母が「スポットワーク」をしていることを知りました。母は父の扶養に入っているので、たくさん働いたら扶養外になりますよね? 収入どのくらいがボーダーラインでしょうか? そして対応策は?
配信日: 2024.11.11
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
年収の壁とは?
会社員の配偶者などで被扶養者(第3号被保険者)であれば、社会保険料を負担する必要はありません。しかしながら、パートやアルバイト、スポットワークなどで収入を得て、ある一定以上の額となった場合には、社会保険料を支払う必要があり、その結果として手取り収入が減ります。
そのボーダーとなる年収は、106万円と130万円です。また、企業がそれぞれ設定している「配偶者手当の支給要件(年収)」も意識しながら、年収を一定額以下に抑えるために労働時間を調整している方もいます。
以下で、それぞれについて詳しく見て行きます。
1.106万円の壁
この壁を超えると、いままでは被扶養者で費用負担がなかった厚生年金および健康保険へ加入する義務が発生し、保険料の負担が発生します。
ただし、従業員が51名以上の企業などで週20時間以上勤務しているなどの条件を満たす場合に適用されます。
2.130万円の壁
106万円の壁では、従業員数や勤務時間などの条件を満たす場合に、保険料の負担が発生しましたが、130万円の壁を超えると、すべての人に国民健康保険と国民年金の保険料を支払う義務が発生します。
3.「配偶者手当」の年収制限
「106万円の壁」「130万円の壁」以外にも、「働き控え」を選択する年収としてそれぞれの企業が設定している「配偶者手当」の支給条件としての年収制限があります。名称は企業によって「家族手当」や「扶養手当」とさまざまですが、企業によって収入制限は異なります。
例えば、年収「103万円」を企業が設定していた場合には、手取りを減らさないため労働時間を調整する「年収の壁」の一つになるでしょう。
「年収の壁」への対応策は?
従来は、労働者がそれぞれの壁を意識しながら、手取りが下がらないように、労働時間を調整してきましたが、このような社会保険料負担による手取り減などを避けて働き控えをする「年収の壁」が人手不足を補ううえでも社会課題となっています。
日本政府として、短時間労働者が「年収の壁」を意識せずに働くことができるよう、次の対策が講じられています。
1.「106万円の壁」への対応
年収106万円を超えて働くなどして新たに社会保険適用となった労働者の手取りが減らないような取り組みを行った企業に対して、助成金が支給されるキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」を新設しました。
この助成金は、労働者に直接支給されるものではありませんが、企業から手当等を支給する、労働時間を延長する、両方を併用することが認められています。詳細は、お勤めの企業に確認してみましょう。
2.「130万円の壁」への対応
「130万円の壁」対策としては、収入が一時的に上がり年収130万円を超えたとしても、事業主が「一時的な収入増であること」を証明する書類を作成し、その書類を労働者が加入する健康保険組合などに提出することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となります。
ただし、この証明書の発行は、原則として連続2回が上限となっていますので、留意が必要です。
3.「配偶者手当」の見直し
この支給条件については、日本政府として、企業に対して、従業員のニーズを踏まえた賃金制度・人事制度の見直しについて支援を行っています。具体的な見直し内容は企業によって異なりますので、詳細は、お勤めの企業に確認する必要があります。
まとめ
これまで見てきたように、手取り年収が減るボーダーとなる年収の壁として、「106万円の壁」と「130万円の壁」、そして「配偶者手当の収入制限」が存在します。これを超えると手取りが減少するため、「働き控え」を選択する人が多く存在します。
この「働き控え」は労働者不足などの社会課題につながっていますので、日本政府として、この課題を解決するための対応を行っています。具体的には、キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」制度が新設され、一時的に年収130万円を超えても扶養から外れないような制度も導入されています。また、配偶者手当について、支給要件の見直しの支援も行っています。
これからの労働者は、こういった制度の導入などを踏まえて、ご自身の働き方を検討する必要があるでしょう。
出典
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 「年収の壁」対策がスタート!パートやアルバイトはどうなる?
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま
厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー