会社員ですが「手取り17万円」なので、土日に副業をしたいです。でも「月8万8000円超で社会保険料が上がる」と聞きました。副業で“損しないライン”はどのくらいですか?
実際、副業収入が月8万8000円を超えると社会保険料が上がる可能性があります。ただし、社会保険料の加入条件は月収だけではありません。8万8000円を超えても、社会保険料に影響しないケースもあるのです。
本記事では、副業が社会保険料に影響する要件に加え、実際にどれくらい上がるのかを解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
副業でも社会保険料が増えることがある
副業が給与所得(アルバイトなど)の場合、次の5つの条件全てを満たすと、その副業先でも厚生年金や健康保険の加入対象となります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額の賃金が8万8000円以上
・雇用期間が2ヶ月を超える見込み
・学生ではない
・副業先が従業員51人以上の企業である
8万8000円を超えると社会保険料に入る必要があるといわれますが、これはあくまでも要件の1つに過ぎません。それに加えて、ほかの要件を満たすかどうかの判断が必要です。
副業先の会社での働き方が社会保険の加入要件を1つでも満たしていない場合は、本業の報酬のみを基に保険料を決定します。この場合は、月の給与が8万8000円を超えても、社会保険料の負担は変わりません。
しかし、副業先でも社会保険加入の要件全てを満たした場合、保険料は2つの勤務先の報酬を合算した金額で決定します。これにより社会保険料の負担が増えてしまうのです。
土日だけならセーフ? 要件を満たすかを確認
例えば「土日だけ8時間ずつ働く」場合、週の勤務時間は16時間です。これは20時間未満となるため社会保険の加入対象にはなりません。
一方、以下のような働き方の場合は週20時間を超えるため、社会保険の加入対象となる可能性があるため注意が必要です。
・平日夜:3時間×週2日
・土日:7時間×週2日
副業先企業で時給1200円で週20時間×4週間働いた場合、月の報酬は9万6000円となるため、「20時間以上」「月8万8000円以上」という要件を満たします。さらに2ヶ月以上雇用見込みがあり、51人以上の企業であれば社会保険の加入対象となってしまうのです。
社会保険に加入するといくら引かれる?
本業の給与が額面で21万5000円の場合で、実際どれだけ負担が増えるのかを 考えてみましょう。本業だけで社会保険料が計算される場合と副業の給与9万6000円を加えて31万1000円で計算される場合の社会保険料を比べると次の通りです(協会けんぽ東京支部、介護保険なしの場合)。
・健康保険料(介護保険なし):1万901円→1万5856円
・厚生年金保険料:2万130円→2万9280円
・合計:3万1031円→4万5136円(+1万4105円)
副業で月9万6000円稼いでも、社会保険料の負担が約1万4000円増えるため、手取りの増加は8万2000円程度にとどまります。1万4000円を時給1200円で稼ぐためには約11~12時間の労働が必要です。つまり、それだけの時間タダ働きするに等しくなってしまいます。
社会保険に入るメリットもある
社会保険料が増えることはネガティブに捉えられがちですが、長期的にはメリットもあります。
・将来受け取れる年金額が増える
・傷病手当金などの給付額が上がる
保険料を多く納めることで、将来の年金や何かあったときのリターンが大きくなります。ただ手取りが減って損になるだけではないことは知っておきましょう。
事業所得・雑所得なら社会保険の対象外
これまでの話は全て、給与として副業収入を得る場合の話です。
副業が業務委託契約(Webライターなど)であれば、報酬は給与所得ではなく事業所得または雑所得となります。月に10万円、20万円と稼いだとしても、副業によって社会保険料が増えることはありません。
「社会保険料が増えるリスク」を回避して、なるべくたくさん稼ぎたいという人は、業務委託による副業を考えると良いでしょう。
まとめ
副業で「月8万8000円の壁」を超えると、社会保険料が増える可能性があるのは事実ですので、社会保険に加入する要件をよく確認しておくことが大切です。
一方で、事業所得や雑所得であれば影響はありません。目的に応じて副業の方法を選び、手取りを確実に増やせるようにしたいところです。
出典
厚生労働省 社会保険加入の対象者
日本年金機構 兼業・副業等により 2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ
全国健康保険協会 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から) 東京支部
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
