更新日: 2024.10.22 働き方
【年収の壁】月収「8万8000円」に抑えていますが、最低賃金の見直しで“時給”が上がります。このままだと「社会保険」への加入は必須でしょうか? 手取りはどのくらい減ってしまいますか?
そこで本記事では、最低賃金の引き上げがもたらす影響について解説し、時給がアップした際の働き方をシミュレーションします。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
「106万円の壁」を超えない働き方をする理由
収入が一定を超えると、扶養を抜けることになります。従業員数が51人以上の企業等で働くパート・アルバイトは、年収「106万円の壁」を超え、「週の所定労働時間が20時間以上30時間未満」「2ヶ月を超える雇用の見込みがある」「学生ではない」といった要件を満たすと、扶養を外れ、社会保険に加入することになります。
月給「8万8000円」に抑えて働く理由は「106万円の壁」を超えないよう、調整するために他なりません。単純に「106万円÷12ヶ月」を計算するとこの金額になります。
「106万円の壁」以下で働くメリットは、家族(配偶者)の扶養に入ることにより、健康保険料や年金保険料の負担を免れる点です。給料から天引きされなくても、きちんと社会保険に加入できるのは魅力の一つです。
2024年10月より全国の最低賃金が引き上げに
近ごろ「最低賃金がアップする」という言葉をよく耳にしますが、これは2024年10月以降に地域別最低賃金の改定が実施されるからです。
最低賃金は都道府県により異なりますが、全国平均は現行から51円高い1055円となります。
賃金が上がるのは喜ばしいことですが、現行の時給で「8万8000円」以下に抑えている人にとっては「106万円の壁」を超えてしまう要因となるため、悩みの種といったところでしょう。
時給900円から時給1000円に上がったらどうなる?
月給を「8万8000円」に抑えたい場合の労働時間をシミュレーションをすると次の通りです。
●900円×98時間=8万8200円
●1000円×88時間=8万8000円
月98時間働いていたところ、月88時間に労働時間を減らすことで解消されます。想定出勤パターンを比較すると次の通りです。
●週4出勤×6時間労働=月98時間程度
●週4出勤×5.5時間労働=月88時間程度
日々の労働時間を0.5時間減らせば月給を「8万8000円」に抑えることが可能です。
時給1000円、そのままのペースで働くとどうなる?
時給がアップしても月98時間労働のままで働くと次の通りです。
●1000円×98時間= 9万8000円
●9万8000円×12ヶ月=117万6000円
年収が117万円となり、「106万円の壁」を超えてしまいます。つまり、家族(配偶者)の扶養から外れ、自ら社会保険に加入する義務が発生します。
年収「117万円」社会保険料はいくらかかる?
働き方を変えずに社会保険に加入した場合、手取りはどのように変化するのでしょうか。シミュレーションは図表1の通りです。
図表1
厚生労働省 社会保険加入による手取り簡単シミュレーターをもとに筆者作成
年間、約16万円が社会保険料として給料から天引きされます。つまり、手取りが約92万円になってしまうため、この働き方では損をしてしまいます。
損をしない年収、目安は「150万円」以上
社会保険料を天引きされても損をしない年収が「150万円」以上と言われています。ここでは時給1000円の人が年収「150万円」で働く場合のシミュレーションをしてみましょう。
●150万円÷12ヶ月=12万5000円(月収)
●12万5000円÷1000円=125時間(1ヶ月あたりの労働時間)
●125時間÷4週=約32時間(1週間あたりの労働時間)
想定出勤パターンは次の通りです。
●週5日出勤、6.5時間労働がだいたい月125時間程度
働き方をシミュレーションした結果
図表2
まとめ
時給が上がり、社会保険の加入条件を満たすのであれば、義務から免れることはできません。
もし時給が大幅にアップするなら月給「12万5000円」を目指しても良さそうですが、微増であればフルタイム勤務と同等の労働時間になりそうです。子どもとの時間を優先したい、両親を介護しなければならないなど事情のある人にとっては、労働時間を減らす選択がベターかもしれません。
ただ、政府は「106万円の壁」を超えた従業員の手取り収入を減らさないよう、企業への支援も行っています。勤め先の企業がこうした支援策を活用していないか、確認してみることもおすすめします。
出典
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー