2025年は、賃上げに対し、物価と利上げがどうなるかに着目しながら家計運営を行う

配信日: 2025.01.19

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2025年は、賃上げに対し、物価と利上げがどうなるかに着目しながら家計運営を行う
2024年は、政治を巡る動きが目立つ年だったように感じる人は多いかもしれません。自民党の総裁選があり、衆院選があり、「政権与党」が「少数与党」になったことで、政策の内容にも若干変化が生じてきているようです。
 
今回は2025年の家計運営についての考え方を、簡単に伝えていきます。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

2025年は今まで以上に、物価、賃金、金利に注目する

現在、日本経済はデフレ経済から脱却できるかどうかの瀬戸際にあります。物価の伸びは一時期よりも緩慢になり、また賃金も上昇し、日銀が追加利上げを行うかどうかというタイミングに来ています。家計面で考えるポイントは、以下のとおりです。
 

(1)収入

賃上げや最低賃金の引き上げによって、収入がどれぐらい増える可能性があるか、考えてみるのもよいでしょう。
 
まず、いわゆる「103万円の壁」に関しては、2024年12月17日の午前中に「協議が打ち切られた」と報道があり、103万円の壁を引き上げるという国民民主党の案が実現されない可能性が強まりました。これで可処分所得が増える可能性はなくなった、と考えておいたほうがよいかもしれません。
 
税制上、可処分所得の増加の目はなくなった可能性が高いですが、収入面では、賃上げや最低賃金の引き上げといった基本的な給与の増加を念頭に置くようにしましょう。
 
また、以前から政策的に推奨されている兼業や副業が可能な方は、実行してみるのもよいでしょう。さらに「リスキリング」と呼ばれる社会人の学び直しを通じて資格や技能を磨くなど、自分の労働価値を高めて給与増につなげることも、収入面では重要な視点といえます。
 
さらに、転職を考えている方もいるかもしれません。「将来的に給与が増えない可能性が高い」と考えるならば、若いうちに転職をすることで、給与の伸びを高めることができるかもしれません。
 

(2)支出

物価自体は上昇していますが、その勢いは一時期と比べて鈍くなっています。国はデフレ経済からの脱却を目指し、年率2.0%の物価安定目標を掲げていますが、現状の日本経済はおおむねその目標に近づいてきています。
 
毎年2.0%ずつ物価が上昇していくならば、大ざっぱにいえば支出も2.0%ずつ増えていくことになります。そのため、2025年も今まで同様、お金の使い道を考えながら家計運営をしていく必要が出てくるでしょう。
 
支出は大きなものから見直すことが賢明といえます。なぜならば、大きな金額であればあるほど、家計の改善効果が高まるからです。
 
また、支出の見直しは資産との関連を意識しながら行うとよいでしょう。例えば、「保険への加入は最低限にし、余ったお金は何らかの資産形成に回す」といった視点です。
 
これについての特に重要な考え方は、「物価上昇期には掛け捨ての保険に入らない」ということです。物価が上がるとお金の価値が目減りするため、約束されている給付金や保険金の価値が下がることには注意しましょう。
 

(3)資産

物価が上がることは、モノの価値が高まるということです。株式や金、不動産などは「モノ」であるため、これらを基に資産形成を行うと、資産がより増える可能性が高まります。
 
近年は、iDeCo(個人型確定拠出年金制度)やNISA(少額投資非課税制度)を活用した資産形成が推奨されていますが、物価上昇期には特に、現金価値の目減りを抑えることが資産形成の意義であるとされます。そのため、リスク許容度に応じて資産形成を行っていくようにしましょう。
 
ただし日本においては、日本銀行が追加利上げを行う可能性が高まっています。投資対象によっては、金利が上がると資産価値が下がるものもあるため、注意が必要です。
 

(4)負債

現在では、日銀の追加利上げが実施されるかどうかに注目が集まっています。2025年の1月の金融政策決定会合で追加利上げがあるかが焦点です。
 
いずれにせよ、政策金利が現在の0.25%の水準から0.50%に引き上げられることは時間の問題かもしれません。仮に金利が引き上げられる場合、特に変動金利で住宅ローンを組んでいる方は返済負担が増えることになるため、注意が必要です。
 
また、このタイミングで変動金利から固定金利に見直す場合、端的にいうと見直し効果はマイナスになるため、仮に見直すなら将来の金利上昇に備えることを目的に検討するとよいかもしれません。
 
ただし、金利の引き上げについては、国内経済の動向によってペースが遅くなる可能性ももちろんあるため、事前にライフプランを作成したうえで検討したほうがよいといえるでしょう。
 

2025年はなるべくお金の使い道を考えるようにする

収入と支出についてある程度イメージした後は、その差し引きである純利益、つまり余るお金の使い道を考えることがポイントになります。
 
103万円の壁についての協議が打ち切りになったことを鑑みると、国としては、国民の懐を満たしながら経済政策を実行していく意図はほとんどない、と考える必要があるでしょう。
 
このため、家計簿やライフプランを作成し、将来の見通しを描きながら純利益の増加を目指すようにします。そのうえで、自分や家族にとって価値あるお金の使い方をするようにします。このとき、使い道に応じて「今使うお金」と「将来使うお金」とに分けて考えると、今使うべきかためるべきかが、はっきりしてくるでしょう。
 
このようにお金を余らせるのは、物価上昇や金利上昇に伴う可処分所得の減少を抑えることが目的です。賃上げが進むと、可処分所得は増えるでしょう。しかし、長い目で見た場合、賃金の上昇は物価を上昇させる要因ともなるため、長期的な視野で家計防衛を図る必要があります。
 
家計を管理し、家計を見直し、お金の使い方を工夫する。2025年以降は、これらの点についての関心がより高まるかもしれません。
 

まとめ

今回は、2025年の家計運営について少し考えてみました。「103万円の壁の引き上げを巡る協議が打ち切られた」という報道もありましたが、税制改正による可処分所得の増加はおそらく見込めないでしょう。
 
この点をしっかりと認識し、2025年以降は「国の政策のうち、活用できるものは活用し、それ以外は自助努力で何とかする」という流れがこれまでよりもより明確になるように考えられます。
 
国の経済政策を観察していると、方向性としては年金制度の維持を横目に見ながら政策を立案している節があります。税制改正も年金制度と絡んでいますが、これらを考慮すると個人レベルでは、長期的に年金を減らさないための家計の運営・管理が、ますます求められてくるでしょう。
 
おそらく世の中の流れとして、「稼いだらためる。稼いだら増やす」といった将来に向けた資産形成の動きがより加速すると考えられます。その第一歩が、可処分所得を増やすことです。
 
税制面で可処分所得を増やすことができない可能性が強まった今、自助努力でどのようにして純利益を増やしていくかが、今後は問われてくるでしょう。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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