退職をするので「有休消化」をしますが、すべて使いきれません。同僚に「余った分を買い取ってもらえば?」と言われましたが、そんなことできるのでしょうか?
配信日: 2025.03.24

本記事では、有給休暇の買い取りについて解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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有給休暇とは
有給休暇とは、従業員に対して、心身のリフレッシュや生活の質を確保するために与える休暇のことです。「有給」で取得できるため、休んでも給与が差し引かれることはありません。
労働基準法の第39条では、入社後6ヶ月が経過し、その間の所定労働日の8割以上出勤した従業員に対し、最低10日間の有給休暇を付与することが義務付けられています。
退職時の有給休暇について
退職時に有給休暇をすべて消化できない場合、「余った分を買い取ってもらえないか?」と考えることもあるでしょう。しかし、原則として会社が有給休暇を買い取ることは認められていません。
労働基準法では、従業員が心身をリフレッシュしながら働き続けられるよう、一定の条件を満たす従業員に対し、一定日数の年次有給休暇を付与することが定められています。そのため、会社が有給休暇を買い取ることは、本来の目的とは異なります。
退職する従業員の場合
退職する従業員に対して有給休暇を買い取ることは、「従業員が心身を回復し、充実した生活を送るための制度」という本来の趣旨に必ずしも反するものではありません。退職時には有給休暇が消滅してしまうため、退職後に取得することはできません。
そのため、消化できていない有給休暇に対して手当を支給することは、制度の目的に反するものではなく、むしろ従業員にとって有益と考えられます。こうした理由から、退職時に限り、有給休暇の買い取りは認められています。
退職時以外にもある有給休暇の買い取りが認められるケース
退職時に限らず、有給休暇の買い取りが認められる場合もあります。会社が法定日数を超えて独自に有給休暇を付与している場合が該当し、法定日数を上回る分については買い取りが可能です。
なお、有給休暇は2年間を過ぎると権利が消滅します。消滅した有給休暇を会社が買い取るケースもあるのです。
ただし、これらのケースでも、事前に労使間で合意し、就業規則に明記することが望ましいです。また、上述のとおり有給休暇の買い取りは原則として違法であるため、これらの例外的なケースでも慎重に対応する必要があります。
有給休暇の買取額について
会社が就業規則で有給休暇の買取制度を設けている場合、年次有給休暇に関する規定に計算方法が記載されていることが多いため、まずは確認してみましょう。
有給休暇を取得した際の賃金については、労働基準法第39条で定められています。有給休暇の一般的な買取金額の計算方法は、「従業員の月の賃金を日数で割った額」となります。
なお、就業規則で「正社員は5000円、契約社員は3000円」など、具体的な金額を定めている企業もあります。
退職時の有給買取有給休暇は退職所得扱い
退職時に買い取られた有給休暇の金額は、「退職所得」として扱われます。退職所得には非課税枠が設けられており、長年勤めた従業員ほど優遇される仕組みです。
勤続年数20年なら800万円まで、40年なら2200万円までが非課税となります。この非課税枠は、退職後の生活を支えるための措置として設けられています。
有給休暇を買い取ることは原則として違法
基本的に、有給休暇の買い取りは禁止されています。なぜなら、有給休暇は従業員が心身をリフレッシュするための制度だからです。
しかし、退職時に限り、消化できていない有給休暇を買い取ることが認められるケースがあります。退職後には有給休暇を取得できないため、消滅してしまう権利を補償する目的です。
退職時の有給休暇の扱いは、会社の就業規則による部分も大きいため、事前にしっかりと確認することが大切です。
出典
厚生労働省 年次有給休暇制度について
デジタル庁 e-GOV法令検索 労働基準法第39条
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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