仕事のストレスで「うつ病」にかかって働けなくなり、貯金も「残り1万円」。もう「生活保護」を受けるしかない…?通院や生活に「車」が欠かせない場合、どうしたらいい?
配信日: 2025.02.12

日本には「生活保護」というセーフティーネットがあります。しかし、生活や仕事に必須の車を手放せないことが原因で、必要な支援を受けられない方もいるようです。当記事では、生活保護で「車の所有」が認められない理由を解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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生活保護では「車の所有」は原則認められない
前述の通り、生活保護では「車の所有」は原則認められません。そもそも「生活保護」とは、厚生労働省によると「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度」です。
保護の要件として「資産の活用」が定められており、預貯金や生活に使用していない土地・家屋などがある場合は、売却して生活費に充てる必要があります。車も「資産」に該当するため、生活保護を受けるためには売却して生活費に充てなければなりません。
「車の所有」が認められない背景には、生活保護制度の趣旨に反する以外にも、いくつかの要因があります。例えば、車を所有するには、ガソリン代や駐車場代、車検代、税金などの維持費が必要です。ローンで車を購入した場合は返済も必要ですが、生活保護費には含まれないため、生活保護受給者がこれらの費用を負担するのは難しいと考えられます。
また、車を運転しているときに万が一事故を起こしてしまった場合、損害賠償が困難という事実も、生活保護で「車の所有」が認められない理由のひとつです。
このような理由から生活保護では「車の所有」を認めておらず、生活保護を受給する場合は原則、車の売却を求められます。
状況によっては「車の所有」が認められるケースもある
ただし、生活保護受給者は絶対に「車の所有」が認められない、というわけではありません。例えば、障害者の方や通勤が著しく困難な場合などは「車の所有」が認められる可能性があります。根拠となるのは、生活保護の実施要領です。
厚生労働省の「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」によると、以下に該当するような場合は、車の所有が認められる可能性があります。
1. 障害者の方が自動車で通勤する場合
2. 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する方などが自動車で通勤する場合
3. 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車で通勤する場合
4. 深夜勤務などの業務に従事している方が自動車で通勤する場合
ただし、同資料によると、上記2~4に関しては以下のいずれにも該当する場合に限るとしています。
●世帯状況からみて、自動車による通勤がやむを得ないものであり、かつ、当該勤務が当該世帯の自立の助長に役立っていると認められること。
●当該地域の自動車の普及率を勘案して、自動車を保有しない低所得世帯との均衡を失しないものであること。
●自動車の処分価値が小さく、通勤に必要な範囲の自動車と認められるものであること。
●当該勤務に伴う収入が自動車の維持費を大きく上回ること。
また、「概ね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者であって、保有する自動車の処分価値が小さいと判断される」場合についても、車の所有が認められるケースがあります。
「車を手放せないから」と生活保護を諦めるのではなく、車の必要性について福祉事務所に相談してみましょう。
まとめ
今回は「生活保護」と「車」の関係を解説しました。車は資産に該当するため、生活保護では「車の所有」は原則認められません。しかし、障害者の方や通勤が著しく困難な場合は「車の所有」が認められる可能性があります。車があるからと生活保護を諦めるのではなく、車の必要性について福祉事務所に相談してみるとよいでしょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて 第3 資産の活用 問9
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー