扶養内でパートするはずが、12月に働きすぎて年収「103万円」を超えてしまった! 少しなら大丈夫?「大損」してしまうのでしょうか…?
配信日: 2025.01.19
本記事で詳しく解説します。年収103万円以内を断固維持してきた人にとっては拍子抜けの話になるかもしれません。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
目次
「年収103万円の壁」とは
「年収103万円の壁」とは、自身に所得税がかからず、かつ、配偶者の扶養に入れる年収のボーダーを指す言葉です。働いて収入を得ながらも所得税の天引きはされず、扶養する配偶者のほうでは配偶者控除を受けることができます。
「103万円」という金額の根拠は、給与所得控除の最低額55万円と基礎控除48万円の合計です。給与をもらって働く人には誰にでも最低103万円の控除があり、「年収103万円-控除103万円」で所得は0円となるため所得税は発生せず、かつ配偶者の扶養に入ることができるという計算です。
年収103万円以下にすることでお得になっている金額
年収を103万円以下に抑えることによってメリットを受けられている、いわゆる「お得になっている」金額を計算してみましょう。
パート勤務本人の所得税は前述の通り発生しないので、お得になる要素としては、配偶者の扶養に入ることで受けられる配偶者控除38万円(配偶者の合計所得金額が900万円以下の場合)です。そのため、これによって節税できている所得税と住民税が「お得金額」ということになります。
【所得税】
38万円×10%(※1)=3万8000円
【住民税】
33万円(※2)×10%(一律)=3万3000円
【合計】
3万8000円+3万3000円=7万1000円
※1:所得税率は所得が多いほど高い税率が適用される累進税率となっています。本記事では、年収500万円程度の人に適用される場合が多い税率10%を使用します。
※2:住民税の配偶者控除は33万円です。
年収103万円以下に抑えることで、配偶者のほうは年間約7万円節税されていることが分かりました。
年収130万円未満まではお得さは変わらない
では年収103万円を少しでも超えてしまうと、約7万円の「お得金額」を一気に失ってしまうのでしょうか。答えは「No」です。配偶者控除は年収103万円以下しか受けられませんが、年収103万円超201万円以下までは配偶者特別控除が受けられるからです。
配偶者特別控除の控除額は年収201万円に近づくにつれて段階的に減っていく構造になっていますが、年収150万円までであれば配偶者控除と同じ38万円となっています。
つまり、年収103万円を超えると配偶者控除は受けられなくなるものの、年収150万円までは配偶者特別控除で配偶者控除と同額の控除を受けられるため、配偶者の節税額は約7万円で変わらないということです(図表1参照)。
図表1
国税庁 家族と税
ただ、年収150万円になると社会保険の扶養も外れてしまう点に注意しなければなりません。社会保険の扶養になれる年収は130万円未満です。よって、年収103万円を超えて働く場合であっても、配偶者特別控除を38万円受けつつ、かつ、社会保険の扶養のままでいるためには、年収130万円未満に抑える必要があります。
なお、社会保険の扶養については会社の規模によっては年収106万円でも加入となるケースもあるため、事前に会社に確認しましょう。
2025年には「103万円の壁」が「123万円」に引き上げられることに
2024年12月、政府は2025年度の与党税制改正大綱を決定しました。その中に、「年収103万円の壁」を「123万円」にする方針が明記されました。2025年1月より、給与所得控除の最低額55万円が65万円に、基礎控除48万円が58万円になり、それぞれ10万円ずつ増え、年収123万円までは現在の年収103万円と同じ節税効果を受けられます。
つまり、2025年以降は年収103万円の壁はなくなるので、なおさら「103万円以内」にこだわる必要はなくなるということです。
まとめ
2024年の年収が103万円を少し超えてしまっていても大損はしておらず、むしろ、配偶者側での節税額は変わりません。年収150万円以下であれば、年収103万円以下の場合と同じ節税額となりますが、社会保険の扶養は年収130万円未満である点に注意しましょう。
ただし、2025年には年収103万円の壁が123万円まで引き上げることが決まっています。パート勤務の人は特に制度の変更点をよく理解し、家計の状況も踏まえたうえでこれからの働き方を考え直すきっかけにしてください。
出典
国税庁 家族と税
東京都主税局 個人住民税
全国健康保険協会 被扶養者とは?
厚生労働省 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士