求人票に「固定残業20時間」と書かれていたら、20時間かならず残業する必要があるのでしょうか?
固定残業代、いわゆる「みなし残業」は、給与にあらかじめ残業代が含まれている制度ですが、内容を誤解してしまうと不利益を受けることもあります。本記事では、「固定残業20時間」の意味と、その運用のルールについて解説します。
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目次
「固定残業20時間」とは?毎月20時間の残業が義務という意味ではない
「固定残業20時間」と書かれていても、必ず毎月20時間残業しなければならないという意味ではありません。
この表記は、「月給の中に、すでに20時間分の残業代が含まれている」という意味です。つまり、残業をしなかった月でも、20時間分の残業代は給与として支払われるということになります。
例えば「月給25万円(うち固定残業代20時間分として3万円含む)」という求人の場合、実際に残業が10時間しかなかったとしても、その月は満額の25万円が支払われます。
企業側は給与の一部として一定時間の残業代を前払いしている形になりますが、これはあくまでも制度上の設計であり、「残業20時間を必ずやる義務がある」ということではありません。
実際の残業がゼロでも、固定残業代は支払われるの?
はい、実際に残業がゼロでも、固定残業代は給与に含まれて支払われます。「固定残業20時間=3万円」と設定されている場合、残業が0時間だったとしても、この3万円は減額されることなく支給されるのが基本です。
これは「固定残業代」が“固定”と呼ばれる理由のひとつです。ただし、以下の点に注意が必要です。
・求人票に「固定残業代込み」とだけ書かれていて、その内訳が明確に記されていない場合、法律上は不適切です。
・基本給と固定残業代を分けて明示していないと、給与体系の誤解やトラブルの原因となります。
求職者としては、固定残業代が「何時間分」「いくら」なのか、そして「残業をしなかった場合でも支給されるのか」を求人票や雇用契約書でしっかり確認することが大切です。
20時間を超えたらどうなる?追加の残業代は支払われるの?
「固定残業20時間」とは、あくまで20時間までの残業代があらかじめ給与に含まれているという意味です。20時間を超えた分については、法律に基づいた割増残業代を別途支払う義務があります。以下のようなケースを考えてみましょう。
・月給:25万円(うち固定残業代20時間分=3万円含む)
・実際の残業:28時間
・超過分:8時間
この場合、超過した8時間分の残業代は、別途支払われなければなりません。超過分の残業代は、以下の手順で計算されます。
1.月給から1時間あたりの賃金を算出(基本給 ÷ 所定労働時間)
2.その金額に時間外労働の割増率(通常は1.25倍、深夜や休日の場合はさらに高くなる)をかける
3.それを超過時間(例:8時間)に乗じて残業代を算出
もしこれを支払っていない企業があれば、労働基準法に違反している可能性があります。「固定残業代=何時間まで」「超えたら追加で支払われるのか」という点は、求人票や面接時に必ず確認しておきたいポイントです。
求人票に「固定残業代」の記載があるときにチェックすべきポイント
固定残業代制度そのものは違法ではありませんが、制度を正しく運用していない会社があるのも事実です。そのため、以下の点を求人票や雇用契約書でチェックするようにしましょう。
・固定残業代の時間数と金額が明示されているか?
・固定残業代を除いた基本給が明記されているか?
・固定時間を超えた場合に別途残業代が支払われる旨の記載があるか?
・実態として、毎月固定時間を超えるような働き方が常態化していないか?
これらが曖昧なまま求人を出している場合、労働時間の管理がずさんであったり、ブラック企業であったりする可能性も考えられます。不明な点があれば、遠慮せず面接時や企業説明会で質問するようにしましょう。
まとめ
求人票に「固定残業20時間」と書かれていた場合、「20時間残業しなければならない」という意味ではありません。これはあくまで、「月給に20時間分の残業代があらかじめ含まれている」ことを表しており、残業をしてもしなくても、その時間分の残業代が支給される制度です。
固定残業制度を正しく理解すれば、求人選びの際に安心して判断できます。逆に、「実際の残業が多いのに、追加の残業代が出ない」といった会社は注意が必要です。自分の時間と労働の価値を正しく守るために、求人票の「固定残業」という言葉には敏感になっておきましょう。
出典
厚生労働省 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
