タンス預金「300万円」を銀行に預けようとしない父。危ないと言っても「税務署に目をつけられる」と頑なに拒みます。実際、なにか問題が起きるのでしょうか?
一方で、まとまったお金を預けると「税務署に目をつけられる」「ペナルティを受ける」と考え、タンス預金を銀行に預けることに抵抗がある人もいるかもしれません。
では、タンス預金をしていた300万円を銀行に預けると、本当に税務署から指摘を受けるのでしょうか? 本記事で解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
タンス預金を銀行に預けると税務署から確認がある? 理由は?
結論から言うと、300万円というまとまった現金を銀行に預けると、税務署から確認される可能性があります。理由は税務署が「300万円の入金は贈与や相続で得たお金ではないか」と考えるからです。
例えば、これが贈与によって得たお金だとしたら、300万円のうち基礎控除110万円を除いた190万円に贈与税がかかります。贈与税は金額が大きくなるにしたがって税率が高くなる累進課税ですが、課税価格が200万円以下の場合の税率は10%となるため、贈与税の金額は19万円です。
金額としては決して小さいとは言えません。税務署が「19万円の贈与税の対象ではないか」と考え、確認を行う可能性は十分あるでしょう。
自分で稼いだお金であれば税金はかからない
この300万円が相続や贈与でもらったものではなく、例えば自分の毎月の給料をコツコツ自宅の金庫に貯めてきたものだとしたらどうでしょうか?
しっかり所得税や住民税などを支払ったものであれば、「自分のお金を自分の銀行口座に移動させただけ」です。相続や贈与が新たに発生したわけではないので、税金は発生しませんし、当然ペナルティもありません。
また、相続によって現金で受け取ったものをそのままにしていたケースも同様です。この場合も受け取ったときに相続財産として申告と相続税の支払いが済んでいれば、「自分のお金の移動」に該当します。改めて税金の支払い義務が生じることはありません。
税務署から連絡がくるのは「税金の申告漏れの可能性」を確認するためであって、連絡がきたことが即、税金の支払いにつながるわけではありません。税務署から連絡があったとしても、あくまでも自分のお金を銀行に預けただけだということを冷静に説明しましょう。
タンス預金のリスクと銀行に預けるメリットは?
タンス預金をしている300万円が自分のお金であれば、銀行に預けるのが安心です。もし預けた銀行が破綻したとしても、預金保険制度により1000万円までは補償されます。ただし、これまでの預金と合わせて1000万円を超える場合は、別の金融機関で新たに口座を開くことも検討しましょう。
タンス預金の最大のリスクは、火災や自然災害で消失したり、盗まれたりする可能性があることです。現金は家財に当たらず「家財補償」の対象とならないため、火災で消失したとしても火災保険による補償を受けられません。
さらに無視できないのは強盗のターゲットにされるリスクです。近年の強盗事件は、確実に現金や貴金属が手に入るように、事前にリサーチした上でターゲットを決めて犯行におよぶケースが多いとされています。
タンス預金をしていることをうっかり話してしまったことがきっかけとなり、近隣住民や知人の中で「あの家にはタンス預金があるらしい」と噂になるかもしれません。そのほか、訪問販売や点検業者(もしくはそれを装った不審者)に「現金の隠し場所」を見られてしまい、ターゲットとしてリストアップされる可能性もあります。
こうしたリスクを避けるためにも、ある程度のまとまったお金は銀行に預けておく方が安全でしょう。
なお、タンス預金ではなく銀行に預けることで、少額ではありますが利息が得られるほか、自分に万一のことがあったときに相続が容易になるといったメリットもあります。
まとめ
タンス預金を銀行に預けると「税務署から税金の支払いを求められる」と考えるかもしれませんが、タンス預金が自分のお金であれば問題ありません。あくまでも「自分のお金を移動しただけ」に過ぎず、税金がかかることがないからです。
タンス預金には、盗難・紛失・火災などのリスクがあります。一方で、銀行に預ければ、そういった心配は不要です。少額ではありますが利息がつきますし、万一、金融機関が破綻しても1000万円までは補償を受けられます。
これらのことから、税務署からの確認を心配してタンス預金を続けるよりも、正しく納税しているお金であれば銀行に預けた方が安全で合理的です。リスクを軽減するためにも、銀行への預け入れを検討してみてはいかがでしょうか。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
金融庁 預金保険制度
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
