4月から6月に残業しすぎると「社会保険料」が増えてしまうと聞きました。仮に「月20時間」残業すると、いくらくらい「社会保険料」は高くなりますか?
配信日: 2025.03.15

本記事では、4月から6月に残業すると社会保険料が増える理由や、月20時間残業するといくらくらい社会保険料は高くなるのかを解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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4月から6月に残業すると「社会保険料」が増える理由
毎月の社会保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて算出されます。標準報酬月額とは、被保険者が受け取る月ごとの報酬を一定の範囲で区切って等級ごとに当てはめたものです。しかし、実際の給与と標準報酬月額に大きな差があると社会保険料を正しく算出できません。そのため、毎年決まった時期に社会保険料の定時決定が行われます。
定時決定とは、4月から6月の報酬月額を基に、標準報酬月額を決定することです。報酬月額とは、毎月の給与や手当を指します。4月から6月に残業すると、報酬月額によっては標準報酬月額の等級も上がるため、社会保険料が高くなってしまうのです。
なお、定時決定により見直された標準報酬月額は原則としてその年の9月から翌年の8月まで適用されます。
「月20時間」残業すると「社会保険料」は「年間約7万円」高くなる恐れがある
厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報」によると、所定外給与は月1万9634円、所定外労働時間は10.0時間となっています。
1時間あたりの残業代を約2000円と仮定すると、月20時間残業した場合の残業代は約4万円です。月20時間の残業により4月から6月の報酬月額の平均が4万円上がった場合、標準報酬月額が1~2等級上がり、それに応じて社会保険料も高くなる恐れがあります。
例えば東京都在住で、全国健康保険協会に加入しており、介護保険第2号被保険者に該当しない場合、標準報酬月額が30万円の場合と34万円の場合における社会保険料の違いを表1にまとめました。
表1
標準報酬月額 | 健康保険料(折半額) | 厚生年金保険料(折半額) |
---|---|---|
30万円 | 1万4865円 | 2万7450円 |
34万円 | 1万6847円 | 3万1110円 |
出典:全国健康保険協会「令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」を基に筆者作成
この場合、健康保険料は1982円、厚生年金保険料は3660円増え、1年間の社会保険料は6万7704円増える可能性があるようです。
「社会保険料が高くなる」ことは悪いことばかりではない
社会保険料が高くなると手取り額が減りますが、その一方で以下のようなメリットもあります。
・年金額が増える
厚生年金保険料を多く支払うことで、将来的に受け取る老齢厚生年金の金額が増加します。また、障害厚生年金や遺族厚生年金の金額にも影響します。
・出産手当金や傷病手当金が増える
出産手当金とは、被保険者が出産のために仕事を休み、その期間に給与の支払いを受けなかった場合に支給される手当です。また、傷病手当金とは、病気やけがで仕事を休んだ被保険者やその家族の生活を保障するために支給される手当を指します。どちらも標準報酬月額によって支給日額が決まるため、標準報酬月額が高ければ受給額も増加します。
まとめ
社会保険料は、標準報酬月額と保険料率を掛けて算出され、標準報酬月額は4月から6月の報酬月額を基に毎年決定されます。基本給によって異なりますが、仮に月20時間の残業により4月から6月の標準報酬月額が4万円増加した場合、社会保険料は年間約7万円増加する恐れがあります。
社会保険料の増加は手取り額の減少などのデメリットがありますが、将来の年金額や出産手当金・傷病手当金など医療保険の給付が増える点はメリットです。社会保険料の仕組みを理解して、バランスを考えながら働きましょう。
出典
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報(1ページ)
全国健康保険協会
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー