「役職定年制廃止」とのことですが、どういった背景から実装されたのでしょうか?
配信日: 2025.03.10 更新日: 2025.03.11

本記事では、役職定年制の概要とともに、廃止となった背景や廃止による影響、今後の展望について解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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役職定年制の概要
役職定年制とは、企業において一定の年齢に達した管理職が役職を退き、一般職や特別職に異動する制度を指します。
この制度は、企業の人事戦略の一環として導入されており、主に若手社員の昇進機会を確保し、組織の新陳代謝を促すことを目的としてきました。企業が高齢層の管理職に高い給与を支払い続ける必要がなくなれば、人件費の抑制にもつながる可能性があります。
近年は、役職定年制の廃止を検討する企業が増えているようです。その背景には、日本社会の構造的な変化や経済環境の変動が深く関わっているとされています。少子高齢化による労働力不足や、年金支給年齢の引き上げ、グローバル化に伴う競争の激化などが、企業の人事制度を再考させる要因となっているようです。
少子高齢化と労働力不足
日本の少子高齢化は、労働市場において深刻な影響を与えています。若年層の労働者が減少する一方で、高齢層の就労者の割合が増加しているのです。この状況のなかで、一定の年齢に達した管理職を一律に役職からはずすことは、企業にとって大きな損失となる可能性があります。
また、企業が抱える技術やノウハウの伝承という観点からも、高齢層の労働者の活用は重要だと考えられます。
年金支給開始年齢の引き上げと生活設計の変化
従来、日本の年金制度は60歳前後での定年を想定していました。しかし、年金支給開始年齢の段階的な引き上げによって、多くの労働者が65歳以上の年齢まで働くことが求められるようになっています。この変化は、個人の生活設計に大きな影響を与えている傾向があるため、企業においても柔軟な雇用体系が求められているのです。
なお、役職定年制の存続によって、管理職を退いた従業員は定年を迎える前の数年間に大幅な給与の減少が発生するため、生活に悪影響を及ぼす恐れがあります。企業は役職定年制を廃止し、より長期間にわたり安定した収入を確保できる仕組みを導入することが求められていると考えられます。
役職定年制廃止による影響
役職定年制を廃止すれば、年齢を理由に管理職を退く必要がなくなり、管理職手当の減額や年収の大幅な低下を防げる可能性があります。
人事院の「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」によると、役職定年後に減額もしくは廃止となる対象の割合は、表1のとおりです。
表1
基本給 | 管理職手当 | 賞与 (支給月数) |
その他手当 | |
---|---|---|---|---|
減額 | 36.6% | 30.7% | 33.1% | 9.4% |
廃止 | - | 37.7% | 3.8% | 7.4% |
※人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」を基に筆者作成
また、役職定年後の年収水準の変化は、表2のとおりです。
表2
変わらない | 下がる | |||
---|---|---|---|---|
約75~99% | 約50~74% | 約50%未満 | ||
割合 | 8.8% | 78.2% | 20.4% | 1.4% |
※人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」を基に筆者作成
多くの企業では、役職定年後に年収水準が「下がる」としています。また、管理職手当を「廃止」するとしている企業も多くなっているのが特徴です。
役職定年制廃止の必要性と今後の展望
役職定年制の廃止は、企業と従業員双方にとって多くのメリットをもたらす可能性があります。特に、少子高齢化による労働力不足や年金支給年齢の引き上げ、グローバル競争の激化などの社会的要因を考慮すると、年齢よりも実力や意欲に応じた評価制度の導入が求められるのです。
企業は、従業員のモチベーションを維持しつつ、持続的に成長できる人事制度を模索する必要があると考えられます。役職定年制の廃止によって、経験豊富な管理職が長期的に活躍できる環境を整えれば、企業の競争力向上にも寄与する場合があるでしょう。
また、柔軟な雇用体系の導入により、従業員がそれぞれのキャリアを主体的に設計できるチャンスとなる可能性もあります。
出典
人事院 民間企業における役職定年制・役職任期制の実態
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー