「老後資金1500万円」をまとめて口座に入れています。妻に「分散させた方がよい」と言われたのですが、なぜでしょうか?
今回のケースも、「老後資金1500万円」を単一口座に貯蓄している人に対して、家族から心配の声が上がっています。本記事では、大金を分散して管理する方がよいケースについて解説します。
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1000万円を超えた分の預貯金は保護されない!?
今回のケースでは1500万円の老後資金を単一口座に保有していますが、場合によって一部が消失してしまうおそれがあります。お金を預け入れていた金融機関が経営破綻してしまうと、一部のお金が戻ってこない可能性があるためです。
日本には「預金保険制度」が存在します。この制度は、預金者1人あたり、1金融機関ごとに原則「1000万円の預金元本と利息など」を保護する制度です(「決済用預金」は全額保護)。本制度が適用されると、万が一金融機関の破綻が起きても全額失うことはありません。
しかし裏を返せば、今回の事例のように1500万円の預金がある場合、一部は保護されず消えてしまうかもしれないということです。破綻した金融機関の財務状況によっては全額返ってくる可能性もありますが、確実な保証はありません。
今回のケースで妻が「分散させた方がよい」と言っている理由は、この制度である可能性が高いでしょう。
預金保険制度の注意点
預金保険制度は、すべての預貯金を1000万円まで保護してくれるわけではありません。場合によっては全額失うことすらありえます。具体的には以下の点に注意が必要です。
・国内銀行の海外支店や外国銀行の在日支店などは対象外
・同一金融機関における同一預金者の複数口座は「合計」残高に対して保護が適用される
・外貨預金や投資信託など預金保険の対象外商品がある
老後資金を預け入れている金融機関が、預金保険制度の対象になっているかチェックしておくと安心です。
また仮に制度の対象であっても、1000万円を超える部分については分散してほかの金融機関(預金保険制度加入の金融機関)に預ける方が無難でしょう。
1500万円の貯蓄がある世帯はどれくらいある?
金融広報中央委員会「知るぽると」の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」によると、金融資産保有世帯において、1500万円以上の貯蓄がある世帯は表1の通りです。
表1
| 世帯主の年齢別 | 1500~2000万円未満(%) | 2000~3000万円未満(%) | 3000万円以上(%) | 合計(%) |
|---|---|---|---|---|
| 20歳代 | 0.0 | 3.7 | 0.9 | 4.6 |
| 30歳代 | 3.0 | 3.7 | 5.6 | 12.3 |
| 40歳代 | 4.8 | 7.3 | 8.8 | 20.9 |
| 50歳代 | 5.8 | 7.4 | 15.5 | 28.7 |
| 60歳代 | 6.8 | 12.0 | 26.0 | 44.8 |
| 70歳代 | 8.2 | 9.1 | 24.3 | 41.6 |
出典:金融広報中央委員会 知るぽると「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」を基に筆者作成
50歳代までは、1500万円以上の金融資産を持っている世帯が30%にも達しません。60歳代と70歳代では40%台の割合で1500万円以上を有していますが、いずれも過半数には達しませんでした。
1000万円を超える預貯金は分散する方が無難
預金保険制度が適用される場合、1000万円の元本とその利息などが保護されています。しかし、状況によっては1000万円を超える部分がなくなってしまうおそれがあります。
個々の状況によって変わるため、1500万円がそのまま手元に残る可能性もありますが、少しでもリスクを回避するために分散して預貯金した方が無難かもしれません。その際は、預金保険制度が適用される金融機関かつ口座なのかを事前に確かめておくようおすすめします。
出典
金融広報中央委員会 知るぽると 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)各種分類別データ(令和5年)統計表の番号3 金融資産保有額(金融資産保有世帯)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
