新米が出ても「米の値段」は安くならない? 価格が下がりにくい理由と“今後の見通し”とは? 農林水産省の「最新データ」をもとに解説

配信日: 2025.07.28 更新日: 2025.07.29
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新米が出ても「米の値段」は安くならない? 価格が下がりにくい理由と“今後の見通し”とは? 農林水産省の「最新データ」をもとに解説
昨年から今年にかけて、「令和の米騒動」とも呼ばれる、急激なコメの高騰が起きました。政府は緊急的に「備蓄米」の放出も行い、5キログラム2000円を下回る程度の価格で購入できるようにするなど、コメ価格の抑え込みに力を入れています。
 
今年も新米が出回る時期が迫っていますが、新米が収穫されれば、コメ価格は落ち着いていくのでしょうか。
山田圭佑

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

最新のコメ価格はどうなっている? データを確認

まず、現状のコメ価格がどうなっているか、最新のデータで確認してみましょう。
 
農林水産省が公表している「米の相対取引価格・数量」のデータを見ると、ここ最近におけるコメ価格の高騰が明確に読み取れます。令和6年産米の令和7年6月における相対取引価格は、備蓄米の取引を含む全銘柄平均で2万7613円/60キログラムとなり、対前年同月と比べて1万1748円の上昇、割合にすると実に74%の上昇を記録しました。
 
ただ、同じく農林水産省のまとめた「スーパーでの販売数量・価格の推移」によると備蓄米放出の効果が徐々に出てきているためもあり、令和7年7月7日の週の全平均価格は3589円/5キログラムとなり、最も高かった2025年5月(4200円台なかば)の価格と比較すると15%以上下落していることが分かります。
 
それでも昨年8月頃(2600円程度)からは40%近く高い価格となっており、消費者にとってはまだまだ割高感が強いでしょう。
 

「概算金」が上がっている状態では、コメ価格は落ちづらい

新米の収穫が近づくと、市場に出回るコメの量が増えるため、一般的には価格が落ち着く傾向にあります。しかし、今後のコメ価格は簡単に下がらない可能性も指摘されており、その理由の1つに「概算金」の存在があげられます。
 
「概算金」とは、JAなどの集荷業者が生産者から買い取る米の代金として「出荷時」に仮払いする金額のことで、その年の作柄や市場の需給見通しなどを考慮して決定されます。生産者にとっては、農業の運転資金が乏しくなるコメ収穫前の資金繰りを助ける役割があるほか、コメの生産意欲を左右する重要な指標となります。
 
近年、円安などの影響によりコメの生産コスト(肥料、燃料費、人件費など)が高騰していることや、農業従事者の減少に伴う生産量の減少への懸念から、この概算金が大きく引き上げられる傾向にあります。
 
実際に令和6年産米の概算金については、令和5年産米の概算金に比べて40%から50%引き上げられており、令和7年産米はそこからさらに引き上げられるとの報道がされています。
 
概算金が上がると、生産者は高い価格でコメを販売できる見込みがあるため、市場価格が下がりにくくなります。これは、生産者の収入を確保し、安定的な生産を維持するためには必要な措置ですが、一方で消費者にとっては、コメ価格の高止まりにつながる要因となります。
 
さらに、国際的な穀物価格の高騰も、国内のコメ価格に影響を与えます。長期化するウクライナ情勢や常態化した異常気象などにより、世界中の穀物生産国で収穫量が減少したり、輸出が制限されたりすると、国際的な穀物価格が上昇します。これにより、さらなる主食用米価格の上昇圧力がかかることも大いに有り得るでしょう。
 
これらの要因を総合的に考えると、新米の季節になったとしても、残念ながらコメ価格が劇的に安くなることは期待しにくい状況だと言えます。
 
ちなみに筆者は、日本の中でも「新米」が早い時期に流通する沖縄県に住んでいますが、いつも利用しているスーパーで最近見かけた「石垣島産新米」は5キログラムで税抜き4200円を超えていました。消費者にとっては、まだまだ我慢の時期が続きそうです。
 

まとめ

昨年から続くコメ価格の高騰は、新米の季節を迎えても、現状では大幅な下落は期待しにくい状況です。最新のデータからも、コメ価格は徐々に下がっているものの依然として高水準で推移しており、私たちの家計を圧迫しています。
生産コストの高騰を背景とした「概算金」の上昇や、国際的な穀物価格の動向もコメ価格の高止まりに影響を与えており、消費者にとっては厳しい時期が続きそうです。
 
※ 2025/7/29 記事を一部、修正いたしました。
 

出典

農林水産省 相対取引価格の推移(平成24年産~令和6年産)
農林水産省 米の流通状況等について スーパーでの販売数量・価格の推移
農林水産省 6年産米の概算金の設定と相対取引価格の状況
農林水産省 米の概算金と追加払いについて
 
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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