「103万円の壁」と「106万円の壁」が変わる!?税金や手取りへの影響はどうなるの?

配信日: 2025.02.28

この記事は約 4 分で読めます。
「103万円の壁」と「106万円の壁」が変わる!?税金や手取りへの影響はどうなるの?
「103万円の壁」と「106万円の壁」の内容についての変更が同時期に提案されているため、混同する方もいるかもしれません。しかし、改正される可能性のある内容はそれぞれで大きく異なるので、間違えないようにしましょう。
 
特に、「103万円の壁」の引き上げによって、税金の負担が軽くなる可能性があります。今回は、「103万円・106万円の壁」で変更が検討されている内容について、それぞれご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

「103万円の壁」と「106万円の壁」とは

「103万円の壁」とは、給料に所得税が課される基準となる年収です。令和6年時点で所得税の基礎控除が最大で48万円、給与所得控除が最低でも55万円で合計すると103万円になるためです。
 
対して「106万円の壁」は、厚生年金保険や健康保険といった社会保険に加入する年収の目安です。
 
社会保険に加入する条件のひとつが「所定内賃金が月額8万8000円以上」で、年換算にすると105万6000円となり約106万円であるため、「106万円の壁」と呼ばれています。なお、厚生労働省によると、賃金以外の社会保険加入条件は以下の全てを満たす場合となります。

●被保険者の総数が企業規模で常時51人以上
●1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満
●雇用期間が継続して2ヶ月を超えて見込まれる
●学生ではない(休学中や夜間学生を除く)

 

変更される可能性のある内容とは?

「103万円の壁」で変更が検討されている内容は、所得税の基礎控除額と給与所得控除額の引き上げです。財務省によれば、基礎控除は合計所得金額2350万円以下の個人の場合は58万円まで、給与所得控除は最低保障額が65万円までの合計123万円になる可能性があります。
 
もし実現すれば、所得控除額が多くなるため、所得税が安くなるでしょう。また、給与所得控除は住民税の計算にも適用されるため、住民税も安くなる可能性があります。
 
「106万円の壁」で検討されている内容は、社会保険の加入条件のうち、賃金と企業規模に関する要件を撤廃するというものです。これにより、企業規模や賃金に関係なく、勤務時間の要件を満たしている学生以外なら、社会保険に加入することになるでしょう。
 
これまで社会保険に加入していなかった方は、給料から税金のほかに社会保険料も引かれるようになります。ただし、改正に関する試算は複数行われているため、最終的な負担額は改正内容によって変わるでしょう。
 

もし「103万円の壁」が最大123万円に変わると税金や手取り額はどう変わる?

今回は、「103万円の壁」が123万円(所得税の基礎控除58万円、給与所得控除65万円)に変わった場合の税金や手取り額を求めます。条件は以下の通りです。

●年収162万円
●東京都在住40代
●健康保険は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入
●適用される控除は給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除のみ
●賞与は考慮しない
●住民税率は基準値

年収162万円で賞与がない場合、月収は13万5000円、標準報酬月額は13万4000円です。社会保険料は以下のようになります。

●年間健康保険料(介護保険料含む):約9万3103円
●年間厚生年金保険料:14万7132円
●年間雇用保険料:9720円
●社会保険料合計:約24万9955円

課税金額は「年収-給与所得控除-(社会保険料控除+基礎控除)」で求められます。また、今回のケースだと、年収の壁の変更にかかわらず社会保険料の金額は同じです。条件を基にすると、「103万円の壁」と「123万円の壁」では表1のように税額が変わります。
 
表1

103万円の壁 123万円の壁
給与所得控除 55万円 65万円
所得税基礎控除 48万円 58万円
所得税課税金額 34万円 14万円
所得税率 5%
所得税額 1万7000円 7000円
住民税基礎控除 43万円
住民税課税金額 39万45円 29万45円
住民税率 10%+5000円(均等割分)
住民税額 約4万4005円 約3万4005円

※筆者作成
 
今回の条件では、「103万円の壁」のときは手取りが130万9040円、「123万円の壁」のときは132万9040円になり、2万円の差があります。このように、「103万円の壁」が引き上げられると、負担する税額は軽くなるでしょう。
 

「103万円の壁」が引き上げられると税額負担は軽くなる

所得税の課税に関する「103万円の壁」が引き上げられると、課税される金額が減少するため税金の負担が少なくなります。対して、「106万円の壁」は社会保険料の加入に関する目安で、仮に内容が変更された場合、条件によっては社会保険への加入が必要です。
 
もし実際に「103万円の壁」の引き上げが実行されると、今回の条件では、年収162万円の方なら手取りが2万円多くなる可能性があります。ただし、今後の状況によっては改正内容が変わる可能性もあるため、よく確認しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 対象となる方
財務省 令和7年度税制改正の大綱(1~2ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

【PR】
夫の家事への不安に関するアンケート FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集