4月に育休から戻ったら「給与がマイナス」に!「手取りゼロ」どころか“会社に払う”必要があるのはなぜ? 育休明けの人が知るべき「社会保険料」のカラクリとは

配信日: 2025.07.03
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4月に育休から戻ったら「給与がマイナス」に!「手取りゼロ」どころか“会社に払う”必要があるのはなぜ? 育休明けの人が知るべき「社会保険料」のカラクリとは
4月に育児休業(育休)から職場復帰した人にとって、久しぶりの給与は特別な思いがあるかもしれません。慣らし保育や新しい生活リズムに親子で奮闘し、ようやく受け取るお給料に、ほっとひと息ついたことでしょう。
 
しかし、明細を見て「手取りゼロ」どころか「給与がマイナス」になり、会社にお金を振り込むことに……そんな投稿がSNSで注目を集めました。「会社のミスでは?」と思いたいところですが、実は社会保険料の仕組み上、支払いが避けられない場合があるのです。
 
本記事では、なぜ育休復帰初月にこのような事態となるのか、その背景にある社会保険料や給与控除の仕組みを分かりやすく解説します。これから復帰を予定している人にとっても役立つ内容なので、ぜひ最後まで読み進めてください。
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育休復帰直後に「給与マイナス」が起きる理由

育休からの復帰月は、勤務日数に応じて給与が日割りで計算されるケースが多いため、支給される給与額が極端に少なくなることがあります。
 

一方、社会保険料(健康保険、厚生年金保険など)は月単位で発生し、日割り計算されません。そのため、例えば4月30日に復帰して1日分の給与しか発生しないケースでも、4月分の社会保険料が満額控除されてしまいます。
 
給与から控除しきれない場合、差額はマイナスとなり、会社にその分を振り込むよう求められるケースが発生するのです。
 

給与から引かれるお金、その内訳は?

給与から控除されるのは、主に以下のものが挙げられます。
 
(1)社会保険料
 
育休中は、申請によって社会保険料の支払いが免除されますが、復帰月からは再び支払いが発生します(厳密には、翌月の給与から引かれます)。
 
保険料は「標準報酬月額」に基づいて計算されるため、時短勤務などで実際の給与が下がっていても、すぐには保険料に反映されません。復帰後しばらくは、育休前の給与に基づいた保険料が差し引かれるため、手取りが少なくなる場合があります。この場合、後記する「育休等終了時改定」を活用すれば保険料負担を軽減できます。
 
また、40歳以上であれば介護保険料の負担もあります。
 
(2)所得税・住民税
 
所得税はその月の給与額に応じて課税されますが、給与が極端に低い場合、税額は少額またはゼロになることもあります。
 
住民税は前年の所得に基づき、翌年6月から翌翌年5月まで課税されます。そのため、育休復帰の前年に所得がゼロまたは住民税の非課税基準以下だった場合は、住民税は課税されません。
 
(3)そのほかの控除
 
共済会費や社内積立、食事代など、会社によってさまざまな控除が加わる場合もあります。
 

「育休等終了時改定」で社会保険料はどう変わる?

育休復帰後、時短勤務などで給与が減った場合、「育休等終了時改定」の仕組みを利用すれば、社会保険料を実際の給与水準に見直すことが可能です。条件を満たせば、復帰後3ヶ月間の平均給与をもとに標準報酬月額が改定され、その翌月から保険料が軽減されます。
 
ただし、この制度の利用にはデメリットもあります。
 
改定後の標準報酬月額は次の定時決定まで原則固定されるため、将来の年金額や傷病手当金などの給付に影響する可能性があるのです。そのため、目先の保険料負担の軽減だけで判断せず、今後の働き方も踏まえて慎重に検討することをおすすめします。
 
また、自動的に適用されるものではないため、会社を通じて申請する必要がある点にも注意しましょう。
 

まとめ

育休復帰後の給与や社会保険料の仕組みは複雑で、復帰日や給与の締め日・支払日のタイミングなどによっては、給与より控除額が上回り、手取りがゼロになったり、給与がマイナスになったりすることもあります。
 
特に、締め日の関係で復帰初月の労働日数が少なくなる場合は要注意です。
 
事前に人事・総務担当者と相談し、復帰日や制度の利用、必要な申請などを確認しておくことで負担を軽減できるケースも少なくありません。情報をしっかり押さえ、安心して職場復帰を迎えましょう。
 

出典

日本年金機構 育児休業等終了時報酬月額変更届の提出
日本年金機構 あ行 育児休業等終了時改定
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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