お金持ちは実は損している?年収における税金の割合とは?
配信日: 2019.01.29 更新日: 2024.10.10
会社から支払われる額面の給料は多くなるのに、税金や社会保険料を払うか払わないかで世帯全体の手取り収入が思うように増えない、場合によっては減ってしまう「130万円の壁」や「150万円の壁」といった話を聞いたことがある人もいるでしょう。
それと同じように、年収が上がると税率も高くなり、受けられる補助や控除も少なくなります。それゆえ、「世帯年収が1000万円だと損だ」という人がいますが、どのような面で損なのか考えてみましょう。
執筆者:柴田千青(しばた ちはる)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
2級DCプランナー/精神保健福祉士/キッズ・マネー・ステーション認定講師/終活アドバイザー
小美玉市教育委員
出産を機にメーカーの技術職から転身。自身の資産管理や相続対策からお金の知識の重要性を知り、保険などの商品を売らないFPとして独立。次世代に伝えるための金銭教育活動とともに、セミナー講師・WEB記事を中心とした執筆・個別相談などを行う。
配偶者控除・配偶者特別控除による税金面の違いは?
近年の改正で、納税者本人の所得金額が1000万円をこえると、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられなくなりました。1000万円を境に制限ができたことで、控除の違いが損になると思う方もいるでしょうが、ここで言う1000万円は世帯で合算した収入ではなく、納税者本人のみの収入です。
また額面の収入でもないので、給与収入の場合1220万円以下なら所得は1000万円以下になり、配偶者の収入に応じて配偶者控除や配偶者特別控除を受けることができます。
所得が多くなるほど税率は上がりますが、税率の違いで収入が高い方が手取り額は少なくなるということはありません。税金面では世帯年収1000万円前後で損となることはないでしょう。
保育や幼稚園の費用負担はどうか?
保育園の保育料は世帯の合算した収入で判断され、世帯年収が上がると保育料も高くなっていきます。
市町村税の所得割課税額によりますが、世帯年収1000万円だと、高い方からおおむね2、3番目くらいの階層になり、自治体によってはパート収入がほとんど保育料に消えてしまうくらい保育料がかかってきます。
また、幼稚園の保育料は一番高い区分になることが多くなります。年収が多いと、子育てにかかるお金も多くなってしまうのです。
高等学校等修学支援金制度は受けられるか?
世帯の合算した収入で判断されるものは他にもあります。現在の高等学校就学支援金制度では、保護者などの所得に要件が設けられています。
原則では、親権者で両親がいる場合は2名の合算額で判断されます。モデル世帯で年収約910万円以下の世帯が対象のため、世帯年収1000万円だとこの制度は受けられないでしょう。年間12万円弱の授業料を払うことになるので、損と感じるかもしれません。
児童手当はどうか?
平成24年から、児童手当も所得制限が設けられました。扶養親族などの人数にもよりますが、手当てを受け取る人の年収が1000万円をこえる場合、扶養親族が3人以下だと所得制限がかかります。
今のところ、所得制限額以上の場合には特例給付として1人あたり月額5000円が支給されていますが、満額支給(月額1万円または1万5000円)に比べると半減するので、損と思うかもしれません。
この特例給付については廃止の検討がされているそうです。なお、現在は児童手当を受け取る人の所得で判断していますが、今後は世帯全体の所得を合算して判定する方式に切り替えることも、財務省などから主張されています。
今までは片方の収入で判断されていたために児童手当の支給対象となっていた人でも、共働きが多くなった現在では、所得制限にかかる可能性が高くなるでしょう。収入の多い人はそれなりの負担を、とさまざまな制度改正が行われています。
現在は、世帯年収として1000万円という線引きで使えるお金の額に差が出てこないとしても、今後は変わる可能性が大きいでしょう。家計への影響が大きい制度変更については、よく確認をし、どのようにしていくか考えられるといいですね。
執筆者:柴田千青(しばた ちはる)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者