国産と輸入で“2.5倍”の価格差!? それでも「日本の生産者を守りたい」家庭でできるリアルな応援策とは?
本記事では、そういった背景を紹介するとともに、日本の生産者を賢く支援するための方法について考えてみます。
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA
専門領域:食料安全保障、マイクロファイナンス、超高齢社会
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日本の食料の輸入依存と消費者の不安
日本の食料供給に対する国内生産の割合を示す、「食料自給率(カロリーベース)」は2023年度に38%となりました。これは、私たち日本の国民が日々食べている食料のうち、約6割が輸入品であることを意味します。ちなみに、1965年の日本の食料自給率は73%でした。
「令和5年度 食料・農業・農村白書」によれば、アンケート調査で8割近くの人が日本の将来の食料輸入に「不安がある」と回答しています。国際情勢の変化により、食料や生産資材の輸入が大きく減ったり、止まったりする可能性があることが主な理由です。
確かに、最近の地政学上の緊張が食料供給に与える悪影響は無視できません。このような不安を解消する一つの方法として、食料の国内生産力を向上させ、消費者が積極的に国産品を消費することにより、食料自給率を向上させることが挙げられます。
できれば生鮮食品は国産がいいが…
しかし、ここ最近は価格差のために、消費者の多くが輸入食料品を選択せざるを得ないという事情があります。
MS&ADインターリスク総研株式会社(東京都千代田区)が実施したアンケート調査によると、生鮮食品について、国産品を選ぶ人は、国産品の価格が輸入品に対して「1割高までならば」31.8%、「3割高までなら」12.0%、「3割高を超えても」という人は6.8%でした。
この結果は、国産品と輸入品の価格差が1割を超えると、80%以上の人が輸入品を選ぶ可能性を示しています(図表1)。
図表1
MS&ADインターリスク総研株式会社(2024)「消費者の食料安全保障に関する意識について」をもとに筆者作成
国産品の供給量が少なく、価格が高いという状況であれば、日々のお買い物で常に国産の生鮮食品を選ぶということは簡単ではありません。2025年5月の小売物価統計調査によれば、東京都区部における国産牛肉100グラムは915円、輸入牛肉100グラムは365円と、大きな開きがあります。
また、野菜は天候不順などで国産品が品薄になると、たちまち高騰するため、安価な外国産が流通することもあります。加えてここ最近のお米の価格高騰により輸入米も注目されるようになりました。
日本の生産者を賢く応援する
前述のとおり、日本の生産者を応援するためには、消費者が国産品を選ぶ行動が欠かせません。しかし、国産品の価格が高い場合は経済的に難しいのが現状です。そこで、経済的に無理のないよう、生産者と消費者が賢くwin-winの関係になるために、以下の方法も取り入れてみることをおすすめします。
1. 産直ECを活用する
生産者の顔が文字通りわかる形で、新鮮な食品をお得に購入することができます。
2. 地元の直売所、朝市、道の駅を活用する
スーパーよりも、安価で新鮮な国産品が手に入る場合があります。
3. ふるさと納税を活用する
国産の生鮮食品を返礼品として選ぶことで、地域産業を支援できます。
4. 季節ごとの旬の野菜を選ぶ
旬の野菜は生産コストが抑えられており、比較的安価で購入可能です。
まとめ
国産の食料を選ぶことは、単に食材の選択というだけでなく、実は安全保障にも関係します。農林水産省は、農産物の過度な輸入依存からの脱却を図り、早期に食料安全保障の強化を実現していく必要があるとしています。私たち消費者も、経済的に許される範囲で賢く国産品を購入することで、日本の生産者を支援することができるでしょう。
出典
農林水産省 食料自給率とは
農林水産省 令和5年度 食料・農業・農村白書 令和5年度 食料・農業・農村の動向 第1部 食料・農業・農村の動向 第1章 食料安全保障の確保 第2節 国際的な食料需給と我が国における食料供給の状況
MS&ADインターリスク総研株式会社 消費者の食料安全保障に関する意識について
総務省統計局 小売物価統計調査(動向編) 2025年5月
執筆者 : 新納康介
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA

