給与明細を見たら「残業代」が少ない気がします…。自分で確認してみたいのですが、どのように計算すればいいですか?
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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36協定のない残業は違法です
労働基準法では、1日8時間、4週40時間の法定労働時間や休日の日数を定めています。これを超えて、時間外労働または休日労働させる場合には、使用者は、過半数組合(過半数組合がない場合は過半数代表者)と労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
この労使協定は、労働基準法36条1項に規定されているので「36(サブロク協定)」と呼ばれています。
36協定を締結した場合、使用者が労働者に時間外労働(残業)、休日労働をさせた場合には割増賃金(残業代)を払わなければなりません。
割増賃金の割増率
法定外の時間外(1日8時間、週40時間を超える場合)労働や深夜(午後10時〜午前5時)に労働させた場合には、1時間当たりの賃金の25%以上増の割増賃金、法定休日に労働させた場合には1時間当たりの賃金の35%以上増しの割増賃金を支払わなければなりません。
また、1ヶ月に60時間を超える時間外労働の割増率は、50%以上となります(労働基準法37条)。
なお、会社で定めている所定労働時間は法定労働時間よりも少ない場合もあります。この場合、所定労働時間を超えて働いていても、法定労働時間内であれば割増賃金の支払い義務はありません。
このように時間外には、法定内の時間外労働、法定外の時間外労働、深夜労働、法定休日労働などがあり、それぞれ割増率が定められています。まずは、就業規則で自社の割増率を確認しましょう。
割増賃金は重複して発生することがあります。たとえば、時間外労働が深夜業となった場合、合計50%以上(25%+25%)の割増賃金を支払う必要があります。休日労働が深夜業となった場合は、60%以上(35%+25%)の割増賃金を支払わなければなりません。
割増賃金の計算方法
月給制の場合、1時間当たりの賃金に換算してから計算します。1時間当たりの賃金額は、「月給額(各種手当を含んだ合計)÷1年間における1ヶ月平均所定労働時間数」で求めます。そして、この金額にそれぞれの割増率を掛けて割増賃金の単価を計算します。
なお、割増賃金基礎額を算定するに当たって家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は除外できます。
なお、算入しなくてよい手当かどうかは、名称ではなく内容により判断します。
たとえば、住宅手当という名称であっても、各労働者の住宅事情に関係なく全員一律に同一金額が支給されているような場合は、割増賃金の算出の基礎に算入しなくてよい手当には該当しません。
割増賃金の計算例
では、月給制の場合の割増賃金の計算方法について具体的に見てみましょう。
1日所定労働時間数8時間、年間稼働日数(=365日-休日日数)260日、年間総労働時間数2080時間(=1日所定労働時間数×年間稼働日数)とすると、1ヶ月平均所定労働時間数(=年間所定労働時間数÷12ヶ月)は173.33333時間となります。
一方、給料の内訳は、基本給15万円、役付手当3万円、職能手当6000円、精勤手当4000円、通勤手当1万2000円、家族手当1万2000円、別居手当1万円の合計22万4000円の場合、割増賃金基礎額は19万円です。
これらを基に割増賃金の単価を計算すると、
19万円÷173.33333時間×1.25=1370.1923円(1370円)となります。
万が一、会社が計算間違いをした場合などに備え、残業代を自分で計算できるようにしておくのはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 確かめよう労働条件 労働条件に関する総合情報サイト
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
