となります。
 

ダブルワーク従業員の労働時間管理は大切

法定労働時間は、自社以外の労働時間も通算するため、会社はダブルワークを行っている労働時間はしっかり管理しなければいけません。後から労働契約を結んだ会社はもちろん、先に労働契約を結んだ会社であっても、割増賃金の支払いが発生するケースがあります。
 
時代の流れとして、ダブルワークをする人はこれからも増えるでしょう。今のうちに正しい給与計算方法を確認しておくと良いかもしれません。
 

出典

e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 法定労働時間と割増賃金について教えてください。
厚生労働省 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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