扶養から外れないよう「月収8万円」におさえていますが、普通に働けば「月10万円」ほど稼げそうです。社会保険料を考えると損でしょうか?
配信日: 2024.12.11
社会保険料が発生する条件の一つが、所定内賃金が月8万8000円以上かどうかです。そのため、扶養内で働けるよう、収入を調整している人もいるでしょう。
今回は、月収が8万円から10万円に増えた場合を例に、社会保険料の試算や扶養から外れてしまうのかなどを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
月収を8万円から10万円に増やすのは損?
月収10万円の場合の社会保険料を試算するにあたり、次の前提を設けます。
●東京都在住の40代で、社会保険の対象者
●健康保険は全国健康保険協会に加入
●雇用保険料率は令和6年度の「一般の事業」に準じる(0.6%)
この場合の各保険料の月額は次の通りです。
●健康保険料と介護保険料:5674円
●厚生年金保険料:8967円
●雇用保険料:600円
●合計:1万5241円
月収10万円から社会保険料を引くと、8万4759円となります。したがって、月収を8万円から10万円に増やしても、収入上は損ではない計算です。
なお、全国健康保険協会の保険料額は都道府県ごとに異なります。厳密な金額を知りたい場合は、協会のホームページで自身の地域の金額を参照するといいでしょう。
社会保険料だけでなく、所得税や住民税が発生する可能性がある
月収が8万円から10万円になることで、発生する可能性があるのは、社会保険料だけではありません。月収10万円を12ヶ月間受け取ると、住民税の一般的な非課税ラインである年収100万円を上回るため、住民税が課税される可能性があります。
また、年収が103万円を超えると所得税が発生する可能性があります。ただし、今回の場合は社会保険料控除によって課税所得が0円となるため、所得税はかからないでしょう。
月収8万8000円以上でも扶養に入れる場合がある
月収が8万8000円を超えても、扶養に入れる場合があります。社会保険料の支払い義務がパート、アルバイトに生じるのは、次の5項目をすべて満たした場合だからです。
●学生ではない
●従業員51人以上の企業で働いている
●所定内賃金が月額8万8000円以上
●週の所定労働時間が20時間以上
●2ヶ月を超える雇用の見込みがある
上記のうち該当しないものがあれば、月収が8万8000円を超えていても、扶養内で働ける可能性があります。ただし、年収が130万円を超えると、ほかの4項目にかかわらず社会保険料が発生します。
社会保険のメリットとデメリット
社会保険に入るべきか、扶養内で働き続けるべきか悩んでいる人もいるでしょう。社会保険の加入を検討する際は、現状や将来を見据え、恩恵と負担を整理することが大切です。そこでここからは、社会保険がもたらすメリットとデメリットを解説します。
メリット1:将来の年金受給額が増える
厚生年金保険に加入することで、「厚生年金」を受給できます。受給額は在職中の給料、および加入年数などに比例し、支払い分を上回る額を受け取れる可能性もあるでしょう。
なお、厚生労働省と日本年金機構が公表している「社会保険適用拡大ガイドブック」によると、月収10万円で厚生年金に加入した場合、厚生年金(報酬比例部分)の年金月額の目安は、表1の通りです。
表1
加入期間 | 報酬比例部分の年金月額(目安) |
---|---|
10年 | 4900円 |
20年 | 9900円 |
30年 | 1万4900円 |
出典:厚生労働省・日本年金機構「社会保険適用拡大ガイドブック」を基に筆者作成
メリット2:医療保険の給付が充実する
傷病手当金や出産手当金など、医療保険の内容が充実します。具体的には、病休期間中や産休期間中に、給与の3分の2相当が支給されます。
デメリット:手取りが減る
デメリットは現役時代の手取りが減少することです。現在のお金に困っている場合や、いつでも引き出せる貯蓄として管理したい場合などは、社会保険料が負担になるかもしれません。
月収を8万円から10万円に増やしても損にはならないと考えられる
今回の試算では、月収10万円の場合の社会保険料は、月1万5241円という結果になりました。10万円から1万5241円を引くと8万4759円であるため、月収を8万円から10万円に増やしても、収入上は損にはならない計算です。ただし、社会保険料は年齢や地域によって変動する点に注意してください。
なお、社会保険への加入は、現役時代の手取りを減らす一方、将来への備えが充実することにもつながります。加入を検討する場合は「社会保険がなくとも、将来の蓄えは足りるか」「社会保険料を徴収されても、家計は成り立つか」といった視点をもつといいでしょう。
出典
厚生労働省・日本年金機構 社会保険適用拡大ガイドブック(1、7ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー