お米が「5キロ3500円」もして買えません。政府が「備蓄米」を放出するそうですが、どれくらい安くなりますか?「5年保存」と聞きましたが、味の違いはあるのでしょうか?
2024年産の新米が出回れば価格が落ち着くと期待されていましたが、実際には2024年8月以降、下がることなく高値を記録しています。米の価格が高くなっている理由は、市場に出回る流通量が前年度に比べて少ないことにあります。この状況を受け、農林水産省は政府の備蓄米を放出することと発表しました。
備蓄米とは食料不足や災害時に備えて政府が確保しているお米のことですが、「備蓄米の放出=価格の大幅な下落」になるのか、実際のところはどうなのでしょうか?
本記事では、備蓄米が市場に出回った場合の米の価格の変化、備蓄米の味、さらにどのような条件で備蓄米が放出されるかについて解説します。
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備蓄米が放出されたらお米は安くなる?
農林水産省によると、2024年12月時点でのコメ卸間での相対取引価格は玄米60キログラムあたり2万4665円となり、単月の価格としては冷夏による大凶作で「平成の米騒動」と呼ばれた1993年産を上回りました。
しかし、政府は米価の引き下げを目的とした政策は取らない方針を示しており、価格を下げるための政策ではなく、あくまで市場の流通量を増やすための措置という位置づけです。そのため、政府備蓄米の放出によってただちにお米が安くなるかは現時点では不透明であり、市場の需給状況によって影響の度合いが変わる可能性があるといえるでしょう。
備蓄米の味は?
備蓄米は政府が100万トン程度を適正備蓄水準として運用している米で、毎年20万~21万トンを買い入れ、原則として5年間保管後に飼料用などとして販売されます。2024年6月末時点での備蓄在庫量は91万トンあり、そのうち最も古いものは2019年産で約10万トンが保管されています。
長期間の保管による品質や味への影響が気になるところですが、農林水産省の食味等分析試験によると、15℃以下で保管された場合、精米後12ヶ月が経過しても食味は大幅に低下しないという結果が出ています。ただし、この調査は18ヶ月までのデータに基づくものであることに注意が必要です。
5年間保管された備蓄米の味についての調査結果は公表されていませんが、一般的に長期保存することで味が悪くなるといわれています。農林水産省の試験結果でも、米の酸化を示す脂肪酸度が、基準値3.0ミリグラムに対し、備蓄期間18ヶ月の米は8.4ミリグラムと、酸化が進んでいることが分かります。
5年間保管された米については、さらに酸化が進んでいる可能性が高く、炊き方や保存方法の工夫が必要になるでしょう。
備蓄米が放出されるのはどんなとき?
米の流通は、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」に基づいて管理されています。
政府は市場への影響を避けるため、通常は備蓄米を主食用として販売しない「棚上備蓄」という方式を採用しており、原則として市場には流通せず、供給不足が深刻になった場合にのみ放出する運用方法をとっています。具体的には、災害や凶作などで米の供給が大幅に不足し、安定して流通させることが難しくなると政府が判断した場合です。
しかしながら2024年から続く米の供給不足を受け、農林水産省は米の流通を円滑にする目的でも備蓄米を放出できるよう、新たな運用の見直しを検討しているところです。国が買い戻しを行うことを条件としての運用になる見込みで、従来よりも柔軟に備蓄米を市場に供給できる仕組みになることが期待されます。
まとめ
備蓄米は、通常市場に出回ることのない米ですが、実際に市場に出回るとなれば、それは初めての事例となります。そのため、どれほど価格に影響があるかは現時点では不透明です。
また、備蓄米は長期間保管されているため、一般的には風味が落ちるといえます。美味しく食べるためには、炊き方や調理方法の工夫が必要になるかもしれません。今後も、備蓄米の放出状況や、米価の動向を注視しましょう。
出典
e-Gov法令検索 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律
農林水産省 米をめぐる状況について
農林水産省 令和6年産米の相対取引価格・数量
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
