「年収103万円の壁」のための働き控えは約75%? 2025年の税制改正で毎月いくらまでなら扶養に入れるようになる?
しかし令和7年度の税制改正により、103万円の壁に変化がありました。本記事では、新しくなる「年収の壁」の概要、また今後どれほどの収入を意識した働き方ができるかについて解説します。なお簡潔にするため、ここでは収入が給与収入だけの人を念頭に置いて話を進めます。
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目次
年収103万円の壁とは?
給与収入の場合、年収が103万円を超えると、所得税や扶養などに関して変化が生じます。まず103万円までは所得税が非課税ですが(基礎控除48万円と給与所得控除55万円による)、超えると課税対象です。
扶養については、働いている人が配偶者の扶養に入っている場合、年収が103万円を超えると扶養者が「配偶者控除」を受けられなくなります。国税庁によれば、150万円までは「配偶者特別控除」により配偶者控除と同等の控除がありますが、それを超えると201万5999円までは控除額が段階的に減り、以降は0円です。
さらに扶養者が勤務先から配偶者手当を受けており、その支給条件が年収103万円以下になっていれば、手当を受けられなくなるかもしれません。
親の扶養に入っているなら「扶養控除」や「特定扶養控除(その年の12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族の場合)」の対象外となり、親の税金負担が増えてしまうかもしれません。
年収103万円の壁で働き控えをする人は10人中7人を超える
このようなデメリットがあるため、年収103万円を超えないように「働き控え」をする人が少なくありません。しかし103万円の壁を意識するあまり働き控えが起きると、思うように働けず困ってしまうことがあります。
エフアンドエムネット株式会社が行った「2024年 年収の壁に関するアンケート調査」(出典:労務SEARCH)によると、年収103万円の壁によって「働き控え」をしたことがある人は74.7%にも上ったようです。
また、年収の壁のせいで「もっと働きたいのに働けない」と感じている人が41.1%、「収入が足りない」と感じている人が23.9%いました。
令和7年度からは税制改正によって年収の壁が変化する
そうした中、令和7年度の税制改正により、年収の壁に変化が生じました。政府は103万円の壁を緩和する決定を下し、それに伴い所得税や扶養に関する制度にも変更が加えられます。
所得税に関する変化
国税庁によると、まず、基礎控除が年収によって58万円~95万円に上がります(現行は48万円)。また給与所得控除は、最低保障額が65万円に引き上がります(現行の最低保障額は55万円)。
基礎控除が95万円の場合、給与所得控除65万円と合わせて160万円の控除額になり、年収160万円までは所得税がかかりません。
ただし95万円の基礎控除が適用されるのは、年収が200万3999円以下の場合です。令和7年・8年分に関しては、年収が増えるにつれ、控除額は「88万円」「68万円」「63万円」「58万円」と目減りします。
令和9年分以後は、年収200万3999円を超える人の基礎控除が、58万円~88万円から、一律58万円に統一されます。
扶養への影響
令和7年度の税制改正は、扶養に関する変化ももたらします。まず「配偶者控除」や「扶養控除」「特定扶養控除」に入れる基準が、年収103万円以下から123万円以下に引き上げられます。
新たに「特定親族特別控除」も創設されました。「居住者と⽣計を⼀にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者除く)」の年収が123万円超150万円以下なら、満額63万円の控除額が適用されます。また年収150万円を超えても、年収188万円以下であれば、控除額が段階的に減るよう緩和されます。
新しい税制は、原則として令和7年12月1日に施行されます。つまり令和7年分の収入が確定したタイミングから適用されます。
毎月いくらまでなら扶養に入れる?
新税制適用後、扶養に入れる基準額は人によって異なります。配偶者の扶養に入る場合、配偶者控除を受けるなら「年収123万円(月10万2500円)」まで働けます。配偶者特別控除なら、「年収123万円超~201万5999円(月10万2500円~16万7999円)」までです。
親の扶養であれば、「年収123万円(月10万2500円)」まで「扶養控除」や「特定扶養控除」の対象になります。
居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族の場合、「年収123万円超~188万円以下(月10万2500円~15万6666円)」までは、「特定親族特別控除」の対象です。
年収の壁引き上げで扶養に入れる年収が上がる
令和7年度の税制改正により、103万円の壁は引き上げられました。これにより所得税を支払うボーダーラインや、扶養に入れる基準が変わります。
配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除、特定扶養控除、特定親族特別控除など、扶養に入る場合に適用される控除措置はさまざまあります。適用条件となる年収は控除の種類によって変わるため、詳細を知りたい場合は税務署などに相談してみるとよいでしょう。
出典
国税庁 家族と税
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)(1~4ページ)
エフアンドエムネット株式会社 労務SEARCH 年収103万円以下の300名が回答!働き控えの現状と年収の壁の本当の課題とは?
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
