年収600万円・子ども1人。中学受験を選ぶと老後資金は貯められない?
配信日: 2025.07.05

本記事では、私立中学の学費の目安や老後資金を貯めるために必要な貯金額をはじめ、3人家族の平均支出額などから、年収600万円で子どもを私立中学に通わせられるかどうかを検証していきます。

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目次
私立中学の学費目安
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によると、私立中学校の学習費総額は、1年間子ども1人あたり156万359円でした。一方、公立中学校の学習費総額は54万2475円であり、その差はおよそ100万円です。
つまり、子どもを私立中学に通わせるためには、公立中学に通わせる場合と比べて月々約8万5000円の教育費が追加でかかる計算になります。
なお、学習費には、学校教育費や学校給食費、学校外活動費(塾や習いごとなど)も含まれています。
老後資金を貯めるために必要な貯金額は?
老後に必要な資金には、大きな話題を呼んだ「老後2000万円問題」のとおり「2000万円」とする説や、もう少し余裕を持たせて「2500万円」とする説、ゆとりある老後を送るためには「3500万円」必要とする説などさまざまあります。
仮に、35歳から65歳までの30年間で2500万円を貯める場合、年間の貯金額は約84万円です。月額に換算すると、毎月約7万円の貯金が必要な計算になります。
年収600万円・3人家族で子どもを私立中学に通わせることは可能?
ボーナスを考慮せずに年収600万円を月額換算すると、月50万円です。一般的に手取りは額面の80%程度といわれているため、月の総支給額を50万円とした場合、税金や保険料が差し引かれたあとの手取り額はおよそ40万円となります。
ここから、住居費や食費などの生活費と子どもの教育費、そして老後資金のための貯金を捻出します。
総務省統計局の「家計調査(家計収支編)二人以上の世帯 2024年」によると、3人家族の消費支出における月平均額は表1のとおり、合計31万96円でした。
表1
食料 | 8万7876円 |
住居 | 1万9278円 |
光熱・水道 | 2万4340円 |
家具・家事用品 | 1万3302円 |
被服および履物 | 9970円 |
保健医療 | 1万5604円 |
交通・通信 | 4万2780円 |
教育 | 1万2216円 |
教養娯楽 | 2万8045円 |
その他の消費支出 | 5万6684円 |
合計 | 31万96円 |
出典:総務省統計局「家計調査(家計収支編)二人以上の世帯 2024年」を基に筆者作成
ただし、この消費支出の合計額には住宅ローンの返済額が含まれておらず、住居費が1万9278円と低い数値となっています。住宅ローンの返済がある場合には、不足分をプラスして考えましょう。例えば、住宅ローンの返済額が月々10万円なら不足分の約8万円を足して、月々の生活費は約39万円として考えます。
実は、この時点で、年収600万円の月々の手取り額にほぼ達しています。そのため、年収600万円で子どもを私立中学に通わせつつ、老後資金を貯めるのは容易ではないかもしれません。
ただし、総務省統計局の調査結果はあくまで平均値であり、実際の金額は居住地域やライフスタイルによって大きく異なります。交通・通信費や娯楽費が少ない家庭や、親と同居していれば住居費などがかからない場合もあるでしょう。
また、子どもの入学までに貯めておいた教育費があれば、それを私立中学の学費に充てることも可能です。
まずは、それぞれの家庭の支出や貯蓄額を把握し、必要な金額を捻出できるか検討することが大切です。
子どもの教育資金と自分たちの老後資金のための貯蓄を両立させるコツ
超低金利時代といわれる昨今、銀行預金の利息は微々たるものであり、リターンはほとんど期待できません。
教育資金や老後資金を効率的に貯めたいなら、積立投資も選択肢のひとつです。運用益によるプラスアルファのリターンを期待できるので、将来の資産を増やすために貯蓄と積立投資を併用しているという人もいるでしょう。
特に、子どもがまだ小さく中学進学まで10年以上あるような場合には、長期間の運用によるリターンで、教育費を無理なく貯められる可能性があります。
なお、投資には一定のリスクがあることに注意が必要です。
年収600万円で中学受験を選ぶなら工夫が必要
3人家族の平均的な支出額に基づいて考えると、年収600万円で子どもを私立中学に通わせつつ、老後資金を貯めることは難しい可能性があるかもしれません。しかし、生活に必要な支出は家庭によって大きく異なります。教育費以外の支出額が少なければ、問題なく子どもを私立中学に通わせられる可能性も十分あります。
まずは、自分たちの月々の生活費を把握し、場合によっては積立投資などの手段も検討してみましょう。
出典
文部科学省 令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します(1ページ)
e-Stat政府統計の総合窓口 総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次 2024年 <用途分類>1世帯当たり1か月間の収入と支出 表番号3-1 世帯人員別
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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