管理職に昇進しましたが「残業代」が支給されなくなりました。これは通常のことなのでしょうか?

配信日: 2025.03.06

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管理職に昇進しましたが「残業代」が支給されなくなりました。これは通常のことなのでしょうか?
昇進して管理職になったものの、突然「残業代が支給されなくなった」と戸惑っている方も多いのではないでしょうか?「これは普通のことなのか?」「法律的に問題はないのか?」と疑問に思うのも無理はありません。
 
本記事では、管理職と残業代の関係について詳しく解説し、違法なケースや未払い分の請求方法についても紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

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管理職になると残業代が出ないのはなぜ?

一般的に、管理職に昇進すると「残業代が出なくなる」といわれますが、これは労働基準法における「管理監督者」という立場が関係しています。
 
労働基準法では、管理監督者に該当する場合、労働時間・休憩・休日の規定が適用されず、残業代が支給されないことが定められています。これは、管理監督者が労働条件の決定や労務管理において経営者と一体的な立場にあるためです。
 
しかし、管理職という肩書きがあるだけでは、必ずしも管理監督者に該当するとは限りません。重要なのは、その役職に「どのような権限や待遇が伴っているか」です。
 

管理職でも残業代が出るケースと出ないケースの違い

管理職だからといって必ずしも残業代が出ないわけではありません。労働基準法上、「管理監督者」として認められるかどうかで、残業代の支給が決まります。

1.残業代が支給されないケース(管理監督者に該当)

●職務内容:労働条件の決定や労務管理において経営者と一体的な立場にある
●責任と権限:採用/解雇や人事考課などの権限を有する
●勤務態様:労働時間規制に馴染まない実態(出退勤管理の有無)
●待遇:一般従業員と比べて優遇されている

2.残業代が支給されるケース(管理監督者に該当しない)

●職務内容:労働条件の決定や労務管理の権限を有しない
●責任と権限:採用/解雇や人事考課などの権限を有しない
●勤務態様:労働時間規制が適用される(出退勤管理がある)
●待遇:一般従業員と待遇に大差がない

このように、実態に応じて残業代の支払い義務が発生する場合があります。
 

「名ばかり管理職」に注意!違法なケースと未払い残業代の請求方法

管理職だから残業代が支払われないという主張は、労働基準法41条2号に定める管理監督者の要件を満たさない場合、違法となる可能性があります。名ばかり管理職と呼ばれるケースでは、実際の職務内容や待遇が管理監督者基準を満たさないため、未払い残業代の請求が可能です。
 
名ばかり管理職の典型例は以下の通りです。

●役職名だけが管理職で、実質的な権限がない
●出勤・退勤時間が厳しく管理され、勤務の自由がない
●給与が一般社員とほとんど変わらない(管理職手当が少額)

このような場合、未払いの残業代を請求できる可能性があります。

▼未払い残業代の請求方法

●証拠収集:労働時間記録(タイムカード・メール履歴・PCログイン記録)を保存
●書類確認:給与明細や雇用契約書で管理職手当の額を確認
●内部対応:人事部や上司と話し合い
●外部相談:労働基準監督署への相談や弁護士の活用
●法的手続き:労働基準法第119条違反の場合、刑事告発も可能

名ばかり管理職と認められた判例では、過去に未払い残業代を請求する判決が多数出ています。例えば、日本マクドナルド店長事件では、店長が管理監督者該当しないと認定され、約1000万円の未払い賃金が支払われました。
 

まとめ

管理職になったからといって、必ずしも残業代がなくなるわけではありません。労働基準法では、経営者と一体的な立場にある「管理監督者」だけが、残業代の支払い対象外となります。
 
しかし、実際には管理職とされながら、権限や待遇が十分でない「名ばかり管理職」も多く存在します。その場合、未払いの残業代を請求できる可能性があります。
 
自分の職務内容や待遇をしっかり確認し、納得できない場合は会社と交渉するか、労働基準監督署に相談することをおすすめします。納得のいく働き方を実現するために、正しい知識を身につけておきましょう。
 

出典

厚生労働省 管理監督者の範囲の適正化
デジタル庁 e-Gov 労働基準法 第四十一条
公益社団法人全国労働基準関係団体連合会 日本マクドナルド事件
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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