退勤時は「一駅分」歩いて節約しているのですが、同僚から「それって交通費の横領じゃない? 」と言われました。どのようなケースだと横領になるのでしょうか?

配信日: 2024.11.03

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退勤時は「一駅分」歩いて節約しているのですが、同僚から「それって交通費の横領じゃない? 」と言われました。どのようなケースだと横領になるのでしょうか?
多くの企業において、出勤・退勤時の交通費が支給されています。どのように交通費を支給するかは企業ごとに異なり、「従業員が事前に定期券を購入する」「従業員が支払った交通費を後で申請する」などの方法があります。
 
交通費が支給されている場合、一定の区間を徒歩で移動すると実際に支払う金額を抑えることができますが、これは交通費の横領に該当するのでしょうか。また、該当するとしたらどのようなケースでしょうか。
 
今回は、企業から交通費が支給されている人に向けて、徒歩で交通費を節約することは横領になるのか説明します。
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横領罪とは

まず、横領罪が成立する条件について解説します。刑法第二百五十二条では、「自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する」と定められています。「占有」とは物を自由に扱える状態です。
 
また「他人」には「会社などの団体」も含まれています。企業は労働法上の義務ではなく、社内規定などに基づいて交通費を支給しています。支給された交通費の扱いは、「企業の資金」です。
 
したがって、支給された交通費はあくまで「企業の資金=他人(企業)のもの」であり、従業員はそれを「占有(支給された交通費を自己の管理下で所持)」している状態であると考えることが可能です。そのため、不正に利用した場合は横領罪に該当する可能性があります。
 
以上の通り、実際にかかった交通費と支給された交通費に差額が生じた場合、交通費を不正に利用したと見なされ横領となる場合があります。
 

徒歩での退勤は交通費の横領になるのか?

企業から交通費が支給されているケースごとに、徒歩での退勤が交通費の横領に該当するか検討していきます。
 

ケース1:支給された定期券代で、申請区間の定期券を購入しているケース

この場合、「支給されている交通費」と「実際に支払っている交通費」が等しいため、徒歩で退勤しても横領には該当しないと考えられます。横領に該当するのはあくまでも「実際にかかった交通費と支給された交通費に差額が生じた場合」であることに留意しましょう。
 

ケース2:支給された定期券代で、申請区域よりも短い区域の定期券を購入しているケース

この場合は、「支給されている交通費」と「実際に支払っている交通費」に差額が生じるため、横領になる可能性があります。
 
例えば、企業の最寄駅から自宅の最寄り駅までの定期券代を申請しているにもかかわらず、企業の最寄り駅の1つ手前の駅から自宅の最寄り駅までの定期券を購入した場合、横領になる可能性があります。
 
なお、毎日隣の駅まで徒歩で退勤する前提で、最初から隣の駅から自宅の最寄り駅までの定期券を申請・購入している場合はケース1に該当するため、横領にはならないと考えられます。
 

横領の罰則は?

続いて、横領が発覚した際の罰則について見ていきます。横領が発覚した際の罰則は軽度の処分から重度の処分までいくつか種類があり、どの処分が下るかは、横領の内容や企業の決定に左右されるでしょう。
 
軽度の処罰には、懲戒処分や懲戒解雇などの企業内での処分が該当します。また、横領した金額を返金する民事責任にも問われる可能性があります。
 
重度の処罰に該当するのは、刑事責任が問われる処分です。業務上の横領は通常の横領より罰則が重く、刑法第二百五十三条では「十年以下の懲役に処する」と定められており、懲役刑による処分が下る可能性もあります。
 

支給された交通費は正しく使いましょう

本記事では、徒歩での帰宅が横領に該当するかケースごとに確認し、また横領の罰則についても確認しました。
 
繰り返しになりますが、徒歩での帰宅が交通費の横領になるかどうかについては、「支給されている交通費」と「実際に支払っている交通費」に差額が生じているかどうかによって判断されるといわれています。
 
支給された交通費は正しく使い、横領にならないように気を付けましょう。
 

出典

e-Gov 法令検索 刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百五十二条 第二百五十三条
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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