「4・5・6月に働きすぎると税金が高くなる」と聞きました。年度初めは忙しく「月20時間以上」残業しているのですが、いくらくらい高くなりますか?

配信日: 2025.05.08

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「4・5・6月に働きすぎると税金が高くなる」と聞きました。年度初めは忙しく「月20時間以上」残業しているのですが、いくらくらい高くなりますか?
働いて賃金を得たとき、所得税や雇用保険料、健康保険料などが給料から差し引かれます。支払わなければならない税金や社会保険料は、収入や年齢などで変わるのが特徴です。
 
では、残業が多い場合は、給料から差し引かれる税金や社会保険料に影響があるのでしょうか。この記事では、年度初めに残業を多くすることによって、社会保険料にどういった影響があるのかを解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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毎年「4月・5月・6月」の賃金によって「社会保険料」が変わる

基本給に、通勤手当や役付手当を加えた1ヶ月の総支給額が「報酬月額」です。この「報酬月額」を保険料額表を用いて32の等級に分類し、その等級ごとの金額を「標準報酬月額」と呼びます。
 
「標準報酬月額」は、事業主が7月1日現在の「報酬月額」を算定基礎届として提出することで、日本年金機構によって決定し直されます。これが「定時決定」です。届け出の「報酬月額」は、被保険者の「4月・5月・6月」の3ヶ月間における賃金となります。
 
「標準報酬月額」が決定し直されると、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。このため、毎年「4月・5月・6月」に受け取る賃金の金額には注意を向けておくといいでしょう。
 

「残業代」は報酬月額に含まれる

臨時に支払われるお金やボーナスなどを除いた、1ヶ月の総支給額を「報酬月額」といいますが、これには残業手当も含まれます。「定時決定」に必要な「報酬月額」の期間は「4月・5月・6月」です。「4月・5月・6月」に受けた報酬と判断できるため、賃金が翌月払いの場合は、「3月・4月・5月」の残業時間に注意しましょう。
 

所得税は「源泉徴収税額表」によって見込み額が源泉徴収される

毎月の賃金やボーナスから源泉徴収される所得税は、給与所得の「源泉徴収税額表(月額表)」によって算出されます。「源泉徴収税額表」に当てはめる金額は、毎月の賃金から社会保険料を差し引いた後の金額です。
 
所得税は、毎月の賃金やボーナスから事業主が源泉徴収し、その年最後の賃金が支払われる際に「年末調整」を行って計算します。
 

「年末調整」とは

毎月の賃金やボーナスから源泉徴収された所得税や復興特別所得税は、必ずしも1年間に納税する金額と一致するわけではありません。源泉徴収の合計額と1年間に納税する金額を一致させるため、その年の最後の賃金が支払われる際に行う手続きと精算を「年末調整」といいます。
 
「年末調整」の対象になる賃金は、その年の1月1日から12月31日までに支払われることが決まっている給料です。12月の賃金が翌年の1月10日に支払われるのが確定している場合、支給日が翌年の1月10日と決まっているため、その年の「年末調整」の対象にはなりません。
 
基本的に、1年間の所得税は「年末調整」によって納税が完了します。
 

「月20時間以上」残業すると「社会保険料」はいくら高くなる?

厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報」によると、事業所の規模が5人以上の企業における所定内給与は「26万2325円」です。また、所定外給与は「1万9634円」で、所定外労働時間は「10.0時間」でした。
 
この結果から「月20時間の残業」で残業代が「約4万円」とすると、ひと月に支払われる給与は「約30万円」になります。ここでは、4月から6月までの平均賃金が30万円と仮定し、残業をした場合と残業なしの社会保険料を比較してみましょう。なお、社会保険料は、会社と従業員とで折半(50%ずつ)し負担すると定められています。
 
表1

   
 

残業あり(平均賃金30万円) 残業なし(平均賃金26万円)
等級 保険料(折半額) 等級 保険料(折半額)
健康保険 22等級 2万9730円
(1万4865円)
20等級 2万5766円
(1万2883円)
厚生年金保険 19等級 5万4900円
(2万7450円)
17等級 4万7580円
(2万3790円)

出典:全国健康保険協会 協会けんぽ「令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)東京支部」を基に筆者作成
 

まとめ

「標準報酬月額」は「定時決定」によって決定されます。残業代を含めて計算されるため、「4月・5月・6月」の3ヶ月間の労働時間と賃金について注意しておくべきといえます。「月20時間以上の残業」によって、「社会保険料」が高くなる可能性があるため、できるだけ働き方を工夫しましょう。
 

出典

厚生労働省  毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報
全国健康保険協会 協会けんぽ 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)東京支部
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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