2025年4月から「育休手当」が手取りの10割に! 現行制度とどう変わる?「年収900万円」の夫婦を例にシミュレーション
配信日: 2025.02.13

本記事では、年収900万円の夫婦を例に、現行制度と新制度の違いや具体的なシミュレーションを解説します。

執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
育休手当の給付率が引き上げられる背景
2025年4月から、育休手当の給付率が引き上げられます。この改正は、子育て世代が育休を取得しやすいよう支援し、少子化を食い止めることをねらいとしています。
現在の制度では、育児休業が始まってからの6ヶ月間、賃金の67%が支給されます。育休手当からは税金や社会保険料が引かれないため、手取りにすると約8割が受け取れる仕組みです。2025年4月以降は、条件を満たすと手取りで約10割受け取れるようになります。つまり、実質的に休業前と同じ収入を得られるのです。
これは、従来の育児休業給付金に加えて、出生後休業支援給付金が創設されるからです。父親は子どもの出生後8週間以内、母親は産休後8週間以内に、それぞれ14日以上育児休業を取ると、最大28日間、賃金の13%分が上乗せされます。
現在の育休手当の支給割合が67%なので、13%分上乗せすることで賃金の80%の支給になります。今回の改正により、育休中の収入の減少がゆるやかになり、育休がより取得しやすくなることが期待されています。
給付率引き上げのポイント
では、2025年4月からの制度改正のポイントを図表1で確認していきましょう。
図表1
厚生労働省 2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します
簡単にいうと、父親が子どもの出生後8週間の間に14日以上、母親が出生後8週間から16週間の間に14日以上の育休を取得した場合に、引き上げが適用されます。なお、手取りで10割相当になる期間は、最大28日間です。
育休を継続的に取得する場合、この28日間を除くと育休手当は6ヶ月目までは67%、7ヶ月目以降は50%支給されるのはこれまで通りです。そして、改正後に手取り10割相当を最大28日間受け取るには、次の条件を満たす必要があります。
・夫婦で14日以上育休を取ること
両親がそれぞれ14日以上育休を取得すれば、給付率が67%から13%分上乗せされて80%になります。税金や社会保険料がかからないため、手取りで10割相当になります。
・対象期間
父親の場合は子どもの出生後8週間までの「産後パパ育休」の期間内、母親の場合は産休後8週間以内(育休開始後8週間以内)が対象です。この期間中に、それぞれが14日以上の休業を取る必要があります。
・例外条件
配偶者が専業主婦(主夫)の場合やひとり親家庭の場合は、配偶者が育休を取らなくても手取り10割相当が適用されます。
夫婦の年収900万円の場合でシミュレーション
では、新制度でどれくらい手取りが変わるか、夫婦の年収が合計900万円のケースでシミュレーションしてみましょう。
ここでは、次の条件でシミュレーションします。
夫:年収600万円(月収40万円とする)
妻:年収300万円(月収20万円とする)
夫がパパ育休を28日間取得し、妻が産休の後、子どもが1歳になるまで育休を取得したとします。
現行制度
夫の育休手当は、月額約26万8000円です。妻の育休手当は、最初の6ヶ月間が月額約13万4000円、7ヶ月目以降は月額約10万円の支給となります。
新制度
改正後は、夫の育休手当が月額約32万円になります。そして、妻の育休手当は、最初の28日間が月額約16万円、その後約5ヶ月間は月額約13万4000円、7ヶ月目以降は月額約10万円の支給となります。
このシミュレーションでは、新制度によって夫婦合わせて約7万8000円多く支給されることが分かりました。
まとめ
2025年4月からの育児休業給付金の改正は、育休を取得する家庭にとって一助となりそうです。特に、収入が減ることを理由に育休の取得をためらっていた人にとってはうれしい改正になります。
新制度の開始に合わせて、条件や手続き方法をしっかり確認し、育児休業制度を活用してください。夫婦で育児に関わり、お金には変え難い、子どもとの時間を過ごせると良いですね。
出典
厚生労働省 2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します
執筆者:古澤綾
FP2級