時給「2000円」のパート。年収130万円目前ですが、少人数の会社なので厚生年金には入れません。130万円を超えたら手取りや将来の年金などどうなりますか?
配信日: 2025.03.14

現在は、年収130万円を超えない範囲で働いていますが、会社からはもう少し多く働いてくれないかと声がかかっています。年収130万円を超えたら、手取りや健康保険、将来の年金はどうなるか、どのくらいまで働いたら厚生年金に入れるのか解説します。

執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
パートと税・社会保険
会社員の夫の扶養内である妻がパート・アルバイトの場合、一定基準の収入を超えると扶養から外れることになり、税金や社会保険料を負担することになります。この年収の3つ基準が、「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」と呼ばれるものです。
「103万円の壁」というのは、所得税が課税されるのか否かの基準です。年収103万円を超えると所得税の課税対象となり、併せて夫が所得税の扶養控除を受けられなくなってしまいます。ただ、妻の年収150万円までは、配偶者特別控除(夫の所得制限あり)によって、これまでと同額の控除を受けられます。
「106万の壁」は社会保険加入の基準です。
(1)年収が106万円以上
(2)勤務先が従業員51人以上の会社
(3)労働時間が週20時間以上
これら3つの条件に当てはまると、自分で厚生年金・健康保険に加入して、社会保険料を負担します。さらに年収が130万円を超えると、勤務先や労働時間に関係なく、自分で社会保険料を負担します。これが「130万円の壁」です。
従業員50人以下の会社だと厚生年金加入の条件は厳しい
パートで働いている人の年収が130万円を超え、勤務先の会社が厚生年金に加入していても、誰もが厚生年金に加入できるわけではありません。
従業員数が51人以上の場合は年収106万円以上、週20時間以上働いていることが加入要件です。一方、50人以下の場合は正社員の4分の3以上の労働日数と労働時間で働いていることが要件となります。つまり、正社員が1日8時間、週5日働いているなら、週30時間以上が要件です。
勤務先の会社で厚生年金・健康保険に加入できない場合は、国民年金・国民健康保険に加入しなければなりません。一般に厚生年金・健康保険のほうが保険料は高いのですが、保険料の半額を会社が負担してくれるため、厚生年金・健康保険のほうが本人の負担は少なくなります。
年収130万円を超えた場合の手取り額
A子さんは現在時給2000円で、週12時間働いています。昨年の年収は128万円でした。そこで、現在の手取り額と、収入が140万円~180万円に増えたときの手取り額を試算してみました。年収128万円の場合は、税・社会保険料の負担がないので、所得税と住民税が引かれて、手取り額は123万4800円となります。
年収130万円以上になると、国民年金と国民健康保険料の負担が発生します。国民年金保険料は、収入に関係なく21万120円ですが、国民健康保険料は自治体によって計算方法が多少違います。
今回は標準的な料率で計算していますが、自分の国民健康保険料を正確に試算する場合は、住んでいる自治体の計算方法を確認するようにしましょう。また、住民税も自治体によって、計算が異なることがあります。
年収が140万円の場合、手取り額は105万6300円まで減ってしまいます。128万円のときより手取り額が多くなるのは、年収170万円まで増えたときでした。月に3万5000円(A子さんの場合は約4時間/週)多く働いても、手取り額はわずかに増えるだけということになります。
将来受け取る年金はどうなる?
年収が130万円以上となって国民年金に自分で加入する場合、夫の扶養内(国民年金の第3号被保険者)でいる場合と比較して、将来受け取れる年金は増えません。厚生年金に加入した場合は、将来老齢厚生年金を受け取れるのに対し、国民年金の場合は保険料を年額約20万円負担しても、将来の年金額が変わらないのです。
また、健康保険に関しても、夫の健康保険の扶養にいるときと国民健康保険に加入したときで、同じサービスが受けられるとは限りません。高額療養費制度の付加給付や、人間ドックの補助、フィットネスクラブ利用時の優待制度など、これまでより受けられるサービスが減ることがあります。
まとめ
A子さんはもう少し収入を増やしたいと考えていますが、まだ幼稚園に通う子どもがいるので、今はまだフルタイムに近い働き方は考えていません。少しだけ収入を増やしても手取り額は減ってしまうこと、厚生年金に加入しなければ将来の年金も増えないと分かって、しばらくは今の働き方を続けることにしました。
近年、厚生年金加入の要件は見直しが続いています。いずれ、自分が厚生年金に加入しやすくなり、子どもの成長とともに働く環境が整えば、もっと働いて収入を増やしたいということでした。
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者