「年収480万円」の会社員。月の半ばに退職したら“空白期間”のせいで、将来の年金や税金面で「45万円」の損に!? 最適な転職期間はいつだったの? 知っておくべきポイントを解説
これは、年収アップを狙って転職に踏み切った35歳の会社員の実際の失敗談です。転職を検討する際には「最適な退職日」「離職期間の有無」など、事前に押さえておくべきポイントがあります。
本記事では、退職日や転職時期による社会保険料負担や将来の年金面への影響を解説しながら、最適なスケジュールについて考えていきます。
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退職日と社会保険料の関係
会社員として働いていると、健康保険料や厚生年金保険料は会社と本人で折半して支払っています。しかし、月の途中で退職すると「退職日の翌日」が被保険者資格の喪失日となり、該当月末時点で企業に所属していない場合は、会社の社会保険から外れることになります。
すると、健康保険については任意継続、もしくは国民健康保険への切替え、年金は国民年金への切り替えが必要となり、それまで会社が負担してくれていた分も含め、自分ですべてを支払わなければなりません。
さらに、転職先に入社する時期が翌月以降になると、会社員としての社会保険に再度加入するまでの「空白期間」も生じ、その間の保険料を全額自己負担することになります。
月末退職と月途中退職で生じる差
例えば、6月30日退職・7月1日転職先に入社であれば、6月分の社会保険料、厚生年金は前の会社が半分を負担してくれますし、7月分は新しい会社が負担してくれます。
一方、6月15日退職・7月1日入社の場合には、6月16日以降は会社員としての社会保険に加入していないため、6月分は健康保険の任意継続にして1ヶ月分を全額自己負担、もしくは国民健康保険でカバーする必要があります。厚生年金については、被保険者資格を満たしていないため、退職月分については会社負担がありません。
結果として、負担額と将来の年金について思わぬ損をすることになるわけです。
空白期間があったことで「4万円」損した実例とその計算式
年収480万円(基本給30万円×12か月+賞与60万円×2回)とのことなので、健康保険の計算根拠となる月収ベースでは約30万円です。会社員としての健康保険・厚生年金の自己負担は約4万3000円(健康保険:約1万5000円、厚生年金:約2万8000円)と仮定できます。
しかし、月半ばに退職して空白期間が半月ほど生じた場合、この期間を任意継続の健康保険と国民年金でカバーしようとすると、健康保険については「全額自己負担」という形になり、その月の負担は約3万円です。厚生年金の代わりに支払う国民年金保険料は1万7510円のため、自己負担額の合計は約4万7510円です。
月の負担額は前職在任中(約4万3500円)と比べて4000円程度の増加ですが、健康保険料の自己負担は1万5000円増、将来の年金に影響する厚生年金については会社負担分2万8000円分の喪失となります。1万5000円の健康保険料負担増と2万8000円分の積立権利喪失を踏まえると、約4万円の「損」が発生しているといえます。
こうした仕組みを知らずに退職日を設定すると、収入アップを見込んだ転職が、実質的に将来の年金や保険料の面で損してしまう結果となる可能性があります。
最適な転職時期を考えるポイント
最も安心なのは「月末に退職し、翌月初日に転職先へ入社する」パターンで、厚生年金や社会保険の空白期間をつくらないことです。業務の引き継ぎなどで難しいケースもあるかもしれませんが、可能であれば人事と相談のうえ、月末退職&翌月入社の形をとると、保険料負担を最小限に、かつ将来の年金の損も防ぐことができます。
もしどうしても空白期間が生まれてしまうのであれば、国民健康保険・国民年金への加入手続きや、家族の被扶養者として加入できるかどうかを早めに確認しておくと安心です。転職後の収支だけでなく、退職月や入社月の厚生年金や社会保険料まで見据えた計算をし、後悔しない転職スケジュールを立てることが大切です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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