ママ友は同じ「扶養内」で働いていますが、10月から「社会保険」に加入するそうです。お互い“年収”は同じはずなのに、なぜなのでしょうか?
配信日: 2024.10.17
つまり、同じく扶養内で働いているはずなのに、自分は社会保険に加入する必要がなく、ママ友は10月から社会保険に加入するらしい、ということも起こり得ます。なぜこのようなことになるのでしょうか。
本記事では、社会保障関連制度の改正内容について確認しながら、理解を深めていきましょう。
執筆者:山田圭佑(やまだ けいすけ)
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
制度改正の概要を確認してみる
社会保障関連制度の改正は、令和2年(2020年)5月29日に成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が根拠となっています。
厚生労働省の作成した「社会保険適用拡大ガイドブック」を見てみると、2024年10月から社会保険の適用範囲が拡大し、これまで101人以上とされていた従業員数の要件が変更され、従業員が51人~100人の企業においても、パートやアルバイトの人にも社会保険加入の義務が発生する場合があるとされています。
具体的には、従業員が以下の4条件を全て満たす場合に、社会保険への加入が求められます。
●1週間の労働時間が「20時間以上」であること。
●「2ヶ月」を超える雇用の見込みがあること。
●所定内賃金が「月額8万8000円以上(※)」であること。
●学生ではないこと。
※基本給および諸手当のみで、通勤手当・残業代・賞与などは含まない。
事例は上記の4条件をすべて満たしており、加えて「従業員数51人~100人」の企業に勤めているため、今回の制度改正の影響を受けて社会保険加入が義務化されたと考えられます。
このような社会保険加入の適用範囲を広げていく制度改正は初めてではなく、図表1のように2016年10月からは「従業員数501人以上」の企業について、2022年10月からは「従業員数101人~500人」の企業について、今回と同様「1週間の労働時間が20時間以上である従業員」の社会保険加入が義務化されてきました。
図表1
厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」より抜粋
社会保険料は「労使折半」の負担となりますので、企業側にとっても負担増となる制度改正が8年前から進められてきていると言えます。公的には「社会保険加入者を増やすことによって、より社会保障制度の充実をはかる」といった説明がされていますが、筆者には「少子高齢化の進行にともなった社会保険制度の不安定化を少しでも抑えていくため」の制度改正である面が色濃いように思えます。
パート社員が社会保険に加入するメリットは?
現在は「扶養内」で働いていて、今回の制度改正のため新たに社会保険へ加入する人は、家族の扶養から外れるために給与手取り額が減少することが予想されます。しかし一方で、厚生年金に加入できて将来の年金額が増えることなどのメリットもあります。
厚生労働省のサイトによれば、国民年金・国民健康保険加入者に比べ、厚生年金加入者には以下のようなメリットがあるとされています。
・老齢年金の充実
→年金の1階部分(基礎年金部分)に加えて2階部分(報酬比例部分)が上乗せされる。
・障害年金の充実
→障害等級1・2級の場合、障害基礎年金に加え、障害厚生年金の上乗せがある。また、3級やそれより軽い一定の障害の場合でも障害厚生年金または障害手当金(一時金)の支給を受けられる。
・遺族年金の充実
→遺族基礎年金に加えて、遺族厚生年金が受け取れる。
・健康保険の充実
→病休・産休の期間中、給与の3分の2相当が支給される。
今回の制度改正のため、あらたに社会保険加入を求められる従業員には、企業側から説明会や個人面談を行うことが厚生労働省から推奨されています。その中で、働き方をパートから正社員へ変更することや労働時間の延長を打診されることもあるかもしれません。
従業員側としては、社会保険制度の仕組みや今回の制度改正によるメリット・デメリットについて十分に調べたうえで企業側との相談に臨み、今後の働き方を考えていくべきでしょう。
まとめ
2024年10月から、「従業員数51人~100人」の企業に勤めており、所定内賃金が「月額8万8000円以上」であることなどの一定の要件に当てはまるパート従業員は、新たに社会保険に加入することが義務化されます。
現在「扶養内」での働き方をしている人にとっては大きな影響があると考えられますので、社会保険制度の仕組みについて十分調べたうえで、今後の働き方を考えていきましょう。
出典
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
厚生労働省 社会保険適用拡大 特設サイト 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま
厚生労働省 社会保険適用拡大ガイドブック
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント