銀行に「1000万円」以上貯めるのは危険と聞きましたが、実際に銀行が“破綻”することなんてあるんですか? メガバンクなら大丈夫ですよね…?
配信日: 2024.10.05 更新日: 2024.10.10
本記事では金融機関におけるリスク管理とその具体的な対策について、元銀行員の筆者が詳しく解説していきます。
執筆者:渡辺あい(わたなべ あい)
ファイナンシャルプランナー2級
ペイオフ制度と預金保険制度
万が一金融機関が破綻すると、金融機関に預けている資産はどうなるのでしょうか。「破綻する」ということは、その金融機関には「預金の払い戻し能力がない」ということです。しかし、これでは預金者の資産の保護ができません。そこで預金者の保護と金融機関の信用秩序を守るため、金融機関はあらかじめ「預金保険機構」の保険に加入しています。
この保険に加入することで、万が一金融機関が破綻した際には預金保険制度に基づき、預金保険機構が預金者に保険金を支払ってくれるのです。これを「ペイオフ」といいます。
この預金保険機構への加入は金融機関に義務付けられているもので、預金者はなにも手続きを行わなくても、この保険の保護を受けることができます。
ただし、預金保険の対象となる金融機関は日本国内に本店がある銀行、信用金庫、信用組合、 労働金庫等であり、対象になる金融機関であってもその海外支店、外国銀行の在日支店、政府系金融機関は、預金保険の対象外です。これらの機関や支店への預金は保護の対象となりません。
保護される預金は「1000万円」
預金保険制度で保護される預金は、実は無限ではありません。保護の対象となる預金は1金融機関に預けられている、普通預金、定期預金、定期積金、当座預金等の預金のうち、預金者1人当たり元本1000万円までと破綻日までの利息となっています。また、外貨預金は保護の対象外です。
仮に普通預金900万円の預金者がいた場合、保護される預金は全額の900万円とその利息です。しかし、普通預金500万円、定期預金500万円、定期積金300万円の預金者は、預金口座ごとではなく、合計1300万円の預金に対してペイオフで保護される預金は、上限の1000万円とその利息になるのです。
日本でメガバンクが破綻したことはある?
結論から言うと、日本では大手の銀行が破綻した事例はありません。しかし、1991年以降に小規模な金融機関から始まり、地方の信用組合・信用金庫や地方銀行が破綻し、合併や統合をしたという実例があります。
今のところメガバンクは安全と思われますが、今後世界情勢や日本の経済事情によっては、必ずしも破綻しないという保障はありません。メガバンクを利用していても、資産を守るための対策をとっておくのがリスク分散として賢明でしょう。
破綻に備えるにはどうしたらいい?
ペイオフが発動された場合、1金融機関につき預金者1人当たり元本1000万円までと破綻日までの利息が保護の対象となります。そのため、リスク分散の観点からいえば1金融機関に預ける預金は1000万円以下にしておくのがいいでしょう。また、よほどの理由がない限り、同一の金融機関でも海外の支店は利用せず、国内の本支店で口座を開設すると安心です。
銀行口座を複数に分けておくことは、ペイオフ以外にもメリットがあります。例えば、ある金融機関でシステム障害が起きて利用ができなくなったときに、ほかの金融機関で取引ができるという点があります。
また、銀行独自のサービスやキャンペーンを上手に使うことで、A銀行でお得に積み立てた定期積金を、B銀行の高金利な定期預金にすることもできるのです。このように複数の金融機関に口座を持つことは、リスク回避だけでなく、資産運用にも役立ちます。
金融機関はリスク回避のためにも上手に活用を
金融機関が破綻した場合、1金融機関につき預金者1人当たり元本1000万円までと破綻日までの利息が保護の対象となり、それを超える預金は保護されません。現在までの日本ではメガバンクの破綻はありませんが、将来も破綻しないという保障はないでしょう。
また、金融機関の破綻だけでなく、システム障害や、預金の資産運用の観点からも複数の金融機関の口座を持っておくことは有効です。利便性や信用性を加味して、複数の金融機関と取引しておくことをおすすめします。
出典
日本銀行 ペイオフとは何ですか?
預金保険機構 預金者の皆さま
預金保険機構 日本の金融危機の教訓
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級